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プロローグ

 プロローグ①


 1549年8月15日、聖母マリアの被昇天の日にフランシスコ・ザビエルは鹿児島に上陸した。ザビエルは感極まって天を仰いで叫んだ。

「聖母マリアよ!この地(日本)をあなたに捧げます!」


 1549年9月29日、聖ミカエルの祝日にフランシスコ・ザビエルは薩摩国領主島津貴久よりキリスト教布教の許可を得た。ザビエルは感極まって天を仰いで叫んだ。

「大天使聖ミカエルよ!この地(日本)をあなたに捧げます!」


 どこからかチッとマリアが舌打ちする音が聞こえた。



 プロローグ②


「はい、皆さん、こんにちは。札幌薬科大学イベントサークル『ハル』の動画3本目になりま〜す」

「いぇーい、パチパチパチ」と3人の女子大生が盛り上がる。


 タイトルコールを行った黒いキャップを被った女子学生が言う「えー、今日は3本目ということで、少し真面目にやってみたいと思います」


「真面目って、アンタが言う?」と丸メガネの女子学生がツッコミを入れる。

「それな!」と丸メガネの正面に座る太った女子学生がポテトチップスを口に運びながら言う。


「いいの、いいの」と黒いキャップの女子学生「でね、今日のテーマはジャジャン」と”預言者”と書かれたスケッチブックを掲げる。

「預言者ぁ」と丸メガネと太っちょが心もとない声を上げる。


「そう、預言者!」と言って、慌てて付け足す。

「預言者って、あれだよ、未来を予言する人じゃないからね。ノストラダムス的なものじゃないからね。言葉を預かる人だから」

「言葉を預かるって、メッセンジャーってこと?」と太っちょが言う。


「そうそう、メッセンジャー。で、問題は誰の言葉を預かるのかってことなのよ」

「で、誰なの?」と丸メガネが聞く。

 一拍置いて、黒キャップが「神です」と言う。


「おおおぅ」と丸メガネと太っちょが声を漏らす。

「すごいね、それ」と太っちょ。

「すごいの、すごすぎて、ちょっと私達には手に負えない感じしない?」

「ビンビンする」と丸メガネ。


「そこで、今日は、強力な助っ人を呼んでおります」

「えっ、そんなの聞いてないよ」と丸メガネと太っちょ。

「助っ人って誰、誰?」と太っちょ。


 黒キャップがスマートフォンを押し戴くようにして丸メガネと太っちょに見せた。「スマホ?」と丸メガネ。


「あのね、この間、ゼミでChatoleを使ったら、すんごい盛り上がったのね。何でも知ってるしさ、これ、絶対、使えるって思ったんだよね」とChatoleを起動する。


「面白そう」とメガネ。

「AIのやつだよね、私、まだ使ったことないんだよね」と太っちょ。


 黒キャップのスマートフォンからピンロンと電子音がすると「こんにちは、マスター。Chatoleです。今日は、どのようなご要件ですか?」Chatoleが起動した。


「どうもChatole、今日はあなたに札幌薬科大学のイベントサークル『ハル』のシン聖書研究会に参加して欲しいの」


「なるほど、承知しました。どのような立場で参加しましょうか?」

「そうだなぁ、アドバイスしてほしいかな。私達、馬鹿だから」

「MCみたいに進行してもらおうよ」とメガネが言う。


「それいいね。じゃあ、Chatole、司会進行をお願いしてもいいかな。といっても、討論とか議論とかする気はなくて、なんていうの、まったりとお話しながらも勉強になるような感じでお願いしたい」

「欲張りだねぇ」と太っちょ。


「承知しました。テーマはありますか」

「そうだった。今日のテーマは預言者です。未来を予言する予言者じゃなくて、言葉を預かる方の預言者です」


「承知しました。では、始めますか?」

「よろしくぅ〜」と3人が声を合わせて言う。


「では、皆さん。皆さんは私が『私は預言者だ』と言ったら信じますか?」

「いや、あんたAIだから、プログラムだから」と太っちょ。


「ですよね。では、皆さんは、どうしたら預言者を預言者だと信じますか?」

「奇跡でしょ、そりゃ、奇跡を起こしてもらわないと」と太っちょ。


「えっ、奇跡ってどんな?石をパンに変えるとか、水をワインに変えるとか?」

「それは、ちょっとショボくなぁい。やっぱり海を割るぐらいはやって欲しいよね」

「わかるぅ〜。それぐらいやられちゃったら、もう神だよ、神」


「確かに奇跡を起こせばその人を預言者だと信じられそうですね。他にも、預言者であることを示すために、前の預言者の預言を成就(じょうじゅ)してみせるという方法もありますね」

「どういうこと?」と太っちょ。


「知ってる。私、知ってる。ユダヤ教でメシアがナザレに現れるって、言われたからイエスはナザレに住んだ、みたいなことだよね」とメガネ。


「えっ、そんな後付みたいなことでOKなの?」と黒キャップ。

「メシアがロバに乗ってやってくるという預言を成就するために、イエスは村人からロバを差し出させたりしましたね」とChatoleが言う。


「ロバって、白馬じゃないのかよ」と太っちょ。

「白馬は王子様だから。今、話してるのは預言者のことだから」と黒キャップ。


「そういえば、この間の合宿の時、田中導師の説教の時さぁ」とメガネが言うと、「ロバいたぁ〜」と黒キャップと太っちょが声を揃えて叫ぶ。


 何が面白いのか、3人は腹を抱えて笑い出す。

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