ちょっと蛇足な前日譚
転領して新しい領地に来たら前領主が残していった家令がやらかしてくれているようだが、一体何をやってるのか・・・
旦那様に夜伽を申し付けられましたが、・・・私、どうすればいい??の前日譚になります。
本編始まる前の俗にいうしこみ回になります。
本編始まる前の話なのになんで最後なんだという突っ込みはありますが・・・
ーコンコンー
「旦那様、ちょっとよろしいですか」
「入れ」
家令が見知らぬ女性を連れて入ってきた。
今、この屋敷は前の領主が結構な数のメイドや近衛を連れて転領していったため、結構な人手不足になっている。
一応屋敷に来た時に全ての使用人と対面しているので知らない顔ということは新しい使用人というところか。
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ついこの間、私はここの領主としてこの領地を拝領し、この頃やっと慣れ始めたところだ。
貴族の転領はそんなに頻繁ではないが割とよくある。ほとんどは目に見える功績を挙げたものにより良い領地を与えることだ。
他には領地経営が上手いものにダメな領地を与えて再生させることもある。
上からの評価は上がるが領主的にはうまく行ってるとこからダメなとこに転領になるのであまり請けたくない案件だ。
転領には今までの使用人を連れていくこともあるが、あまり連れて行くと越してくる貴族と関係が悪くなることや、使用人の同意を得られないと連れていけないというのもあるので普通そんなには連れていけない。
今回は転領先に一緒についていく使用人が多かったことからも前領主の人柄の良さがうかがい知れる。
私も信頼できるものをここに連れてきたかったが、前領地では近衛以外信頼できなかったため、少数の近衛を連れてきているだけだ。
家令については『領地の実情を知っているから』とそのまま残されたが、本当に役立つものなら連れていきそうな気もするので要注意というところか。。。
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「メイドの補充でメイド協会から新しく1人派遣されてまいりました。挨拶なさい」
「メイド協会から来ました。お許しいただければ今日からこちらでお世話になります。アリサです。
メイドの分野はまだ決まっておりません」
「ふむ。新人か?一般的なメイドの講習は受けてきているのだよな?」
「はい」
転領で前領主に付いて行って居なくなった分のメイドの補充は家令が協会の方に頼んでいるそうだが、とりあえず一人目と言うことか・・・
連れてこられた娘は始めて会う雇い主に結構緊張しているようだ。
まだ私服でメイド服を着てない状態で結構若く見えるが大丈夫か?
「自分では何がしたい?何が得意だ?」
「メイドで来たのはこのお屋敷が初めてなのでよく判りません」
「ふむ。人と話すのと一人で黙々作業するのではどっちが好きだ?」
しばらく考えた後に
「一人で作業する方が好きかもしれないです」
「そうか。人員配置の関係で希望に添えない仕事もあるかもしれないが、そこは相談してくれ。
よくウチに来てくれた。
実は私もこの屋敷には来たばかりで詳しくは判らないのでいろいろ教えることはできないが、ここが良い職場だといいな」
とまだメイド服も着ていない新メイドに歓迎の言葉を贈った後、続けて家令に指示する。
「得意分野なども判らないからメイド長に『よろしく頼む』と伝えておいてくれ。
以上だ」
「承知いたしました」
家令が礼をしてるのを見て新メイドが慌てて頭を下げ二人とも部屋を出ていく。
家令が礼をしてるのを見て合わせて礼をするところから見ると応用力や機転は効くようだ。
悪い娘ではなさそうだし、実践の知識が足りないのと少々マイペースな気がするが、いい人材かもしれない。
※※※
最終的に領内の資産管理は領主の責任になるので、前の屋敷のときも割と細かくチェックはしていた。
やろうと思えば家令なしでも資産管理くらいはできるが、時間がないのと専門的な仕事だし、周りの貴族から『あそこは家令も雇ってない』と言われるのも問題なので家令に任せている。
実際、資産管理は家令に投げっぱなしの貴族も多いのだ。
それでも越してきて一応こっちの屋敷の支出と納品状態についても確認したのだが、屋敷の規模や人員の割には少し支出額が大きいような気がする。
私が趣味(狩りや遊興)に興じる人間なら気にならないような額だし、なにがしかの贅沢をしていればこれくらいはすぐ使う額なのだが…
たぶん誰かが着服しているか業者にぼったくられていると思うが、とりあえず誰にも気付かれないよう、夜が更けてから業者との取引内容を確認していた。
納品書と納められた物資量、その代金支払い等の帳票には問題ない。
ちょっと高いが請求されている額と納めている物資の勘定があっている。
これは業者にぼったくられてるパターンか・・・
もうしばらく確認していると不思議な内容が見つかった。
「ん?、なんでだ?」
納入されたとされる量と倉庫への搬入実績には変化がないのに、搬入する輸送業者への代金がここしばらく減っている。
輸送業者の単価が安くなったのか?
納品書から逆算すると2割以上単価が安くなっているように見える。
「もう少し調査が必要だな。まずは輸送業者の単価が変わってないか確認するか…」
明日にでも近隣の交友がある貴族の屋敷に遊びに行って話をしてみるか…
いや、その前に屋敷の倉庫の中を確認したほうがいいな。
ただ、今確認しても使われた分もあるだろうから、できれば搬入されたばかりの時の方がいいか・・・
しかし、こうなると領地内の御用商人への権益関係も再確認したほうが良いかもしれない。
ランド・スチュワードには転領の際、挨拶されたが、まだどんな人物か把握できてないからな。
誰と誰が繋がっているかが判らないため、調査中と悟らせないために誰にも手助けしてもらえないのがつらいところだ。
こんな時、信頼できる従者がいればありがたいのだが...
全く、普通に転領の処理もまだ片が付いてないというのに、面倒ごとばっかりだな…
とりあえずは現状の確認というところか。
そして今日も夜が更けていく・・・
※※※
目が覚め、身支度をしながらメイドが呼びに来るのを待つ。
呼ばれる前から食堂に行くと料理人が萎縮してしまうようであまりよくないようだ。
ーコツ♪コツ♪コツ♪ー
『ん?この足音聞き覚えがないな…』
なんか楽しそうな足音がこちらに向かって近付いてくる。
毎朝誰かしらが起こしに来るが結構足音のリズム(速さ)やたてる音などで誰が来たか判別できる。
まぁ、越してきてそんなに経ってないので、まだ全てのメイドのパターンを覚えてないし、聞き覚えが無い方が多いと言うのもある。
朝食の準備が整い呼びに来たであろうメイドの足音がドアの前で止まったあと、ノックがなかなか鳴らないので扉を開けてみるとそこには、支給品の新品のメイド服を借り物のように着て一応メイドっぽく見えるようになった新人メイドが居た。
「わ!びっくりした」
「どうした?呼びに来たんじゃないのか?」
「はい!朝食の準備が出来ました」
「ならば行こう」
食堂へ向かいながら聞いてみる。
「なぜドアの前で待っていたんだ?まだ寝てるかもしれないからノックしたあと寝ていたら起こしてもらえるとありがたいんだが」
「えと、ちょっとなんて声かければいいか考えてました」
「・・・そうだな、まずはノックして『旦那様』で呼びかけ、ちょっと後に『入りますよ』と呼び掛けて6秒以内に返事がなければ入れ」
「わかりました」
大丈夫か?このメイド…、協会は何を講義したんだ?
そう言えば対人関係はイマイチとか言っていたか?
~~~~~~~
1カ月くらい経った頃も、あの新人メイドや前からいるメイドがいろんな事をしているのを見かけていた。
前の領主が有能な人材を連れて行ってて根本的に人数が足りないのだろう。
メイド協会へは追加の申請をしているはずだが、あの新人以降人が来ないし、人員補充が間に合ってないようだ。
それと領地で問題が起きてないからいいが、戦士などの連中もかなり少なくなっているようだ。
で、昼前に食堂の前を通ったときお昼の用意をしているアリサとつい目があってしまった。
あれから何回か朝起こしに来たり、昼食を呼びに来たりしていて、軽く会話をしたりしてるので、なんとなくお互いに知っている。
「あ、旦那様!」
「今日は食堂か?どうだ、少しは屋敷になれたか?」
「はい。あまり迷わなくなりました」
ということは迷っているのか・・・
「初めてのお屋敷という事だったな。まぁ、初めてのことも多いから大変だろうがしょうがないな」
「はい…」
「まぁ、迷って倒れたり死んだりしないようにしてくれ」
「はい、がんばります」
まじめなのか?あまり冗談が通じないタイプなのか・・・
いまだに性格がつかめないが悪い子でないのは判っている。
ーコンコンー
「旦那様」
・
・
・
「はいりますよー?」
・
・
・
「旦那様」
「ん?お、どうした?」
私が気が付かないうちにアリサが入って来ていた。
執務に集中しすぎていて入ってきたことにも気づいてなかった。
「お昼のお食事の時間です。あと、この部屋のお掃除をするようにと言われまして…」
「もうそんな時間か。なにをするかは判ってるよな?」
「はい、大丈夫と思います」
ん?、このメイドは最近来たばっかりだし、不正には関わってないはずだ。
あと、隠し事があると顔に出るタイプで腹芸ができそうもない。
ちょうど倉庫へ物資の搬入も終わったばかりの報告もあったし、訊いてみるか・・・
「アリサ、この屋敷の倉庫がどこにあるか知っているか?」
「え?倉庫ですか?
一応メイド長さんに案内されたので判ると思います」
「この部屋の掃除のあともまだ仕事は残っているか?」
「えーっと、はい」
「お前の仕事がかたづいた後でいいので、倉庫に連れていってくれ。
あー、この事は誰にも内緒で頼むぞ」
※※※
旦那様に用事を申し付けられてしまいましたが、内緒で倉庫?これっていつも読んでいる本だと逢い引きの感じなんだけど、もしかして、もしかして、なにかちょっと始まっちゃう??
でも、旦那様ならわざわざ倉庫でそういうことをしようとしなくても部屋に呼べばよくない?
なら一体なんで倉庫にいくのかしら??
ヤッパリ何か伝統的な決まりごと?様式美っていうんだっけ?
ちょっと憧れるけど、やっぱり旦那様とメイドだし。。。
あ、でもやっぱりちょっと話を聞くくらいなら大丈夫よね?
※※※
結構忙しくしてるらしく夕方近くにアリサが部屋にやってきた。
何かちょっと顔が赤くなっているが、急いで走ってきたのか?
「急がせてしまったか?済まなかったな」
「へ?、いえ、全然大丈夫ですから」
それから途中巡回している警備を避けつつ、倉庫へ案内してもらう。
なぜかアリサは巡回に見つからないようにしたいという話を『やっぱりそうですよねー』と受け入れていたが、なにが『やっぱり』なのか・・・
「旦那様、こちらになります」
「ほぅ、ここが倉庫かー」
結構な広さの建物の中に大量の物資が種別されているのか、いないのか置いてある。
倉庫管理も家令がやっているらしく専任はいないそうだ。
『この辺は家令に権限が集中しているのか』
『灯りを用意してるなんて。。。
そんなに長い時間になるのかしら?』
「ん?どうした?灯りを見つめて」
「いえ、用意いいなーと思いまして」
夕方で外はまだ明るかったが倉庫の奥の方は既に暗くなっているため、用意していた灯りで倉庫の中を確認していく。
アリサには「もう下がってもよい」と言ったのだが、なにか消沈?した後に「御一緒します」と言うので同行させている。
彼女に灯りを持たせたほうが台帳と現物の確認がしやすいのもあった。
そしてやっぱり倉庫の使用台帳ではあるはずの結構な量の物資がない。
「やっぱりないな」
「何か探しものですか?わたしに判る物なら一緒に探しますが・・・」
「いや、大丈夫だ。台帳と物があってるかの確認だけだ」
運送業者から取り寄せた搬入記録には記載がないので、納入台帳と倉庫台帳にだけ存在することになっている。
搬入は輸送業者で管理が別だから改竄から漏れたのか、どうせ誰も見ないと手を抜いたのか……
あと存在する物の間違いはすぐ気づくが、無いのを見ておかしいとは有るはずと知らないと判らない。
とりあえず、輸送業者への代金が少なかったのは物資の搬入量が少ないせいだと判った。
ただ、搬入量が少なくなってるから、そのうち足りなくなるはずだがそうなってないように見える。
どうやって収支を合わせるのかがまだ分からない。
入ってきてないのだから、出る分を減らすしか方法はないと思うのだが…
あと家令が元凶の場合、どこまで使用人を巻き込んでいるかが判らないのも問題だ。
今回搬入された物資は日常的に使うものが多いので入口付近に積まれていたが、倉庫はまだ奥に続いているようなので、ついでに端まで見に行くことにした。
倉庫の確認をしながら、アリサに訊いてみる。
「そういえばアリサはなんでメイドをやってるんだ?」
「なんか小さい時、村の読み書き教える所で色々習ってたんですけど覚えがよかったらしくて」
「そうなのか」
「で、読み書きの覚えもよかったみたいで商人さんのところでしばらくお世話になって、そこからメイドになったらどうだと言われまして。。。」
「ほー、それはスゴいな」
メイドもピンキリで継承権のない下級貴族の子女がなるものやアリサのように才能がある物などいいメイドは高級職だったりする。
「いえ、、本とか小さい時から好きで何書いてあるのか読みたかっただけなんです」
「ふむ、でいったいどんな本を読んでいるんだ?」
「えーっと。。。」
「まぁ、言わなくてもいいぞ。趣味は人それぞれだからな
だが、本は高いだろ?買えてるのか?」
「高いです。お給金全部使っても買えなくて、貸本屋さんや書き写したものを読んでます」
「趣味が合うなら書庫の本を読んでもいいが…
私もまだどんな本があるか把握してないので、ついでに調べてくれると助かる」
「え?いいんですか?ありがとうございます」
奥に行くにつれしばらく誰も来てない感が強くなってくる。ホコリの溜まり具合からして数年は立ち入ってなさそうだ。
この辺は立ち入った感じもないし今回の調査には関係なさそうだな。。。
引き返そうとしたときに結構な大きさの何かが落ちてるのが見えた。
「なんか落ちてるな」
「なんでしょう?」
よく見ると何かの一部に見える。これは石像の一部?羽だろうか?
積もったホコリから、かなり前からこの状態でおかれていることが判る。
おそらく何かを動かすときに壊したものだと思うが、さっと回りを見渡してもそれっぽい物もない。
「石像の破片か?持ち帰るにも大きいな。
明日にでも誰かに回収させるか・・・」
※※※
幾日か経ったある日、家令がランド・スチュワードを連れてきた。
名前はセーラといい、結構若い女の人で驚いたが、かなりの才媛との噂を聞く。
セーラ曰く、
「領主様、破片について調べたところ、領内にある教会の女神像の羽のようです。
設置されたときから片翼がなかったらしく、そのままになってます」
「ふむ、一回その教会に行ってみるか」
教会も領主の管轄下なので視察を兼ねて確認しに行ってみる。
宗教周りは一歩間違うと反乱を生むから日頃の管理が大切だ。
教会へ行ってみると、結構な大きさの立派な女神像が立っていた。
たしかに片翼が欠け、欠けたと思われる部分が落ちていた物のようだ
片羽がないせいか美人の女神の顔が若干曇って見える。
「せっかくの美人さんなのに
・・・あの羽修理できるか?欠けてる分は屋敷にある」
ついて来ているセーラに確認する。
「村の石工に頼めばできると思いますが、若干高くつきます。
古くなってるようですし、時間はかかりますが作り変えてはどうでしょう?」
「作り変えたらこの像はどうなる?」
「像は2つもいらないので、埋葬するか地下室に保管すると思いますが」
「そうか・・・、では新しいのを頼んでくれ。
今の女神像は羽を修理してウチの玄関ホールに設置する」
「え?」
「何か問題があるのか?」
セーラに訊いてみる。
領主の意見を素直に聞けるかどうかは今後どういう風につきあうかに大きく関係する。
この女神像が気に入ったのもあるが羽を拾ったのも何かの縁だろう。
「いえ、そのように手配します」
さすがにできると噂されてるだけあって切り替えが素早い。
「あと個人的な話で申し訳ないが、家令の事は好きか?」
さりげなく私をすごい目で睨んだあと、目をそらして言った。
「個人的には好きではありません。何か一緒に仕事をしろというならもちろん致しますが・・・」
性格は実直な感じがする。というか裏表なさすぎだな。
若さというか、適当にやり過ごすなどできない。清濁併せ呑むことはまだできないようだ。
なんとなくだが、家令と組んで仕事をさせたら爆発するだろう。
今回の物資の不正には間違いなく絡んでない。
「そうか。これからいろいろと屋敷の方でも世話をかけると思うが、よろしく頼む」
「はい、どうぞお任せください」
そして片翼の女神像に目を向け話しかける。
「ということで申し訳ないがウチの玄関ホールでウチの者を見守ってくれると助かる」
心なしか女神像が微笑んだ気がした。
※※※
しばらくして両羽をちゃんと生やした女神像が玄関ホールに設置された。
実のところ前領主が個人所有していた美術品?などを転領先へ持って行ったので玄関ホールはかなりさみしい、がらんとした状態だったのだ。
女神像の修理の手配などはセーラが行い、玄関ホールに設置するための台座も手配、更には女神像の清掃も行ったようだ。
教会で見たときは憂いを帯びていた顔も何か明るくなっている気がする。
そしてセーラ嬢は女神像設置後、私へ報告を済ませ時間を無駄にすることなく帰っていった。
さすが才媛と噂されるだけのことはある。もしかすると家令と顔を合わせたくないだけな気もするが・・・
ともかく領地の方の管理はセーラ嬢に任せておけば問題ないな。
女神像を見上げながら呟く。
「美人さんに見守ってもらえるとやはりいいな」
あとは物資の件か・・・
さすがに玄関は早朝に掃除をするので、女神像設置後に散らかったところをメイドが何人かで掃除をし直している。
ん?あれは?
「あれは・・・、アリサ?」
「あ、旦那様」
「ここの掃除か?よろしく頼むぞ」
「はい」
まじめに仕事をしているようだが、相変わらずちょっとフワフワしている気がして目が離せない。
倉庫でも色々手伝ってもらったしな。
そう思いながら何気なくアリサを見ている。
そういえばアリサが来てもう結構経つが、追加のメイドたちが来ないな。
前領主がかなりの人員を連れて行ったが追加で来たのはアリサだけだ。
アリサが来たのは、転領からすぐの時期だったから前領主の依頼分での人員補充か。
となると今回の補充要請分は全然来てないことになる。
メイド協会はどれだけ待たせるんだ?
ちょっとまて。
・・・人員が減っているのに購入している物資が(帳簿上)減った様子はない。
実際は搬入されている物資は少ないのに足りなくなっている様子もない。
なんか、やっとカラクリが見えてきた気がするぞ。
減った人員分に相当する物資を帳簿上減らさずに代金を掠め取っているのか。
業者は出荷してない物資を出荷していることにして、他にそれを売ってその代金を懐に入れる。
人員は減っているから物資の搬入量は減らしても問題はない。
確かに転領前からドタバタしてこっちの物資を使う機会も減っているはずだしな。
しかも物資の単価は高めに設定か・・・
これは業者もグルだな。
・・・そうなるとメイド協会へ人員補充を申請してるかも怪しいな。
私が直接メイド協会に確認してみるか・・・
領主はなにも管理しない、何も分からないと思ってるんだろう。
この調子だと過去にもいろいろやらかしてそうだが・・・
確定的な事は判らなくてもやっぱり前領主も、家令がイマイチ信頼できないと感じてたから置いていったのか・・・
素直に何をやっていたか白状すれば温情をかけるとして、誤魔化す様なら替わりの家令を見つけ、追い出す用意をしたのちに財産没収して追放だな。
まだこちらも準備が整ってないから、まずは業者の切り替えを打診して様子をみるか。
「えーっと、旦那様?」
「ん?なんだ?」
「いえ、難しい顔なされて動きが止まってしまったので、大丈夫かなーと」
「ああ、やっとこれからの方針が決まったんだ。
これから忙しくなるな」
今回は旦那様メインになります。
色々と回収してない部分もあったので前日譚です。
そしてこれを読んだ後に第1部へとうまく繋がっていればいいのですが・・・
面白かった、イマイチだったとお気軽に評価をいただけると嬉しいです。
感想もお気軽によろしくお願いします。