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スーパーレア

 その日は記念すべき命日だ。誰のかと言われれば、それは私の。葬式には数多大勢が訪れて、私の息子は立派に喪主を務めている。


 棺に収まる私の身体を、私の魂が見下ろしている。深い皺を顔に刻むが、それは微笑みから生まれたもの。そしてあの日以降、生涯貫いたショートヘア。決心の証にと鋏でばっさり切り落とした。


 あれから私は何をしたかというと、ひたすらに勉学に励んだのだ。国の手当てや保証を調べて、それらをしっかり活用し、多くの時間を勉強に捧げた。


 それを税金ねだりの恥ずかしい奴だと言う者もいたが、しかし身を粉にして働いたところで、ハズレの連鎖は止められない。息子にぎりぎりの生活を迫りたくはなかった。私が求めるのは親ガチャの成功、つまりは人生の成功なのだ。我が子の将来を思えば、そんな誹謗中傷などもろともしない。


 そうして私は資格を得て、専門的な仕事に就くことに。その後も家事に仕事に、合間には勉強も欠かすことなく、ステップアップを重ねていく。いつの日かそんな私を支えてくれる、大事な夫とも出会うことができた。主夫として家事を任せた為に、働くことはなかったが、しかし心優しく、実の子供のように息子を可愛がってくれる。


 息子はそれでも、一時は親子関係を嘆くことがあった。しかし反抗期も終われば鳴りを潜め、その後は親子仲良く、休みには旅行に買い物に、幸せな日々を過ごす。レアとまでいかなくとも、ハズレからは逃れることができたのかな。


 私が辞めざるおえなかった高校はもちろん、大学にも通わせることができ、そして息子はある日突然、一人で会社を立ち上げた。とても不安だったが、今では経営も軌道に乗って、我が孫たちは遂にガチャでいう、レアの領域に辿り着けた。


 我が血族の呪われし運命に、もはや既に見る影はない。私の一家はいまや、親ガチャの当たりくじに姿を変えたのだ。


 生前、SNSでよく見掛けた、親ガチャの不幸を嘆く者たち。その気持ちは私にも分かる。倫理を外した駄目な親は、この世に間違いなく存在し、だから親ガチャに否定的なことを言うつもりはない。


 しかし少なくとも種族のガチャには成功し、人間として生まれることはできた。国のガチャにも成功し、日本という国に生まれた。そしてSNSで呟くのなら、ネット環境は得られる程度に大外れを引いた訳でも無い。

 

 愚痴ってもいい、嘆いたって構わない。でも、前を向くことだけはやめないで。あなたは親ガチャに外れたけれど、子供には当たりを引かせてあげよう。

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