表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

32/188

第八章 戦地にて その五

 翌日、武装解除に応じると返答のあった町に入った。


 入る前に、マクガイアは隊員たちに警戒を怠るなと伝えた。装甲車二台を囲む形でマクガイアの隊は進む。


 町に入って直ぐに、マクガイアは嫌な気配を感じ、隊員に要注意、構えのサインを出す。隊員が身構える。


 町の中心部までやって来た時、案の定、ロケットランチャーの弾がヒュルヒュルとこちらに向かってきた。


 散開とマクガイアが隊に命じた。


 隊員は予め指示した通り、二人一組になって四方に散らばる。

 戦闘の装甲車にロケットランチャーが命中し轟音を立てた。二台目は道を塞がれ動くことができない。


 マクガイアが敵の発射地点を予測し3人の部下にロケットランチャーを打ち返すよう命じる。

 ここで力を見せつけねばならない。二台目の装甲車からもロケットが数発発射された。


 残りの隊員が、爆破された装甲車に生存者がいないか確認する。

 車内から何人か引きずり出すが、生きているものはいない。


 二台目の装甲車が先頭車両と距離を取るようにバックした時、砲弾を受けた装甲車が爆発した。

 燃料のガソリンに引火したのだろう。


 マクガイアはプランBを隊員に指示する。

 二班、三班は町中心部の四角(よつかど)南の建物で待機。四班、五班は東に迂回し北側街道に向かう。


 そして、マクガイとパウロの二人で中央突撃を試みる。


 町での異変に気付き、後続部隊が町に侵攻する。敵側からロケットランチャーが放たれる。

 後続部隊の目の前に着弾し、数人が吹き飛ばされ混乱するが、直ぐに応戦する。


 二班、三班から待機完了の報告が入ると、マクガイアはパウロを振り向いて言った。

「俺を信じろ。俺達には弾は当たらない。遅れず俺に付いて来い。いくぞ!」と町の北エリアを目指し、大通りを渡り始める。


直ぐに通りの西側からダダダッダダダッと銃撃があった。パウロはそちらに撃って返しながら、くそったれと呟いて、当たらない、当たらない、俺に弾は当たらないと念じた。


北西側の建物から敵兵が落ちるのが見えた。待機しているっ味方が、スナイパーを仕留めたのだ。通りの半分まで来ると敵の銃撃はより激しくなる。敵は積まれた土嚢に身を隠しながら撃ってくる。


 パウロは、当たらない当たらない当たらないと念じ続けていた。

 弾丸が地で爆ぜる。通りを渡りきるまでの10秒足らずの時間が途轍も長く感じられた。


 マクガイアとパウロはどうにか北エリアに辿り着き、建物に背を預けて息を整える。

 辿り着いて直ぐに、マクガイアは後方部隊に敵の位置を知らせた。


 紛争を続ける両陣営の中では、国際社会の要請に従って和平交渉に応じようとする穏健派と断固戦いを継続すべしとする過激派とに分裂し始めている。これは平和維持軍の力が効いてきている証左だった。


 その一方で、この町のように穏健派が武装解除に応じても、それを受け入れない過激派が残って攻撃してくるということが起こるだろうと予想されていた。


 決着のために、ここで怯んではならない。今こそ圧倒的、力を見せしめる時なのだとマクガイアは思う。


 マクガイアが携帯用のロケットランチャーを取り出して、息を整えると背にしていた建物の向かいに走り出し前を向いて、背にしていた建物沿いにある前方の建物上階に向けて発射した。


 そしてパウロに行くぞと声を掛け、さらに深く進軍する。パウロは当たらない、当たらないと念じながら、目でマクガイアが放ったロケットランチャーの着弾点を追っていた。


崩れる瓦礫の中に落ちていく敵スナイパーの姿を見る。

 二人は200メートルほど走って、路地に身を隠す。顔を出して前方を確認する。


 マクガイアが向かいの路地を指差す。

「次の通りの西側に敵は陣を築いている筈だ」とマクガイアが言う。


 そして、「行くぞ」とマクガイアが駆け出した。地図をしまうのにまごつき、パウロは一拍遅れた。

 すると路地の入口に銃弾が殺到した。身を引いてパウロはマクガイアを目で追った。


 マクガイアは殺到する銃弾の中を悠々と駆けていく。そして、向かいの路地に身を潜めた。

 銃弾が止むのを待って、マクガイアが笑いながら言った。


「びびったかパウロ!早く来い!」


「分隊長!合図を下さい!」とパウロが答える。

 頷いてマクガイアが待ての合図を送る。


 マクガイアの手がサッと上がり「来い」と合図する。

 パウロは駆け出した。銃弾が再び襲ってくる。


 マクガイアが援護するため路地から半身を出して敵に応射する。

 当たらない、当たらない、俺に弾は当たらないと念じながら通りを駆ける。


 鼻先で弾丸が鋭い風切音を立てた。当たるという思いが頭をよぎる。体が(すく)んだ次の瞬間、パウロは右大腿部(だいたいぶ)に激烈な痛みを感じ倒れ込む。


 くそったれと叫びながら匍匐(ほふく)前進でなんと路地裏に身をねじ込んだ。


「やられたな。パウロ。信心が足りん」とマクガイアが笑う。そして、マクガイアはパウロの背嚢からロケットランチャーを取り出して、銃弾を浴びせてくる地点に向けて一発ぶち込んだ。


銃声が止むのを確認してから、パウロに「ここで後続を待て」と命じて、単身で通りに飛び出して行った。


 パウロは後続部隊と合流すると、そのまま後方に送られた。

 医療班に引き渡された時に、まだ戦闘は継続中であり北の街道を撤退中の敵に爆撃を加えているとのことだった。もうすぐ終わるだろうと兵士が言った。


マクガイアの無事も確認できた。隊で負傷したのはパウロだけだった。

 パウロの傷は深く、任務を離れフランスへ戻ることになり、マクガイアと再会することなく任地を去った。


 フランスでのリハビリを終えるとパウロは隊に復帰することなく除隊した。

 アンジェリカ教会を設立し、アンジェリカを思いながら、人々の魂を救うという話が、頭から離れない。


 パウロはその暮らしを夢見ながらも、聖職者になる決心がつかないでいた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ