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第4話 魔王の幹部

感謝! 感謝!!

おかげさまで、ジャンル別83位、総合181位と日間ランキング入りしました。

ブックマーク、評価ポイントを入れてくれた方ありがとうございます。

まだの方は是非よろしくお願いします。

 5歳になった。


 3歳の時に起こした騒動以来、私は魔術書から離れる――ことはしていない。

 むしろどっぷり浸かり、魔術の勉強を続けている。

 父の「天才」発言の後、私はすぐに言い訳した。あれはたまたま口にした言葉が、魔術として発動しただけだと……。


『本当は全然読めないし、さっぱり魔術にも興味はない』


 3歳児のまだ舌っ足らずの口調で、とにかく「天才」発言を払拭しようとした。

 甲斐あって「天才」発言は撤回された。そもそも日常的に使われる文字ですら勉強もしていない子どもが、上級魔術の文字を読めるなど、あまりに非現実的だ。


 けれど、私が魔術を発動させたことは事実……。

 結局、父は今でも私のことを「天才」だと思ってるらしい。魔術を使ってもいい10歳頃には家庭教師を雇おうとしてるようで、伝手を辿って方々に手紙を送っているそうだ。


 そんな私が未だに何故魔術を勉強しているのかというと、これもまた護身のためである。

 これまでの前世を考えると、神様が私に能力を与えて、世界に派遣したということは何かあると見ていい。

 いつものパターンなら、この世界もまた何か未曾有(みぞう)の危機を迎えるはずだ。

 実際、前世ではとんでもない目にあった。


 だけど、仮にそれが自分の使命なら、さすがに見過ごすわけにはいかない。

 神様に文句の1つでも言いたいところだが、私は戦うつもりだ。


 でも、今回の世界救済に関して、私は制限を設けることにした。


 まず目立つのは絶対に、絶対ダメ!

 【勇者】とか、【聖女】とか持ち上げられるのは、絶対に禁止。

 やるならこっそりがいい。

 できれば、裏方に回って、この世界の【勇者】や【聖女】を動かし、救済する。

 それがベストと考えた。


 前世での失敗を繰り返してはいけない。

 今、こうして魔術書を開いているのも、普通の生活を勝ち取るために必要なのだ。


「また魔術書を読んでる。ずっと本ばかり読んでると、木の根になっちゃうわよ」


 意地悪な声が背後から聞こえてきた。

 振り返ると、薄い金髪の少女が立っている。

 身なりはよく、お古だけど着こなしは悪くない。むしろ洗練されていた。

 ブラウンのクリッとした猫目が印象的で、頭には薄い桃色のリボンが結んでいる。


 お人形さんのように可愛いこの少女は、私の3個上の姉ライザだ。


 見た目は可愛いけど、我が侭で意地っ張り。私に対してお小言が多く、何かしら怒られることが多い。我が家が誇る小さな小姑だった。


「木の根?」


「本の紙は、木が材料になってるのよ」


 へぇ~。まさかライザに物を教えてもらえるとは。

 ライザは今8歳。あと、2年すれば貴族の学校に通う。そこで礼節や教養、ダンスなどを身に着ける。

 ただ貴族の学校に通うのにも試験があって、最近家庭教師を雇って勉強を始めていた。


「たまには外の空気を吸ったらどう? 気分転換になるわよ」


「いかない」


「あたしが折角誘ってあげてるのに! その態度は何よ」


「行くなら、ライザお姉様だけ行けばいいじゃない」


 あ、しまった。こういう言い方はライザにしてはいけないのだ。

 気付いた時には遅い。ライザの顔はすでに赤くなっていた。


 実はお姉様には、友達と呼べる人間がいない。だからよく私が遊びに付き合わされる。

 姉にとって私は姉妹でもなければ、友人というわけでもない。

 子分という立ち位置がしっくりくる。


 素直じゃなくて、態度も高飛車。領内にいる子どもたちの間でもすこぶる評判が悪い。

 こうして魔術書を読んでる私の方が、友達が多いぐらいなのだ。


「行くったら行くの!!」


 強引に連れ出された私が、ライザ姉さんと向かったのは近くの森だ。

 背の高い木が建ち並び、加えて鬱蒼とした茂みが行く手を阻んでいる。


「ねぇ、ミレニア。あなた、この森に大昔のいせき(ヽヽヽ)があるって知ってる?」


「いせき?」


 私が首を傾げると、ライザ姉さんは高い鼻を振って得意げに話を始めた。

 なんでも、この森の奥には約1000年前の遺跡があるそうだ。

 何か強力な魔物を封じ込めたらしく、この辺りでは禁足地になっているらしい。


「それって、子どもが入っちゃダメなんじゃ」


「入っちゃダメだけど、遠くから見ちゃダメとは言われていないわ。それにあんた、こういうの好きでしょ?」


 好きかどうかは別にして、気になるといえば気になる。

 神様はこの世界が、私が初めて救った世界の1000年後だと言っていた。1000年前となると、私がいた時ということになる。

 遺跡として残したものに心当たりはないが、関係者としては1度確認しておきたかった。


 藪を切り払い、子どもの足で進むこと1時間。

 私は明らかに人工物と思われるものの前に、到着した。


 行く手に現れたのは、石碑だ。


 石碑は5つあって、大きな石碑を小さな石碑が四方を取り囲んでいる。

 小さな石碑と石碑の間には古い縄が張られているが、すでに3本が切れていた。


「本当にあるなんて……。しかも結構屋敷から近いし」


 それに間違いなく1000年前の遺跡だ。

 石碑には魔術的というより、魔法的な力を感じる。それもかなり強力な封印が施されていた。

 ここに封印されている魔物は、かなりの化け物だ。


「なーんだ。遺跡っていうから、もっと宝石とかあると思っていたのに。お墓じゃない」


 どうやら、ライザにとって遺跡=お宝だったようだ。


「ライザ姉さん、近づくのは危険ですよ」


 私が遠巻きに観察していると、ライザはスタスタと遺跡に近づいていく。


「こんなの単なるお墓じゃない。何にも怖くないわ」


 ベタベタと遺跡を触り始める。

 はっきり言って、元聖女の私ですら何が起こるかわからない。

 一刻も早く連れ出さないと、まずい事が起こるような気がする。


 私はライザの手を取った。


「姉さん! 帰ろう」


「もう? いやよ。あなたもその辺を調べてよ。何かお宝があるかもしれないわ」


 強引に私の手を振り払う。

 その時、急に力が抜けたからか。ライザは体勢を崩した。

 そのまま唯一繋がれたまま残っている縄へと倒れ込む。


「イタタタ……。あっ――――」


 ライザ姉さんは頭を抱えながら起き上がる。

 振り返って、縄が切れていることに気付いた。


 瞬間、私は強力な魔力を感じる。


「まずい!」


 私はライザ姉さんの手を問答無用で引っ張る。

 とにかく石碑から離れようと必死に走った。

 直後、石碑が吹き飛ぶ。その爆発に押されるように、私たち姉妹は地面に投げ出された。

 振り返ると、そこにいたのは大きな鴉だった。


「いや、違う……」


 それは私がよく知る生物だった。

 大きな鳥は翼を広げると、次の瞬間炎のように燃え上がる。

 それは黒い不死鳥のようだった。


 思い出した。


 この封印は私が1000年前に施したものだ。

 そして、今目の前にいるのはブラックフェニックス……。



 魔王の幹部の1人だ。


ここまでお読みいただき誠にありがとうございます。

本日はもう1回更新があるので、お楽しみに!

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