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異世界怖い  作者: 名まず
13/60

*お茶怖い (後)

 地下にいい思い出はない。


暗いし、ジメジメしてるし、階段はエレベーターじゃない。


下に降りるごとに増す空気の圧力、重く立ち籠める気、気分が滅入めいってくる。


この暗い階段の先に、初代様がいるらしい。


アンデッドである以上、居るだけで負の気が漂うようで、この地下に居ることが多いようだ。


さらに、気分が滅入る情報をありがとう。


俺は絶対、地下には住まないぞ。と、心に誓う。


大分下ったところで、道が平坦になってくる。


辺りは洞窟っぽい岩肌が目立ってきて、地底湖のように水が溜まっているところがあったりする。


お馴染みの鍾乳洞の柱や、段々キノコのような岩が立体的な壁紙のように張り付いている。


歩くところだけを慣らしたような獣道を踏みしめて歩く。


セテルフェルトの持つカンテラの灯かりを先導に、アヤトも行く。


今度はゆるい上り坂になり、そこをしばらく歩き、風の通りを顕著に感じ始めた頃、何故か石造りの一軒家が現れた。


「あそこが初代様がお住まいになる家です。」


何でも本がたくさんあるので、湿気の少ないあそこに家を建てたそうだ。

こじつけのような感じがしたが、そう言うのなら、そうだろう。

作るなら部屋だろうと思ったが、それも、つっこまない方がいいだろう。


「それに、この辺りが一番龍脈の力が強いのでね。」


そう言うと前を向き、コンコンと打音だおん


「フェルトです。」


「入っても大丈夫ですよ。」


と、落ち着いた声が帰って来る。


セテルフェルトが玄関の扉を開けると、部屋の中に女性が立っていた。


眩い金髪、とても深く青い瞳、美しい女性だ。


しかしその姿はすぐにかき消える。


かわりに目に映ったのは、全身骨格標本にローブとフードを着せた人物(?)だ。まんま死神の見た目だ。


「まぼろし?。」 戸惑うアヤトに、


「それは過去、残留思念を見たのね。

よく来たわね。さあ座って。私がドラグよ。」


ドラグって男の人の名だと思ってたけど、女の人の名だったのか。


背筋がピンと伸びた立ち姿。表現はおかしいが、美しい骸骨だ。


最近見慣れているせいか、さほど怖くはない。


強い力を持っているのも分かる。


アヤトはドラグさんを見ていたが、向こうもこっちを見ていた。


「信じられないねぇ。この年になっても、まだこんな感情を持てるなんて。

その右腕、見せてもらってもいいかい。」


「はい。」


ここまで来たら、戸惑っていてもしょうがない。

さっさと包帯を外してみせる。


「これはすごいね。

ところでアヤトと言ったね。その腰にあるのは何だい?。」


「腰?。」 ああ、あれか。


アヤトは腰の巾着から出して、ドラグさんに見せる。


「こりゃまた、いい聖石だね。

それに、この石にこれだけの魔力を付与できるなんて、並の魔術師の仕事じゃないね。

それはどうしたんだい。」


どうしたって言われても、セネカに渡されただけの物だ。

その旨を告げると、


「これだけの物はうちの宝物庫にも無いだろうね。

まあ、セネカという魔術士があの魔術師なら、これくらいの物は持っているか。」


と、一人で納得している。


この玉子たまご、そんなにい物なのか。

たまに床に落としたり、けっこう雑に扱ってたけど、大丈夫だったのだろうか?。


思い返しながら、アヤトが聖石を眺めていると、

ドラグさんも熱心な目(?)でアヤトの右腕を見つめている。


その視線に引き寄せられ、アヤトもドラグさんに目を向けると、上がったドラグさんの視線と目が合う。


フワァ、って笑った気がした。


「アヤト、これから君はどうするつもりだい。」


アヤトとしては、何とかアンデッド化を止められないか。と、思ってここに来たことを説明する。


すると、ドラグさんはゆっくりと首を横に振り、


「それ以前の問題だよ。アンデッド化を止める前に怨念の方を何とかしないと、このままじゃ怨念に体を乗っ取られてしまうよ。

それにごめんね。体の方は私の力ではどうにもならないよ。

この強力な封印以上のことは出来ない。

今、アンデッドでないのが不思議なくらいよ。

怨念の方も、大分混じっていて解くのは無理ね。

それども、私の力で抑えるくらいなら出来るけど、君はどうする。」


沈黙が下りる。思っている以上にひどい。

セネカ以外に言われて、改めてそう感じた。

どうする。って言われても、そう聞かれたらこの場合、「お願いします。」と、言うしかないのでは?。少し悩んで、そう、声を絞り出した。


いたましそうに、優しそうに、「そう。」と言って、ドラグさんは部屋を出て、奥の部屋に行く。


戻って来た時にはA4サイズくらいの古い箱を両手で持っており、アヤトの目の前で蓋を開けて、中から何か取り出す。


薄茶色の縄のような紐と、古くなった銀の釘のような物。


まず薄茶の縄をアヤトの首に巻き、

次いで黒っぽい針のような物で紐を留め、輪っかを作る。


アヤトの不思議そうな顔を見て、ドラグさんは少し笑って、


「私の髪の毛と簪よ。若い頃の物だけどね。

これから私の力を使って怨念を抑えます。

完全にとはいかないだろうけど、今よりましになるはずよ。

これでも長く生きたリッチだからね。

でも、ごめんね。こんな方法しかとれなくて。

じゃあ、左手を出して、てのひらの上に聖石をせて。」


言われた通りにすると、ドラグさんの左手が、アヤトの左手をおおうように載せられる。


冷たい骨の感触と、温かいドラグさんのオーラ、


「ありがとう。ようやく正しき道にこの力を使える。伝えられる。

ありがとう、やっと解放される。

私は探求に生き、智を知って疲れてしまった。

私なら千年の時だって超えてみせると信じていたけど、

あの人をなくし、友を失い、家族と別れ、新しい家族を看取っていく、

行く果ての悠久に耐えられなかった。」


体が不思議な感覚に包まれる。呪文だろうか、ドラグさんの声が頭に響く。

でも何か自分の思いを語っているだけに聞こえる。


「願わくば、君の未来に幸あらんことを、君の元で祈っている。

私の名前はレティシャ・ドラグ。覚えておいて、私の名を。」


なんか変な感じがする。

ドラグさんの体が崩れていっている。

手を離そうとしたが、しっかり握られていて、離れない。


ドラグさんの体の右半分はすでに無い。

聖石が熱く、やがてドラグさんの左手首から上を残して消える。


あれ?、見えなくなった。

幽霊の姿になったとか。そういうあれか。

アヤトはドラグさんを探してキョロキョロする。


すると、すぐ目の端に違和感が映る。


自分の左腕が白っぽく感じた。

気のせいだろうか。


視線が左に泳ぐと、左腕が骸骨になっている。

それどころか、左の胸辺りの肉も無いような・・・。


周囲の目を気にせず、上半身の服のボタンを外す。


「へっ?、えっ、えっと。」


なんだ。何がどうなってる。


上の服を脱ぎつつ見ると、セテルフェルトが泣いている。

アヤトも泣いているかもしれない。自分の感情がよく分からない。


心臓が無い、・・・・・・ように見える。


「え、え~と、何がどうなってるの?。」 セテルフェルトに聞くが、


「すまない。別れは済ませているのだが、今は許してくれ。」


と、涙を流したまま、的外れなことを言っている。


「いや、すまないとかじゃなくて、説明を。」


「ああ、すまない。君にとり憑いた怨念を初代様が・・・レティシャ様が抑え込んだんだよ。」


いや、今は怨念とか、呪いとかはどうでもいい。

それより、この左手と・・・心臓、どうなってるの?。


「あ、あの、これ・・。」


説明しろと、アヤトが左手を振ってジェスチャーしていると、


「それはレティシャ様を吸収したからだろう。

自分も怨念の中に取り込まれることにはなっても、道を未来に繋いで、魂は解放された。

ずっと心の底では解放されたがっていたから。

その腕のことは、そこまで進行するとは思ってなかったけど、良かった。

呪いは思った以上におさまっている。」


早口で、「あと、これ。」と、左手の物を見せる。


アヤトの左手の上に載っているのは聖石を握る骸骨の手、

左の手の5本の指が、がっちりと聖石を握りしめている。と、とれない。


「それは、そのままにしておいた方がいい。

それも持って行くといい。君の呪いを抑える役に立つはずだ。

それとその首の髪輪も、今は外さない方がいい。

首から上のアンデッド化を防いでくれるはずだから、・・・それも持っていくといい。

父は反対するだろうけど初代様と私が許可してるので、そこは安心してくれていい。」


遠い目で、首の髪と左手首の骨を見てくる。


あなたにとっては大切なものなんだろうけど、

今はそんな感傷にかまっている場合じゃない。


カチャカチャ。と、自分の体を触る。


けっこう軽い気持ちで、怨念を何とかして欲しい。と、お願いしたのに、左手が骸骨になった。


おっかなびっくり、そっと、肋骨の隙間に右手の指を入れてみる。

心臓も無いように見える。スカスカする。


後で確認しないとだが、左の肺とかも無い・・・かもしれない。

おかしい、そんなはずないのに。


手で胸を押さえるとドキドキしている。・・気はする。

焦り過ぎて余計ドキドキしてくる。

どうしよう、取り敢えず落ち着こう。

まず心臓の音を確認しなくては、それから左腕だ。


セテルフェルトは、手で変な踊りをするアヤトに、気の毒そうにしつつも、相変わらず、心ここにあらずだ。


そっちは気にするな。動悸はある、ような気がする。心音は確認できない。そんなことない。


おい、おい、おい、ちょっと待て、どうなってんだ。


アヤトの頭には( ? )しか浮かんでこなかった。






 最近、包帯を巻くのがすっかりうまくなった。


爽やかに額の汗を拭う。


右腕の包帯を手早く巻いていく。


コツは関節の部分を動かせるように薄く巻くことだ。


他は厚く巻いても、可動部だけは曲げたり動かせるようにする。


うん、うまく巻けた。


ドラグ家で新しい包帯を貰えたので、そっちの包帯も巻いていくが、左の方はまだうまく巻けないな。


肩や胸にはもう包帯が巻かれている。「巻こうか。」と、言われても自分で巻いたから不格好だ。


それに、グルグル巻きにしてしまったから、まるで重病者だな。と、自分でも思う。


そうだ、病気だ。病気に違いない。治る。きっと治る。


無心に右手で包帯を巻く。気付くと巻き終わっている。


こっちはまだ慣れてなかったけど、右手の方で大分慣れていたのだろう。


うん、終わった。


パッと立つ。


すぐ話しをつけた。「もう少しゆっくりしていってくれたらいいのに。」と、言う【おもてなし】の言葉を振り切り、その弟をせっついて、学園へと急いだ。


さあ、急げ、さあ行くのだ。学園が俺を待っている。アヤトの心がはやる。


ようやく学園に着いて、自分の部屋のベッドに入った時、アヤトは自然と涙ぐんでいた。



・・・それから数時間後、眠っても夢は醒めなかったし、つねっても頬っぺは痛かった。


諦めてセネカの元に行った。






 セテルフェルトが覚えているのは儚げな表情と、静かに本を読む姿。


「私のかわいいフェル。」


と、優しく頭を撫でる手が嬉しくて、本を抱えて何度も通った。


小さい頃は何度も熱を出して寝込んだが、行くのを止めようとは思わなかった。


父には、あまりあそこには行くな。と、言われていたが、怖いことなんてない。


リッチという存在と初代という名を前に、うやまっていると言いながら、恐れ遠ざけているのは私達の方だ。


あの人はあんなにも綺麗で特別なだけなのに。


豊かな金色の髪、深い青の瞳、生気に溢れ遠くを見る目。


何もリッチの姿が見えていないわけではない。


ちゃんと見えているし、わかっている。


その力も、圧倒的な負のオーラも感じている。


生者を簡単に殺す力だというのは分かってる。


だが、それがどうした。そういうことではない。


初代様はここ100年以上、ずっとこの家に引き籠っているという。


一族の者が会いに来るのも、5歳の誕生日を迎える子の挨拶の時だけだ。


ここに来るのは気安いことではないが、別に来てはいけないということではない。


それでもここに長居する為に訪れる者は少ない。


来るのは怖がり泣く子供と、面倒ごとを持って来る大人だけだ。


「やれやれ。」と、苦笑する笑みに、


小さい頃、「さみしくないの。」と、聞いたことがあった。

今思えば愚かな質問だ。


「そんなことないわよ。」


と、ほほ笑んだ顔は哀しげに思えた。


それから月日は過ぎ、次期当主として死霊魔術を、この家の歴史を学ぶにつれ、レティシャが解放を望んでいるのでは?、と思うようになった。


それはレティシャと過ごした中での言葉の端々に垣間みえた。


それは子供の頃の、「僕もリッチに成りたい。」と、言った時の、「人の心に永遠は永過ぎるわ。」 という言葉だったり、

「私を知っている人は誰も居なくなったわ。」 というセリフだったりした。


やがて、セテルフェルトはリッチについて研究を始めたが、研鑽するに従って自分には無理だということを思い知らされた。


アンデッドやリッチに似た存在になら成れる。

だが犠牲を払ってそう成っても、やがて自分ではない存在に変質するだろう。


かつてセテルフェルトだった化け物になるだけだ。

それはモンスターであって、不死者ではない。


レティシャ様のように、自らの存在のままで永くあること、その極みに立つことは不可能と思い知った。


隣りに立つことも、解放することも出来ない。


それでもドラグ家の次期当主として、一人の死霊魔術士として研鑽に励んだ。


そのかいあってか、人は自分のことを天才と言ったが、それなりに器用で、それなりに優秀なだけだ。


突き抜けた才能というわけでも、何でもない。


いっそう、才能なんてなかったら、諦めもついただろうに。



 ある日とんでもない報告を受ける。


弟が、封印した悪霊を勝手に持ち出し、カノヴァの学園で解き放ったというものだ。


幸い死者は出なかったらしいが、被害者は出たとのことだ。


父は一体何をして・・・、家の宝物庫の管理はどうなっているのだ。と、急遽セテルフェルトが一族が管理する呪物のリストを調べることになった。


弟はどうやら悪霊の気に当てられていたらしい。


霊障を受け、正常な判断が出来なくなっていたようだが、そうなった落ち度は弟自身の心にあるのだろう。


家族として一族として、支えることが出来なかった自分達のせいでもある。


弟の苦悩も分かる。


小さい頃から自分のようになりたいと、自分の仕事を手伝うと言ってくれていた。


頭が良くないわけでも、運動が出来ないわけでもない。

ただ、死霊魔術の才能が無かっただけだ。

普通の貴族に生まれていれば、跡取りにだってなれたかもしれない。


きっと心が弱っていたのだろう。

そう、今の自分のように。


弟から送られて来た手紙を読む。


手は震えている。


こんなことがあるのだろうか。


あるとすればこの青年の存在は・・・・ある存在が頭をよぎる。


どうやってかは分からないが、よほどの才能が有るのだろう。不幸なことに。


そして、その幸運が自分に有ればと想う。


他人にとっての不幸が、自分にとっての不幸であるわけではない。


幸も不幸も自分にしか測れない。


このことをあの人に告げるべきだろうか。


哀しいことに自分は告げるだろう。


自分の想いが偽物でなければ、告げられるはずだ。


手によれる手紙を握りしめ、セテルフェルトは地下に向かった。






 兄が頭を下げる。・・深く。


こんな姿の兄を見るのは初めてだった。


下げるべきは自分の方なのに。


深く、深く頭を下げて、自分の思いを語る。頼み事をする。


「その青年をここに呼んでほしい。」


その結果、その青年にとっては、望まぬ結果になってしまうことになるかもしれない。


それがわかっていてもその青年を、


「レティシャ様に会わせて欲しい。」


ドラグ家の次期当主としては正しくない判断だろう。


それでも自分はレティシャ様を解放したい。と、頭を下げる。


フレドには、「その青年をだましてしまうことになるかもしれないけれど、それでもここに呼んで来て欲しい。」と、兄は胸の内を吐露とろする。


兄と、こんなに真剣に話し合ったことなんてなかった。


ずっと引け目を感じていた。


こんなに話しをすること自体、子供の時以来だ。


兄は才能なんて、無い方が良かったと口にする。

そうであったら、こんなに悩むことはなかった。

自分の手で、こんなことをしなくてもよかったのに。と、泣いていた。


父は当然反対したが、初代様が決断したなら絶対だ。

これはもう決まったことなのだ。


家の為、兄の為、ずっとそう願っていた。


自分の夢、最高の死霊魔術士になり、兄の隣りに並び立つこと。

それは、自分には無理だった。でも、他の誰かならそれを成せるはずだ。


なら、自分がその手助けをしたい。


僕が目指し、兄でも辿り着けない境地に、彼はいる。


自分の想いを叶えるもっとも良い選択。


「兄さま、分かりました。僕に任せてください。

僕はあの人を立派な死霊魔術士にしてみせます。」


フレドは堅くそう誓うのであった。






 あの布切れが邪魔だ。


隠す必要があるのだろうか。


せっかく綺麗な体なのに。


ぜひ磨かせてほしいのに、部屋に飾って、いや、招いてもいい。


家にも来てほしい。


あいつが邪魔するだろうけど。


いつも反対に座る、あんな奴の家には行ったというのに、うらやm・・・・抜け駆けだ。


私も家に招きたかった。


うちは色々悪いことを言う人もいるが、そんなことないよ?。


ちょっと触って、調べるだけ、いや、この際、部屋に飾られてくれるだけでいい。


今日は来てない教室で物思いに耽る。


どうせなら全身なってしまえばいいのに。


そう、うっとりと手に持つ骨を磨きだした。






 手紙を書く手をとめる。


あとは何を書くか。


特に重要なことが書かれているわけではないが、、日々の積み重ねは大切なものだ。


たとえそれが、今日はどこに行った。授業を休んだ、こんな噂がある、ていどの大したことのないものだったとしても。

あれから直接情報を得るのは危ないだろうし、その周辺や仲間のことを中心に日常の出来事を書いていく。


この手紙を読むであろう相手も、大したものは期待してないはずだ。


自分以外にも居るだろうし、メインはちゃんとしたのを雇っているだろうから。


自分としては危ない橋を渡るつもりはない。

こずかい稼ぎに、そこまでのリスクは取れない。


それでも情報通を自称する身としては、お金を貰う以上は妥協しない。


それに、うまくスクープでもゲット出来れば、将来に向けていい条件の推薦状でも貰えるかもしれない。


最近入った仲間の新入生は、脇が甘く拍子抜けするほどだ。


余り近付き過ぎて、目を付けられない程度に接して情報を得よう。


思考がまとまると改めて、机に向き合った。






 アヤトが全ての包帯を外し終えると、セネカは目を見張る。


「これはまた、・・・・・・・・・まあ、成ってしまったものは仕方がありませんね。」


が、すぐに切り替えたようで、あっさりした感じで言う。


「や、やっ、や、や、仕方なくないし!。」 その発言にアヤトは猛抗議する。


「そうは言っても、治してもすぐに腐って、今よりひどくなりますよ。

やってみますか?。

それに、悲観することはありません。ずいぶん状態が良くなっています。

さすがドラグ家といったところでしょうか。これほどの技、身命を賭してのことでしょう。」 セネカが目を閉じる。


「ちょっと待て、本当にどうにかならないのか。」


「どうにもなりません。

召喚されてすぐの時なら、何とか出来たかもしれませんが、助けた時には手遅れでした。

現状維持が精いっぱいです。」


「でも・・・、」 しつこかろうと諦めるわけにはいかない。


「それより、包帯で隠すのはもう無理ですね。

巻くのも大変そうですし、義手でおおえる範囲でもなくなりました。鎧を用意しますね。

予想より早いので用意できていないのですが、頃合いもいいようなのでそろそろ杖も必要でしょう。」


セネカはアヤトの気も知らず、気にもしてない。

もう過去のこととして、アヤトが骨になった未来を思い描いている。


さすがに憮然としたアヤトは、


「楽しそうだな。」と、皮肉を言ったが、


「ええ、呪いの方の目処めどがついたんですよ。

楽しみに決まっているでしょう。」


と、本人を前にして言ってのけた。


あまつさえ、「あっ、もう寝る前のお茶は飲まなくていいですよ。

あれは内臓の機能を落とすお薬なのですが、もう必要はないでしょう。

体より先に内臓が腐敗しないか心配していたんですけど、その必要もなくなりました。

もうすぐ食事も食べられなくなると思いますから、今のうちに食べる事を楽しんでおいてください。

今度、町に行ったらおいしいご飯をおごりますね。」


にっこり言ったセネカの発言に愕然とする。


食事が食べられなくなるって、・・・毎度、豪華な食事をおごり、おいしい食事を勧めていたのも、こうなることが分かっていたからなのか。


それに、やっぱりだ。

団子の時から怪しいとは思っていたが、お茶の方も内臓機能を殺す毒だったのか。


「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」



 その日アヤトは、何もする気が起きず、授業も休んだ。


日がな一日、部屋で天井の染みを数えて過ごした。


頭にフレーズが浮かぶ。


・・・異世界怖い・・・異世界怖い・・・異世界怖い・・・・・・


異世界の死霊魔術士も怖いし、異世界の魔術士も怖い、骨怖い、団子も怖い。

食事が食べられなくなるなんて恐すぎる。


 その日の夜。


まだ残っていたので、お茶を入れる。

今あるのがなくなるまでは飲もう。内臓が腐るなんて怖いし、念の為だ。

この味にも慣れてきたしね。


お茶を飲んで一服する。


窓の外を見上げる。月は見えない。


涙ぐんで、口にもう一杯、お茶を含む。


異世界怖い。


・・・・・・異世界の、お茶一杯が怖い。




     「おあとがよろしいようで。」

              by、作者

     「よろしくねえよ!」

              by、主人公





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