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婚約破棄をされてしまいましたわ。

たまには悪女を書きたくなったので。

わたくし、リンディアナ・ハーベイ公爵令嬢が、このコーザス帝国のフィルネオ皇太子の婚約者に決められたのは、わたくし10歳、フィルネオ皇太子殿下12歳の時でしたの。

お茶会が開かれ、そこで紹介されたフワフワした金髪の美少年フィルネオ様に、一目見た時からわたくしは恋をしましたのよ。わたくしは黒髪でしたので、金髪のフィルネオ様がとても美しく見えて。

フィルネオ様はとても、優しくしてくれて、エスコートして、庭に咲いている、皇室の庭の色とりどりの花を見せて下さった。

幼いわたくしにとって、繋いだ手の温もりはとても忘れる事なく、素敵な思い出として残りましたの。



そう…わたくしは、フィルネオ様をとても愛しているのですけれども…

フィルネオ様とは、学園に入る前でも月に一度のお茶会における楽しい会話。

数々の花やドレスやアクセサリーのプレゼント、そして、会えない時はお手紙等、

愛が感じられて、とても幸せな時を過ごして参りました。


15歳になって、貴族学園へ入学した後は、毎日のように顔を合わせる事が出来て、

一緒に食堂でお食事をしたり、色々とお話ししたり、

日に日にフィルネオ様への愛が深まるのを感じました。

だから、マナーから始まり、外国語、歴史、ダンス等、年を重ねるごとに厳しくなっていく皇妃教育が辛くて悲しい時もじっと耐えて参りました。


フィルネオ様が、わたくしを励まして下さった事も大いにあるでしょう。

でも、フィルネオ様は毎年、年に一月程、カーナ王国である隣国へ留学している時はとても寂しく、戻って来た時に決まって話題に出る、アリア・グリニス公爵令嬢の話は、

聞くのが辛くて。

だって、彼女の事を褒めるのです。


「グリニス公爵令嬢アリアは本当に素晴らしい。リード王太子の婚約者だが、

成績優秀で、かつ美しい女性だ。話をしていても、話題も豊富で引き込まれる。

もっと話していたいと思える程だ。」


「まぁ、それは良かったですわね。素敵なお友達が出来て。」


「リンディアナもそう思うだろう。そういう女性に出会えて、私は幸せものだ。」


チリチリと胸が妬けるように、痛くて苦しい。

わたくしという者がいるのに、どうして他の女性の話をするの?

それも嬉しそうに。

きっとフィルネオ様はわたくしの事を何でも許してくれる優しい女性だと思っているのですわ。

だってよく、


「リンディアナは本当に優しい女性だ。私は其方なら何でも話せる。広い心で見てくれるから。私は其方を婚約者に出来て嬉しく思う。」


わたくしが、何でもフィルネオ様の言う事を聞いて、誠実なる女性になろうと努力してきたから、将来の皇妃としてふさわしくあらねばと努力してきたら、そう思われているのは解りますけれども。


護衛のハルディスと、メイドのサラに、愚痴をこぼすと、二人とも真剣に聞いてくれる。

ハルディスが怒ってくれて。

「皇太子殿下も酷いですね。お嬢様がいるというのに、どういうつもりなんでしょうか。」

サラも同意してくれて。

「女心を解っていないトンチキなんですよ。お嬢様。愚痴なら私達にどんどん零していいですから。」


「ああ、有難う。わたくしの心を解ってくれて、嬉しいわ。」


この二人はどんな時でもわたくしの味方。

わたくしが嬉しい時は共に喜んでくれて、わたくしが悲しい時は共に悲しんでくれる。

ハルディスは年上の護衛の男性だけれども、わたくしにとって良き友人。

サラはメイドで、わたくしより一つ下の歳だけれども、よく働いてくれて、愚痴も聞いてくれる大事な友人。


ああ、フィルネオ様は、それでも、わたくしにとっては最愛の人で。

大事にしてもらっているのだから、卒業したら即、結婚出来るとわたくしは信じていた。


だけども、卒業して、わたくしに待っていたものは、皇帝陛下を通じての婚約破棄の申し出であったの…。


卒業パーティで、隣国の王太子が、男爵令嬢との真実の恋に落ちたとかで、アリア・グリニス公爵令嬢を断罪し、婚約破棄を申し入れたとか。でも、罪を犯していたのは男爵令嬢の方で、アリア様は罪に問われる事も無く、何故かフィルネオ様が今度はその場で、アリア様に、結婚を申し込んで、承諾されたのだと…


わたくしの事は?わたくしという婚約者がいるのに…とても悲しかった。


皇帝陛下から、アリア様こそ、フィルネオ様にとって、真実の相手だったと言われてしまって。

アリア様は皇妃教育も、向こうで王妃教育を受けてきているものだから、

こちらの国との違いを修正するだけで、皇妃としても、ふさわしい女性なのだとか…


一人娘の婚約破棄に、父も母もとても悲しんでくれたわ。

だって、父も母もわたくしが皇妃になる事を望んでいたから。


莫大な慰謝料は貰える事にはなったけれども、悲しくて悲しくて。

わたくしにとって、フィルネオ様が全てだった。

最近、美しさの中に男らしさがにじみ出てきて、さりげなくエスコートするエレガントさもとても素敵で。

声も、ちょっと低くて、その声を聞いているだけでも幸せで。

フィルネオ様はとても博識でいらっしゃるから、お話を聞くだけでも、とても勉強になって…

そのフィルネオ様がわたくしを捨ててアリア様の物になるなんて…

許せない…


ベットで泣いていたら、メイドのサラが心配して、


「お嬢様…そんなに泣いてばかりいたら、身体に良くありません。どうかお食事をなさってください。」


護衛のハルディスは、扉の外で、待機していて。


「お嬢様。中に入ってよろしいですか?」


「ええ…サラとハルディスが慰めてくれたら嬉しいわ。」



サラが用意してくれた軽食をベットの上でやっと口にする。


ああ…何だか何を食べても味気ない。



サラが一言。


「お嬢様。アリア様を殺しましょう。私、毒薬の心得があります。

彼女は近いうちにこの国へ来るでしょう。彼女さえいなければ、皇妃教育を受けて来たアリア様が皇妃になるしかありません。アリア様を殺しましょう。」


ハルディスも同意して。


「このままで良いのですか?お嬢様の今までの苦労は何だったのですか?

俺達も力になりますから。」


「有難う。貴方達。でも、毒を食べさせるのはわたくしがやるわ。

見つかった時に、罪に問われるのはわたくし一人で…貴方達まで巻き込みたくはない。」


サラがわたくしの手を握り締めて。


「そんな冷たい。お嬢様のお陰で私はこうして生きていられるのです。

お嬢様が拾って下さらなかったら。私はお嬢様の為なら命をかけます。」


ハルディスも跪いて。


「俺も同じです。お嬢様が雇ってくれなかったら、生きてはいなかったでしょう。

どうかお嬢様、何でもいいつけて下さい。命をかけますから。」


「二人とも…わたくしの為に。ありがとう。でも、これはわたくしがやらねばならない事なの…。アリアを殺して、必ずわたくしは皇妃になるわ。」


アリア。待ってらっしゃい。貴方をわたくしが殺して差し上げるわ。

愛しいフィルネオ様は渡さない。


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