俺と君とマンゴーと
夏休み中に2年振りの実家に帰ってきたが、特に代り映えもなく安心を与えてくれた。「あんた久しぶりに帰ったんだから皆に顔見せに行ってきなさいよ。」昔なら煩わしく感じたであろう小言も今では懐かしい気持ちになる。「うぅん。」少し間延びした曖昧な返事を返した。ここは良くも悪くも田舎だ。なにかあればすぐに村中に広まる。「あの家の息子が帰ってきてたのに挨拶に来なかった。」なんて言われるのは目に見えている。自分のせいで親がここに居ずらくなるのは申し訳ないので重い足を動かして家を出た。
都会の大学に進学したことに対してほんの少し嫌味を言われながらも近所に挨拶を済ませた。すぐにでも家に帰ろうと思ったが歩いてる内に懐かしくなり散歩をしてから帰ることにした。小学生の頃に秘密基地を作った雑木林やいつも集まっていた公園、高校生の頃部活で走らされた道など歩いてく内に思い出が溢れてくる。当時はどうしてもここから出ていきたくて都内の大学に進学したが、大切な思い出は今でもここにあることは変わりない。なんてセンチメンタルなことを考えながら汗を拭って散歩を続けた。
ある空き地の前でつい口をついて独り言が漏れる。「あ、ここ。」その場所には昔家が建っていたのだが今は見る影もない。ここにくると思い出してしまうことがある。
中学生三年の夏にこんな遊んでていいのか。と思いつつインターホンに手を伸ばす「ピンポーン」じりじりと蒸し返す暑さのなかドアが開くのを待つ。今ならいきなり冬になってもいいな、などくだらないことを考えていると「ガチャ」「ごめんごめん、遅くなっちゃった。」とはにかみながら君が出てくる。「いいよ。アイスくれるなら。」「ハーゲンダッツ以外ならいいよ。」軽口を叩きながら家に入る。「あら、いらっしゃい。ゆっくりしてってね。」「おじゃまします。」軽く会釈しながら挨拶をする。夏休みが始まってからほとんど毎日遊びに来ているがこの家の人は毎回心良く出迎えてくれる。「はやく部屋いこ。」と君が急かしてくる。自分の親が友達と話すのがなんとなく恥ずかしいんだろう。挨拶を済ませ、階段をのぼり部屋に入った。いつも通りアイスを食べながらダラダラと話したりゲームをしたりしながら過ごした。2時間ほどが経ったころドアがノックされ「お母さん少し出かけるからね。下におみあげのマンゴー切ってあるから二人で食べてね。」と言って君のお母さんは急ぎ足で部屋をでていった。階段を急いで降りる音が聞こえる。君は「お母さん毎回準備ギリギリすぎるんだよね。」と恥ずかしそうに笑ったあとに「下で映画でも見よっか。」と立ち上がった。「そうだな。行くか。」と返事をし二人で階段を下りていった。それで、映画にそういうシーンがあったのか、お互いにそういう時期だったのかは分からないけどキスをした。ファーストキスはマンゴーの味だった。でもそれ以上はなくて、「ごめん、今日は帰るわ。」と伝えた。君は「わかった。また明日。」と言った。次の日俺は遊びに行かなかった。
その後夏休みが終わってから学校で顔を合わせることはあったが前みたいに話すことはなくなった。二人ともなんとなく気まずくなっていたんだろう。そのまま君は高校にあがるタイミングで親の仕事の都合で引っ越してしまった。都内の男子校に進学したらしいというのを又聞きしたが詳しいことは知らない。でも彼にとってここよりは生きやすい場所だったんだろう。いまもどこかであの笑顔で笑ってくれてるといいな。なんて身勝手なことを考えながら帰路に就く。夏にしては涼しい風が吹いた。
なんとなく小説書いてみたくてちゃちゃっと、とりあえず書いてみたんですけど難しいですねぇ。国語の教科書ってすごかったんだな。って感じです。まじで初書き(?)初投稿なので誤字脱字あったらすんません。またなんか気がむたら書こうと思います。ほな。