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三つ目の罪(グリニス公爵夫妻と、令嬢ティーネ)

わたくしが育てたファルト皇太子も早20歳、あれから20年経ちました。

わたくしが皇妃になったのが、19歳の時ですから、ああ…時が経つのが早いですわね。

わたくしは子を産むことは出来なかったけれども、レティシアが亡くなってからのフィルネオ様にわたくし、とても愛してもらって大事にしてもらえましたの。御自分の子と信じて疑わないファルトを育てて貰っている負い目があるのかしら…。ハルディオとサラの子とすり替えましたのに。

サラの息子として育ったマークは、とても良い青年になりましたのよ。

騎士団に入り、近衛騎士になり、ファルトを傍で警護する姿はとても頼もしくて。


ああ…これで、わたくしは過去の罪を忘れて、皇妃として幸せに死ぬまで生きていけるそう思っておりました。

皇太子ファルトは、隣国の王女との結婚式を控えていて、それはもう幸せそうで。

イリーナ王女は、時々こちらの国へ訪問して、ファルトとの愛を育んでこられたのですけれども、とても可愛らしく気遣いが出来る方で、将来の皇妃としても、優秀でわたくしそれはもう、良い人が皇太子妃として、ファルトに嫁いでくれると、楽しみにしておりました。


とある日の事ですわ。

フィルネオ様がわたくしに言うのです。


「グリニス公爵令嬢、ティーネをファルトの側妃にと思っているのだが。」


「グリニス公爵令嬢ですって???何故?ファルトがその女性を愛していると言っているのですか?」


「いや。だが…側妃は必要であろう。私達は子がファルトしか恵まれなかった。

子は沢山いた方がいい。そうは思わぬか?そのためにも、あらかじめ側妃を準備しておいた方がよいと私は思う。私の傍で生きたかった、アリアやレティシアも喜ぶであろう。」


グリニス公爵家は、アリアやレティシアの兄の代になっていて、ティーネは18歳のそれはもう美しい令嬢だそうで…。


あああ…何の為に二人を殺して来たと言うの。

今になって、グリニス公爵家の血が、皇室に入ろうとしている。


アリアやレティシアはどれだけわたくしを苦しめるの…。

いいわ…。絶対にティーネを側妃になんてしない。


わたくしは、ハルディオとサラに相談したわ。


ハルディオは、レティシアを物取りに見せかけて刺殺してくれた、親愛なるわたくしの護衛。

サラは毒入りクッキーを作ってくれた、大事なお友達であり親愛なるメイド。


現皇太子殿下ファルトの本当の両親でもあるの…


ハルディオは、考え込んでいたようでした。

そして、わたくしに。


「殺すにしても…又、物取りではさすがに疑われる。罪に陥れますか?」


サラも頷いて。


「禁止されている麻薬を、グリニス公爵家に仕込みましょう。大量に見つかるように。

麻薬の大量所持は一族郎党、処刑…。グリニス公爵家を滅ぼすことが出来ます。」


「でも、先代の両親は隣国で暮らしているのよね。」


「リンディアナ様。先代は年寄です。もう子孫を残すことも出来ません。いいじゃないですか。グリニス公爵家を滅ぼせれば。

少なくとも公爵夫妻とティーネは、処刑されるでしょう。公開処刑…。とても素敵でしょう。」


サラの言葉にハルディオはニヤリと笑って。


「皇帝夫妻は公開処刑の見物をする義務があるんですよね。時には皇帝自ら罪人の首を落とし、正義を帝国民に訴える。役人に上手く話を回して、皇帝陛下にティーネの首を落とさせましょう。かつて好きだった二人の女性の面影を宿したティーネ。その首を落とす役目をさせる事により、皇帝陛下を苦しめることが出来るでしょう。リンディアナ様の気も少しは晴れるのではありませんか?」


「二人ともとても良い提案をしてくれたわ。ええ…さっそく、手の者に命令して、そのようにして頂戴。グリニス公爵夫妻とティーネの処刑。楽しみだわ。」



事は面白いように、上手く運んだ。

グリニス公爵家の領地にある穀物貯蔵倉庫に、麻薬が保管してあるとのタレコミを流して、

騎士団に強制捜査に入って貰った。

そして、大量の麻薬が発見されたのである。


「何かの間違いだ。麻薬なぞ、私は知らん。」


グリニス公爵は騎士団に連行されながら叫ぶ。


「あああ…わたくし達は、そんな犯罪に手を染めてはいませんっ。」


連行されながら公爵夫人は涙ながらに訴える。


「お父様、お母様…。何かの間違いですっ…離してっ。」


公爵令嬢ティーネは、両脇を騎士に固められ、泣きながら連行されていった。


裁判が行われる。次から次へと上がって来る有罪を立証する証拠。


皇妃であるリンディアナは自ら裁判に立ち合った。



当り前よ。わたくしの手の者の仕事に抜かりはないわ。

間違いなく死刑…そして公開処刑になる。

さぁ…。言い渡しなさい。裁判官。


「グリニス公爵。其方の罪は明白である。罪状、麻薬大量所持により、死刑。以上。」


「ああああああっ…」


グリニス公爵、そして公爵夫人、令嬢ティーネは泣き崩れる。


いい気味だわ。


裁判の結果をフィルネオ様に報告したわ。


「そうか…。麻薬所持の罪は明白か。せっかくファルトの側妃にしようと思っていたのに残念だな。これだけの有名貴族の犯罪だ。公開処刑になるだろう。」


紅茶をフィルネオ様の前でわたくしは飲みながら。


「ええ…久しぶりの公開処刑になりそうですわね。死刑執行責任者に求められれば、フィルネオ様自ら、罪人に刃をふるうのですか?今回も。」


「そうだな。今まで11回程、罪人の首を落とし、正義を帝国民に訴えて来た。今回、求められれば、やるべきであろう。」


「アリア様や、レティシア様の身内の方…辛くはないのですか?」


「皇帝の義務に私情は挟めぬ。」


「お可哀想に…」


涙をわざと流して見せる。わたくしは善女…。フィルネオ様の隣に座って、その手を取り。


「お辛いでしょうね。」


「其方は本当に優しい…。私はこのように優しい妃を持って幸せものだな。」


そう言われるたびにわたくしの心の中に、仄暗い炎が灯る。

真実を知ったらこの人はどう思うのかしら。

わたくしに憎しみをぶつけるのかしら…

ああ…もう人を殺すのに疲れてきたわ。


この公開処刑が終わったら、わたくしは…。




それからしばらくして、3人の公開処刑が行われたわ。


大勢の帝国民が見守る中、最初に処刑されるのが、娘のティーネだった…

そうなるように仕向けたのはわたくし…


皇帝であるフィルネオ様は正義を示すために、自らティーネの後ろに立ち、

帝国民に宣言したわ。


「我が帝国は悪を許さない。この女は我が皇太子の側妃と考えていた女だ。

だが、父であるグリニス公爵は犯罪に手を染めた。

一族郎党、犯罪者は処刑するのが帝国の正義。今、正義の刃をこの私、自ら振るってくれよう。」


可愛そうなティーネは粗末な服を着て、真っ青な顔で、跪いて両手を組みうつ向いている。



フィルネオ様は剣を手に、ティーネに近づいて、そして、

刃を首に一旦充てると、ためらいもなく振りかぶり、一気にその首を跳ね飛ばしたわ。


フィルネオ様が、平然と帝国民に掲げるティーネの首を見て、わたくし思ったの…


ああ…あの首はわたくしの罪…


見物台から、気分が悪いからとわたくしは退席致しましたわ。


そして、馬車に戻って、フィルネオ様の戻りを待ちながら思いましたの。


もう、フィルネオ様を離宮に閉じ込めて、全てを話してしまいましょうか…

二度と、フィルネオ様がわたくし以外の女性を見つめないように…

わたくしだけの物にしてしまいましょう。


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