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05 交換授業

「クラスメート交換授業?」

 

 なんだそら。そんな顔をしていたのが分かったのか同じクラスで友達のリリーはふふっと笑って説明してくれた。

 

「身分差があると見えてくるものが違うからと定期的に開催されるのよ」

 

「そんなのするくらいだったら最初から身分でクラス分けしなければいいのに」

 

「それは言っちゃダメ。大人の事情があるのだから」


「大人の事情ねぇ」


 臭いものに蓋してるんじゃ? と思ったけど伯爵令嬢で真っ直ぐな性根を持つリリーに言っても仕方ない。私が怒られるだけだ。多分シモンなら言ってた。

 

「まあ行くのは二人でしょ。誰が選ばれるのかな」

 

「何言ってるの。もう決まってるわよ」

 

「え、そうなんだ。話が早いねぇ、お土産話持って来てくれるかな」

 

「…………」

 

「リリー?」

 

「もう魔法のことなら鋭いのに他は興味ないんだから。心配だわ」

 

 リリーは頬に手を当ててそう言った。リリーの言葉の意味を理解したのは朝のホームルームのときだった。ロイド先生は怠そうに口を開く。

 

「あークラスメート交換授業に行くのはニーナとシモン。行き先はAクラスな。月日は半月」

 

「げっAクラスかよ」

 

 よりによってと顔を歪めるシモン。Aクラスな事に不満があるだけでシモンは交換授業については予想通りみたいな態度だった。シモンの袖を引っ張る。シモンは「あん?」と柄悪く振り返った。

 

「なんで私とシモンで決定なの?」

 

 話し合いも何もなかったよ?

 

「そらぁCクラスで一番頑丈なのが俺とおまえだからだよ」

 

「頑丈? 身体が?」

 

「メンタルと神経図太いのが。Aクラスに行くならなおさら」


 どういうことだと首を傾げたのだけどAクラス校舎に行ってみてその意味がよく分かった。


「庶民と落籍した問題児を送ってくるとはCクラスは我がAクラスを舐めているのかい?」


「はあ……舐めてもしょっぱそうだから舐めたくないです」


 私の返答に一瞬固まったメガネのAクラスの委員長は「イヤミも通じないのか!」と憤慨していた。イヤミ返しも通じないのかと言いたくなった。シモンの背中に言ってこそこそ話す。


「あれだーれ」


「侯爵令息のフランシス・バロー。徹底的な階級主義者」


「へー。親の権力でアゴがデッカくなるタイプね」


「アゴじゃなくて面の皮だろ」


「でもアゴデカいよ」

 

「見た目をどうこう言ってやんな」

 

「君達全部聞こえているのだがッ!?」

 

 フランシス・バローは顔を真っ赤にさせている。「すまん」「ごめんねぇ」と緩く謝ったシモンと私に「これだから下のクラスの者は……!」とメガネをガチャガチャやってた。こいつ面白いかもしれないぞ。


「アゴランティスさん」

 

「誰だそれは!!」

 

「半月の間お世話になります」

 

 ぺこりと頭を下げるとアゴランティスことフランシス・バローは気分をよくしたみたいで「殊勝な心がけだな」とうんうん頷いていた。

 

「おい、アゴランティス」

 

「まさかと思ったがそれは私か! その呼び方はやめたまえ!」

 

「これが我らの友好の証です」

 

「それは絶対嘘だろう!! 名前で弄るなど初等部生か君らは!!」

 

 シモンと目を合わせる。

 叩けばすごく鳴くよこのアゴランティス。シモンにはそれがバッチリ伝わったようで「楽しくなりそうだな」とニヤリと笑った。


「Aクラスは校舎が違うからな。この私が渋々だが案内してやろう」

 

「それがてめーの仕事だろアゴランティス」

 

「それ放棄したら怒られるのアゴランティスさんだよ」

 

「君達に理解能力はないのかい!?」

 

 ぷりぷり怒りながらもAクラスの校舎を案内してくれるアゴランティスさん。階級主義者と言いつつもけっこう面倒見いいぞこの人。まあ別に階級主義者が悪いってわけじゃない。ちゃんと自分の役割を徹底してるってことだ。上の人にはちゃんと立てるんだろうし。自分より身分が下の人を分かりやすく見下すのはアレだけども。そんなことを思っていたら真向かいから知った顔がやってきた。

 

「バロー」

 

「アシュレイか。どうした」

 

「俺は副委員長だからな。Aクラスの副委員長のアレク・アシュレイだ。よろしく頼む。バロー、何か手伝えることはあるか?」

 

「この理解力のない二人を躾てくれ!!」

 

「えっ?」

 

 どういうことだと困惑した顔のアシュレイさんに「Cクラスのニーナ・バーグです」「同じくシモン・ルルーシュだ」とよろしくの意味を込めてぺこりと頭を下げると「アシュレイには従順なのは何故だ!!」とバローさんが吠えた。自己紹介の誠実さからですよ。あなたから自己紹介されてないからね。

 

「バーグとルルーシュ。半月だけだが君達はクラスメートだ。助け合っていけたらいいと俺は思う」

 

「それは素敵な考えですねぇ」

 

「聞いたかアゴランティス。人徳の差が出てるぞ」

 

「ぐぐ……アシュレイ! 君にも負けないからな!」

 

「え? あ、ああ。そうか」

 

「これ相手にされてないやつだよシモン」

 

「だなぁニーナ」

 

「やかましいぞそこォ!!」

 

 Aクラスに行くなんてどうなるかと思ったけどアシュレイさん良い人そうだし、アゴランティス面白いしなんとかなりそうだ。

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