第21話 聖女は反省する(前編)
昨日、メインのパソがクラッシュしてしまい、ちょっと短めです。
でも、夕方もう1本出すので、ご容赦のほどを……。
確かに言った。
今、私のことを『聖女』と……。しかも、〝大〟って。
どういうこと? 私の素性がバレた?
だとしたら、どうやって?
そもそもこの『勇者』様自体が何者なんだろう。
いや、それよりもこの状況……。
私ってば、大ピンチじゃないの???
「落ち着いていただきたい、大聖女様」
アーベルさんは私の手を握る。
ほんのりと温かい手は優しく、ただそれだけでホッとしてしまう。
「失礼しました。堅苦しいのはやめましょう。そうだ。紅茶と珈琲どっちが好みかな。それとも何か軽く食べる?軽食ぐらいなら家臣に言って作らせるけど」
「いえ。本当にお構いなく」
私は飛び立つ瞬間の鳩みたいに手を振る。
「そ、そんなことよりも、その――なんで私を『聖女』と……?」
その質問にアーベルさんはすぐに答えなかった。
しばらく真剣な顔をして考えた後、部屋の中にあるソファに私を座らせる。
勇者自ら紅茶を入れると、私の前に置いた。
錆色をした紅茶には、顔を青くした私の顔が映っていた。
「地下での件だよ。君が僕に飛び込んできた時、君は僕の記憶に触れなかったかい?」
「……はい」
それははっきりと覚えている。
『勇者』アーベルと、使い魔ミゼルの物語。
まるで自分のことのように、今も私の記憶に収まっている。
「あの時、君の記憶も僕の方に流れ込んできた。最初、それが何かわからなかった。受け入れがたいものだったからね。でも、自然と僕が見たイメージが記憶として定着していくうちに、それは確信に変わった」
「私の記憶をどこまで見たんですか?」
「すべてを見たわけじゃない。だが、君の前世での最期は見たよ」
「そうですか……」
「同じ勇者として、どう言ったらいいか」
アーベルさんは頭を抱える。別に彼が悪いわけじゃない。
前世の勇者や王子、そしてその人たちの言うことに耳を貸さず、ただ自分の信念と正義を貫き続けた私も悪いのだ。
「信じられないかもしれないが、僕は君を傷付けるようなことは絶対にしない。君は僕を闇から救い出し、ミゼルの尊厳を守ってくれた真の聖女だ」
そう言って、アーベルさんは私の手を取る。
甲に口付けし、誓った。
どんなことがあっても、僕は君の味方でいることを誓う。
それはまるで英雄譚のワンシーンに出てきそうな台詞だった。
頭を垂れる『勇者』様を見ながら、私は言った。
「お断りします」
「え?」
アーベルさんは顔を上げる。
顔に「なんで?」って文字で書いていた。
ちょっとうっかりな『勇者』様を見て、私は思わず吹き出す。
「だって、私はもう『聖女』じゃないんで。なるつもりもありません」
「でも、君はこの世界の厄災を……」
そうか。そこまで記憶が見られていたのね。
「そんなの『聖女』じゃなくたってできると思うんです。私は普通の魔術師でいい」
世界を救うのが、『勇者』や『聖女』の専売特許と思ったら大間違いです。
本当にそうだ。
すべてのことを抱え込んだ自分も悪いけど、すべてを押し付けた人だって悪い。
世界を救うのは私じゃなくていい。
私はその1人であって、誰かじゃない。
みんなで頑張ればいいのよ。
「ふふふ……。あはははははははは!!」
突然、アーベルさんはお腹を抱えて笑い出した。
何? 私、なんかおかしなことをいったっけ?
割と真剣に話をしていたと思うんだけど……。
「君の言う通りだ。世界を救うのは、君でもなく、僕でなくてもいい。誰のせいでも、誰のおかげでもない、世界の救済か。素敵な提案だね」
「提案じゃないわ。私は本気よ」
「わかった。……君の考えを僕も支持する」
「そう。じゃあ、ちょっと手伝ってほしいことがあるの。アーベルさんって、結構な権力者よね」
「なんだか急に言い方がぞんざいになってきたな。否定はしないけど」
「じゃあ、悪いけど……。ちょっと学校の点数をいじってほしいのよね」
私はにんまりと笑うのだった。
自分で書いててなんですが、
「世界を救うのが、『勇者』や『聖女』の専売特許と思ったら大間違いです」という、
ミレニアの台詞が結構好きです。
作者も書いてて、なんでこんな台詞が出てきたのだろうと思うのですが、
まあこれがミレニアの本音なんでしょうね。
唐突な自画自賛でしたw




