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前世で処刑された大聖女は、聖女であることを隠したい  作者: 延野正行
第五章

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幕間2 とある賢者の受難

お久しぶりです。

賢者との決着が着いてなかったので、再び書きました!

(幕間 とある賢者の受難の続きです)


 ミレニアの家庭教師を引き受けた謎の賢者「先生」。

 当主ヤーゴフ曰く、天才という娘の鼻柱を折って欲しいと言われるが、逆に折られる始末。のっけから醜態をさらした「先生」は果たしてミレニアの家庭教師を続けられるのでしょうか?




 なんと言うことだ……!


 よもやミレニアが、あれ程の才ある若者だったとは。


 子どもだと思って油断してしまった。


 だが、私も在野に下ったとはいえ、【賢者】と言われた魔術師。


 かつては1万人以上の門弟を教え、魔術の深淵を探求した者。


 【賢者】カンダレフと讃えられ、多くの王や大公たちから我が知恵を欲した者。


 いくら100年、いや1000年に1度の天才だとしても、元教育者として黙っているわけにはいかん。


 しかし、我の権威は失墜しかけている。


 特にご当主の評価は日増しに下がっていっている。それは差し入れられる菓子と飲み物のレベルでわかる。


 最初は、高級茶葉を使った紅茶だったのに、出涸らしになり、ついに今日は水だけだった。


 いかん。このままでは【賢者】の沽券に関わる。


 だが、私は焦っていない。


 何故なら、今日は実践訓練の日だからだ。


 いくら魔術文字が読めたところで、実践において使えなければ意味がない。


 魔術は高い集中力と、体内での魔力の練り上げが必要になる。


 確かにミレニアの魔力には目を見張るところがあるが、果たしてその魔力を効率良く使うことができるかな。


「ミレニア、今日は実践だ」


「はい。よろしくお願いします」


「よい。返事だ。それではまずはお前の力量を知りたい。早速だが、我と戦え」


「先生と戦うんですか?」


 ミレニアは目が泳ぐ。


 そうであろう。貴族の子女が戦うなんてことは、これまでしてこなかったはずだ。


 喧嘩すらまともにやったことがないだろう。


 だが、これはミレニアの高くなった鼻を折るために致し方ないこと。


 我はこの戦いに勝って、ミレニアとご当主を呼び正体を明かすつもりだ。


 【賢者】カンダレフといえば、ミレニアもご当主も目の色を変えるだろう。


 そして上には上がいることを諭し、我は高級紅茶を出してもらえるほどの信頼を勝ち取るのだ。


「怖じ気づいたか? それともこの老いぼれに魔術を向けるのは、気が引けるか? 舐めるなよ、ミレニア。すでに一線からは遠ざかっていても、我はかつて【賢者】呼ばれた魔術師……」


「え? 先生って、【賢者】って呼ばれていたんですか??」


「あ? いやいやいやいやいや……。いいいいい、い、今のはなし! じょ、冗談じゃよ」


 し、しまったぁぁぁぁああああ!!


 つい口が勝手に動いてしまった。


 ミレニアを負かした後で、格好良く名乗り出るところだったのにぃ!!


 不覚! なんたる不覚!!


 笑って誤魔化したが、多分バレたのではないか?


「あははは……。そうですよね。王国の生き字引といわれる稀代の魔術師にして【賢者】の称号を持つカンダレフ様のわけないですよね。あははははは!」


 ミレニアは朗らかに笑う。


 くぅ! 誤魔化し大成功だけど、なんか腑に落ちん!


 ま、まあ良い。実践訓練でミレニアを負かせば、万事問題ない。


 悪いがミレニア! 最初から全開でいかせてもらうぞ。


「常夜のすべて亘る者よ。牙を研ぎ、爪を光らせ、雷天に狂え。我はそなたに傅く者……。我はそなたの使命を代行する者なり。神すら呷る其は力。我が前に顕現し、ヤードラーの海を穿て!!」



 【虎神雷牙陣(サンダー・ライガー)】!!



 600年前、ナーガ記における魔術文字の中でも、もっとも上級の雷属性魔術――。


 魔王の腕すら穿つと言われた、雷属性魔法威力をとくと見るがいい!!


 カンッ!


「はあ?」


 我の渾身の魔術は、ミレニアが展開した防御魔術であっさり弾かれてしまった。


 我は顎が外れるぐらいショックを受ける。


 対するミレニアは、そんな我の顔を見て、苦笑を浮かべた。


「さすが、先生ですね。では、次は私の方から――――」


「炎冠に座す魔神よ――――」


 な、何じゃ。【魔炎灼弾(ブラストフレア)】ではないか。


 確かになかなかの魔術じゃが、この程度なら我でもなんとかなろう。


 どうやら実践を想定して、使いやすい魔術文字を選んだと見える。


 判断としては正しいが、その程度では我を防御魔法を抜くことは――――。


「――――って! ちょっと待て!!」


 ミレニアの手に握られていたのは、巨大な火塊。


 小さなアルカルド子爵家の屋敷ながら、すっぽりと覆うほどの大きさだった。


「なんじゃこれは! 嘘じゃろ! これが――――」


「悪鬼、人ならざるものを討ち払え……」



 【魔炎灼弾(ブラストフレア)】!!



 ジュドォォォォォォォオオオオオオンンンンンンン!!


 その後、命からがら生き延びた我は、名を名乗ることもなく、自ら家庭教師を辞退することを告げて、再び野に下った。


 我が1つミレニアに言うことがあるとすれば、そなたに教えられるものなどいないということだ。


新作『王宮錬金術師の私は、隣国の王子に拾われる ~調理魔導具でもふもふおいしい時短レシピ~』を投稿しました。

元錬金術師の主人公が、おいしい時短調理器具を作って、隣国の王子にご飯を作ってもらうお話となります。

『公爵家の小さな料理番様』以来の飯テロ作品なりますので、

是非ご賞味下さい。


下記にリンクがございます。

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新作投稿しました! よろしければ、こちらも読んで下さい。
↓※タイトルをクリックすると、新作に飛ぶことが出来ます↓
『王宮錬金術師の私は、隣国の王子に拾われる ~調理魔導具でもふもふおいしい時短レシピ~』


3月10日。角川コミックス・エースから第4巻が発売です。是非ご賞味下さい!
↓↓表紙をクリックすると、公式HPに行けます↓↓
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