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第二十一章 同伴投稿とつながるスマホ その六

 コーヒーゼリーを食べ終えて、一息ついてからユリアが語り始めた。

「わたし、小中と慈愛女学院に通ってたんだよね」


「へぇ」とマスターは感心したような声を上げて、マクガイアに「キリスト教系のお嬢様学校ですよ」と言った。


「そう、お金持ちの子たちが通う学校。でもお父さんが死んじゃって、お母さんが(てん)階教会(きざはしきょうかい)にお金注ぎ込んじゃって、通えなくなったの」

「辛いねぇ」とマスターが溜息混じりに言う。マクガイアは黙って聞いている。


「それで、高校からは公立の学校に通うことになったんだけど。わたし、公立の高校っていったらみんなギャルなんだろうと思ってて、ギャルになる準備したんだよね」その話にマスターは声を出して笑った。


「で、準備万端ってなって、でも入学式から3日学校休んじゃって・・・まあ、それは仕方ない。

 とりあえず学校に行ったら・・・・ギャルなんていないんだよ!

 びっくりしたよ、浮いちゃって、浮いちゃって、視線が痛かったなぁ」とユリアが当時を思い出して恥ずかしそうに言う。


「で席に着いたら、後ろの席の男の子がさ、ギャルじゃんって言うじゃん。

 それまで、女子校だし、男の子とどう話していいかわからなかったし・・・わたし・・・ギャルですが何かって答えっちゃったんだよね。ははは」とユリアは笑う。マスターも大笑いする。


「そしたら、わたし、ギャルからなんか変わった子って感じで扱われるようになって・・・

 あの御弁当とかなかったし、学食で食べるお金もなかったからお昼はずっと図書室にいて・・・

 放課後も遊びに行く()もなくバイトしてたから友達もできなくて・・・なんだろ・・・スクールカーストってあるじゃん?

 あれでいえば、私は完全なアウトオブカーストみたいなポジションになっちゃってたの」と言ってユリアはカウンターに頬杖(ほおづえ)をついた。


「でも、その時はまだましだった」


「二学期になって、体育祭とか文化祭とかあるじゃん。

 お金がいるからバイトしなきゃいけないのに、そういうのあると放課後参加しなきゃいけないこと多くて、稼げなくなっちゃうんだよ・・・あれも足りない、これも足りないで、もういっぱいいっぱいになってたの。

 そんな時にさ、文化祭で同じ係をやってた男の子にデートに誘われたんだよね。

 授業が終わって、バイトに行こうとしてる下駄箱で声かけられてさ・・・次の休みに一緒に映画観に行かないかって・・・で、私、言っちゃったんだよね。

 なに言ってんのって。で、そのままバイトに行ったんだ」とユリアは眉を下げて口をへの字に曲げる。

 あちゃーとマスターが手をおでこに当てて嘆く。


「酷いよね、もっと他に言い方あったじゃんって今ならわかるんだけど、その時は生きていくのに精一杯なのに、そんな贅沢できるかよって・・・本当にいっぱいいっぱいだったんだよね」とユリアがカウンターに崩れ落ちながら言う。

 マスターとマクガイアが同時に溜息をついた。


「しかも、悪いことに、その男子が女子に人気だったみたいで、男子のことで女子があんなに団結するとは知らなかったよ。なんか調子ノッてる女みたいに言われてさ・・・」とふくれっ面でユリアが言う。


「それから、完全に無視されるようになった」ユリアは吹っ切ったよう言って身を起こした。


「2年生になったら、状況変わるかなと思ったけど、駄目だった。・・・それがさ・・・それがだよ、修学旅行の班決めの時にさ、声かけてくれたんだよ。相楽(さがら)さんが、一緒の班になろうよって。嬉しかったなぁ」


「ところが仕組まれてたんだよね。わたしをシンガポールに置き去りにするって」

「えっ、どういうことだいユリアちゃん?」とマスターが聞いてくる。


「わたしにだけ別の搭乗口になったって連絡があって・・・そこで、待ってたんだけど誰も来なくて」とユリアは簡単に説明して「まあ、それで、マクガイアに出会えたわけだけど」とマクガイアに微笑みかける。


「酷いな!先生は一体なにをしてるんだっ」とマスターが怒りを(あらわ)にして言う。

「マスター・・・それが、だめなんだよ。先生もその子達っていうか、先生全員、人気者の味方なんだよね」とユリアが力なく言う。


「それじゃぁ、誰も罰せられなかったのかい?」とマスターが尋ねる。

「罰せられたよ・・・わたしが・・・」とユリアが自分を指差す。


「なんだ!それは。あべこべじゃないか!」とマスターがユリアに抗議しなきゃダメだよと言う。なんなら一緒に学校に行って文句言ってやるとまで言ってくれた。


「この間、マクガイアにもそんな仕打ちを受け入れちゃダメだって怒られたとこ」とユリアが微笑む。


 マスターはマクガイアに頷き「そうですよね。一緒に学校に行きましょう」と声をかける。


「でも、マクガイアの言う通りだよ。今日の保健室、良かったよね。で、私、ピーンと来たんだけど、学校のあぶれもんじゃなくて、保健室のみんなでハミダシ者になってやろうって思ったんだ」とマクガイアにウィンクした。


「それが君の抗い方なんだな、ユリア」とマクガイアが嬉しそうに言う。

「そう!みんなで楽しい学園生活を送ってやるんだっ」とガッツポーズをするユリア。マスターがユリアの言葉にうんうんと頷いて言った。


「”自分次第で何にでもなれる。人は選べる、それが獣とは違う点だ”映画『エデンの東』に出てくるセリフだよ」とユリアに向かって親指を立てた。

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