え?!毎夜、伽にくるんですか?て、ゆっくりできる最後の夜って……(ちょっと加筆しました)
前回のあらすじ:
二夜連続で伽を下命されたので周りのメイドさん達からの尋問がすごいです。
この間の伽で旦那様は満足したらしく、平凡で平和なメイドの日々が続き、あの伽の日々を忘れかけていたのですが、今朝旦那様より伽の下命がありました。
うー、久しぶりだと緊張するー
お母さんの胸が恋しくなった?何かお辛いことでもあったのでしょうか?
ああっ、また他のメイドさん達からの尋問されそうな気がします。
凄いテクニックを持ってるのに教えてくれないケチという認識になっていてこの頃、他のメイドさんたちの私を見る目がすごく冷たいんです…
でも、ホントに内容がアレだったらどうしよう……
旦那様も緊張していたのか、誘うときなんか色々突っかかってましたし…
今からでも断ったほうがいいのでしょうか……
取り敢えず明日の朝用の服とかブラシとかは持ってきましたし、準備はOKなのですが……
――コンコン――
「旦那様?」
「入れ」
部屋に入ってベッドを見るといつものように旦那様が座ってらっしゃいます。
なんかやっぱり緊張してるような?
「あ、あのー、今日はどうしますか…」
「あー、アリサ、そうだな、あーーーー、えーー、
・・・とりあえず前回と同じようにベッドに入って、抱きしめてもらえるか?」
「はい」
良かった。とりあえずいきなりはないみたいです。
・・・ふわふわでいいお布団だなー
「やっぱり落ち着くな。
・・・アリサ、お前私のこと好きか?」
「へ?はい。旦那様にはよくしてもらってますし、嫌いならここに来ませんし」
「ならば問題ないか。明日から…、いや、明日からは無理か
とにかく来れるようになったら毎日伽に来い」
「はい?えっとそれはどういう……」
「私にはこの胸が必要だと判ったので、お前私の妻になれ。
・・・だめか?」
「へ?、あ、いや、ダメって言いますか、私はメイドで何もできませんし…、
旦那様ならもっとちゃんとした家からふさわしい方をお選びになられた方が……
あと、他のメイドの方もいますし…」
「何もしてない貴族夫人など山ほどいる。家のことは気にするな。
他のメイドへの対応は家令とメイド長が抑えるということで話をつけさせる。
周りじゃなくてお前はどうなんだ?」
「あ、え?えーーーーーーーーっと、せ、せめて愛人位にまかりませんか?」
「まからんな。正妻を放っておいてお前のとこに入り浸って欲しいのか?」
「うーーー」
「何も問題ないようだな。じゃあ決まりだ
明日からはたぶん大変になるから、ゆっくりできる最後の夜だし早めに寝ておけ」
「え?それはどういう?」
「ほら、早く寝るぞ」
・
・
・
「んー」
覚醒するといつものように旦那様の部屋のベッドで一人寝てました。
『ここは?そういえば旦那様のとこに昨日来たんだっけ』
なんかそういえば昨日の夜、明日からは忙しくなるとか言われたような…
て、ちょっと待って、その前に妻にするとか言われなかった?
一晩経って落ち着いてから考えるとなんかすごいこと言われてた気がする…
えーと、これって旦那様が旦那様になっちゃう?
確かに旦那様のことはひそかにひそかーに『いいな』と思ってましたが、そんな身分不相応なこと考えるだけでも畏れ多いことです。
大体平民でメイドの私が旦那様となどいくら旦那様でもできると思えません…
ちょっとあり得ない未来を考えて頬が紅潮してるのを自覚してると扉がノックされました。
――コンコン――
「はい」
「起きてるな。とりあえず朝食はここで食べていけ」
「あのー、一応着替えも持ってきたので、起きても大丈夫ですが…」
「ん、そうか?
どうしてもというなら喜んで着替えをじっくり拝ませてもらうが」
「え……」
3回も伽に来てますが、さすがにそれは…
――コンコン――
「お食事お持ちしました」
「はいれ」
・
・
・
いつもの豪勢な朝ごはんをやっぱりベッドで食べ終わって一息ついていると旦那様がおっしゃられました。
「アリサ、メイドの職を一時解職だ」
「へ?」
「これから部屋に戻り屋敷を出る準備をしろ。
準備が終わったら屋敷の前に馬車を用意してあるのでそれに乗れ。
言いたいこともあると思うが、今は黙って従ってくれ」
旦那様に黙って従えと言われましたので部屋に帰り少ない荷物を纏めてお屋敷を出ると、
2頭立てのなんかすんごく綺麗な馬車が止まっています。
『誰かお客さん?
私用の馬車ってどこに来てるんだろう?』
あんな立派な馬車が止まってるということはどこか隅の方に避けてるんだろうなーと思いながら、
キョロキョロと周りを探します。
「アリサ、何してるんだ?」
「え?」
「早く乗れ」
旦那様がよそ行きの服装でさっきの綺麗な馬車から乗り出して呼んでいます。
あの立派な馬車に私のちょっとボロい普通の服で乗るのはできれば避けたいのですが、さすがに旦那様の言うことを無視することもできませんので馬車に乗り込みます。
洗濯はしているので問題ないはずですが、いろいろと立派すぎて私の服で座席が汚れそうです…
対面型の座席になっていたので旦那様の斜め正面に乗り込むと旦那様が話し始めました。
「本当なら屋敷の中で話したかったんだが、どこで誰が聞いているか分からなくてな」
「はぁ…」
「アリサ、突然だがお前の生き別れの親が見つかったことになった」
「は?いえ、私、親とは生き別れになってませんが…」
「何も言わずそういう事にしておいてくれ」
「はぁ、旦那様がそうおっしゃられるなら、判りました」
そうは言ってもぜんぜんわかりません。
「それでその親元に行き色々と勉強してもらう」
「えーっと……」
「これから行くところで言われることをよく聞いて従えばいい」
「まぁ、それくらいなら……」
「ちゃんとできるようになればまた屋敷に帰ってくることができる」
「そうなんですか…」
馬車で揺られている間、旦那様が色々と説明しています。
「ご両親にも事情を話さないといけないか…。まずはこちらから出向かなければ…」
なんか一人で納得しているみたいです…
馬車でしばらく揺られた後、馬車が停まりました。
「ここだ。ここがお前の生き別れの親の屋敷になる」
「え?」
私の目の前に旦那様のお屋敷よりも立派なお屋敷が堂々と聳え建っています。
『えーーーー』
危うく叫ぶところでした…
大きなお屋敷の玄関先で(たぶん)屋敷中の従業員とともに、聞いたこともない生き別れの貴族の親(えっと、今までの親は何だったんでしょう?)に出迎えてられました。
「おー、アリサ、大きくなって」
なんか棒読みな感じです…
「えーと…」
「考えることは色々あるだろうが、お父様と呼んでくれ」
色々と都合がありそうですし、言わないとなんか先に進まなそうですし、なんか周りのメイドさんの中には泣いてる方もいらっしゃいますし…
「・・・お、お父様?」
このあと旦那様とお父様?が
「よく娘を探し出してくれた」や
「聞いていた特徴にそっくりの娘が私のところに来た時はびっくりしました。
それで聞いていた話や昔のことを確認して確信しました」
みたいなことを集まっている使用人たちに聞こえるように話していました。
そんな話、私、初めて聞きましたし、旦那様に確認されたこともありません。
旦那様には馬車の中で何か訊ねられたら話を合わせるようにいわれましたけども・・・
そして私は、私の身の上話を教えられるというよく判らない経験をしました…
お父様?が格上のある貴族のお嬢様と婚姻や挨拶も済ませていないときに私が生まれたらしく、相手の貴族に私を奪われて、その後、行方知れずになったという事らしいです。
ちょっと今までの生活と違ういろんなことを教えられたり、事柄が起きたりしてついていけません。
言われたことをやるだけで精一杯になってきました。
とりあえず、お父様は貴族なので外に出しても恥ずかしくないように、今までの生活でできてない(基本的な)貴族講習を私に1ヶ月半程受けさせるとのことらしいです。
貴族様の服は見慣れてはいるのですが、もちろん着たことはありませんし、メイド服と違って普通に裾の長いドレスでしたし、歩き方から違います。
挨拶の仕方、手の動かし方、返事の仕方、声のかけ方・・・
地獄のような講習(もちろん実技付)でした。き、貴族って大変なんだなぁ。
そんなことを延々と教えられていたある日、お父様(仮)に呼ばれました。
――コンコン――
「お父様、アリサです。お呼びとのことで参りました」
「かまわん。入れ」
「早速だが、アリサ、ちゃんと挨拶くらいはできるようになったか」
「はい、まだまだこれからだとは思いますけど…」
「うむ、教えている講師からよくやっていると聞いている。もう教育も終わりだ。我が娘として立派に嫁げよ」
「え……」
言いながら感極まっているのか、お父様(仮)がウルウルしているように見えます。
「お父様、ありがとうございます」
その後、爵位付きの政略結婚の花嫁として、それは豪華に旦那様の元へ嫁いできました。
ちなみに嫁いでくる際は白の刺しゅう入りの白いロングトレーンのドレスで飾り付けられてました…
白に白なので派手にはならないのですが、すごく手間をかけていて一目で高価なのが判ります。
・・・メイドさんたちが毎日掃除をしないといけない理由がはじめて判りました。
来た時よりも立派な馬車でお父様(仮)と一緒に旦那様の屋敷に向かいます。
なんか他にも何台かの馬車が生活用品?を運んで一緒に旦那様の屋敷に向かいます。
領地内の沿道にも人があふれてお祝いをいただきましたし、旦那様とお父様(仮)が集まっている他の貴族様に私を妻とすると紹介して挨拶している様子ははっきり言って夢の中の出来事のようです。
でも良かった。またこの屋敷(旦那様のとこ)に帰ってこれた。
普通のメイドだった私が貴族として爵位付きで嫁いでくるなんて、趣味で読んでた本の内容が霞むような怒涛の展開…
て、な、なんでこんなことに……
※※※
――コンコン――
「旦那様、お呼びにより参りました」
やっと家令が来たようだ。
「どうした?私の意に反したデキル家令にしては呼んでから来るまでに時間がかかったな」
「旦那様、アリサ様の事、お許しいただけないでしょうか」
「許すも許さないも、お前の能力ではできなかったと言うだけたろ?
私としては役に立たないのなら役に立つ人物に変えたいと思うだけだ。
なのでお前には長く務めてもらったが今日限りで解雇だ。
次のとこへの紹介状には私に逆らった件も含めて今回の事書かせて貰うよ。
あと、気づいてないと思ってるだろうが業者からバックマージン貰っていた件も書かせてもらう。
なかなか次は見つからないと思うが頑張ってくれ。
ちなみに心配してくれなくても次の家令も決めてある」
「はじめまして、もう2度とお会いすることもないと思いますが、あなたの後任を任されました。私としてはあなたにはとても感謝しています。
いい働き口を譲ってくれてありがとう。
お礼に同じ業者を使っているお屋敷に注意喚起をあなたの名前で送っておいたので、ここで遊んでないで、早めに逃げたほうがいいですよ?たぶん他の屋敷も契約切るでしょうから」
※※※
「何をにこにこしているんだ?」
「ああ、あなた、ちょっと一緒になった頃のことを思い出して……」
「一緒になった頃か?」
「あなたが私の胸に顔うずめながら結婚迫ってきたときの…」
「あれか、あの時が生きてて一番ドキドキしたぞ。
あの時の家令にお前を嫁にしたいと言ったら
『相手はメイドだし、せめて愛人で我慢しろ』
といって聞かなかったな。
で、格的にも問題ない仲の良い貴族に訳を話して養子にしてもらい、その後引き取るということを内密で話をして、結構な支度金も渡して家格に会う嫁入りになったわけだ。
おかげで今もその時の貴族に頭が上がらん。
家の結びつき重視の貴族的にも良い縁ができた感じだが」
「わたしは伽に呼ばれた日に随分ドキドキしましたから。
そういえばあの時、なんでいきなり抱き着いたり、伽なんていいだしたんですか?」
「あれか、実はな、夢の中で女神様に
『私を捕まえられたなら気になってる娘への絶対失敗しないアプローチの仕方を教えてあ・げ・る・❤️』
って言われてな。
夢の中で必死に手を伸ばしたんだ」
「あら、まぁ。その『気になってる娘』ってわたしのこと?」
「あんまりいじめるな」
「うふふふ」
「で、『二人きりで話をしたいなら伽に誘え』と言われたんだ。
なるほどなーと思ったよ。気がなければそもそも来ないからな。
「ソレは……そうかもしれないですわね」
「女神様は『来るまで誘い続けろ』って言ってたが…
で、了解取り付けたら知り合いの貴族に養女にしてもらって爵位つきで嫁にもらえば誰も文句言えないと」
「あれ、全部女神様の入れ知恵だったんですか」
「そうだぞ、爵位付きで嫁入りしてきた時のお前の顔を見た家令の顔ときたら、くっくっくっ。
今でも目に浮かぶ。顎が信じられないくらい落ちてたぞ。
完全に言葉を失って、何も言えなくなってたからな。
で、おまえはどうだったんだ?」
「え?わたし?私は最初に伽に行ったときに私のことどう思ってるかとか訊こうと思ってたのに、思いっきり寝てて、なんで緊張して来たのかバカらしくなっちゃって。
で、次の日に抱きしめたまま寝ちゃった貴方を見て、なんか妙に安心しちゃって、ちょっといいかもって。
で、
この人と一緒になれたらいいのになーって。
メイドだし愛人位ならともかく、絶対無理って思ってましたけど」
「そうそう会う機会はないと思うが、もしまたあの女神様に会ったら感謝してもしきれんな」
はじめての我が子に指を掴まれながら二人で我が子をみる。
この子が大きくなったら、お前のお父様とお母様は女神様に縁を取り持ってもらったって教えないと。
あとこっそりとお前の母様は女神様とそっくりだとも教えとかないとな
全年齢版で終わった。よかった。
ちょっと?加筆(起きて~怒涛の展開まで)しました。
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