魔窟到着
「「「「「「「「「「アッーーーーー!」」」」」」」」」」
谷川の魔窟周辺に屯していた魔物もテイムし終わり周辺がクリアになった。これで商人や旅人も余り魔物には出会わないだろう。
テイムした魔物も千頭近くになり、若もタロウもケンタもレベルが上がり、一階層程度の魔物なら問題なく退治できそうだ。
「さて、これが魔窟の入り口ですな。警備もおりますし誰も入っておらんな?」
門番にも聞こえるように言ってみるが返答がない。
「誰も入っておらんのだよなあ?」
「知らん」
出てくる魔物が怖くて逃げていたのか、賄賂でも貰って侵入を許していたかのどちらだ。
「いくらもらったかは聞かん、何人通した?」
へんじがない、ただのしかばねのようだ。
「行け、オーク、子供を産ませてやれ」
「ブヒー」
「ろ、六人だっ」
オークをけしかけると即座に回答が得られた。自己責任とは言え、冒険者を殺すには忍びない。これでは火責めも水攻めもできん。
「という訳で中に入った者達を引っ張り出しに行ってくる、少し待たれい。若様もタロウもケンタも待機、門番、今度こそ誰も入れるな」
俺は目をビカビカビカーと光らせて一階層を走り回り、神に遭うては神を斬り、仏に遭うては仏を斬り、魔物は出会って二秒で即テイムした。
「アッーーーーー!」
「人の冒険者はおらんか? 今からこの魔窟を破壊する、出て来んとお主らも死ぬぞっ」
一階層の奥で、出入りすれば何度でも幽霊系の魔物が出る場所でレベル上げしている冒険者を捕まえた。
「拙者はタケルと申す聖男だ、これからこの魔窟を破壊する。外に出ぬなら一緒に焼き尽くすか水攻めじゃ」
「何抜かしてんだ? 頭おかしい……」
「カゲヌイー!」
問答できる脳がない奴らで、非友好的な盗賊六人が刀をこちらに向けたので、影縫いして腹パン入れて黙らせ、悶絶している所に迷わず魔法をブチ込んで会って五秒で即テイム。
「アッーーーー!」
六人ともケツベントリに放り込んで、目をビカビカビカーと光らせながら走って外に出た。
「捕まえてきた」
出口付近で放牧し、持っていた武装と防具などはケツベントリに残す。
「それではまず燻し出して息が吸えないようにして、よろよろと魔物が這い出してくれば、槍衾を閉めて退治と言う手筈でどうかな?」
武士団を出入り口付近で並ばせ、出て来れた奴は始末させる。
「結構です」
団長や副団長は認識してくれなかったが、先ほどの治癒魔法でデレた一番隊隊長が同意してくれたので、手始めに内部の酸素濃度を下げてみる。
「脱酸素魔法」
再び目をビカビカビカーと光らせ、両手からカメ*メ波でも出す要領で、初代ゴ*ラを倒した系統の魔法を馳走してやる。
以前、空海が中国で修業中の頃の映画ができたと宣伝され、予告ではCG満載の香港映画だったので、てっきり寺生まれのTさんみたいなのが手からビーム発射しまくりの、ワイヤーアクションでジャンプしまくり、爆発シーン満載な映画かと思えば、過去の恋愛要素や兄弟愛だとか忠誠を描いた推理映画だったでござるの巻、という経験があった。
ここではできるだけ何も考えず手からビーム発射して、ワイヤーアクションなしでジャンプしまくり爆発しまくりな状況を提供したい。
少林寺の映画みたいに一作目では僧正も焼き殺され、師匠も死んでいたはずが、次回作では全員復活しているような、不整合の塊みたいな車田作品を目指したい。
暫くすると敵の反応がマップから消えて行き、半死半生の魔物が数匹、出入り口から這い出して来て武士団に始末された。
「そろそろ宜しいですかな? これで五階層辺りまでの魔物は息の根が止まって死んでおるはずじゃ」
「五階層まで?」
護衛の僧侶も驚いているが、もう少しレベルを上げて彼にも手からビーム発射しまくって貰おうと思う。
「団長殿、武士団の連中は金がないんでしたかな?」
「左様です、支給品の刀や銃まで質入れする有様で、拙者が買い戻す事態になり申した」
軽く聞いていたように給料も少なく、やはりオスカル様みたいに従士の不始末の尻拭いまでしていたようだ。
「武士団の連中、今この中は魔物の死骸で一杯だっ! 金が欲しい奴は……」
そこまで聞いた頭が悪い連中は、討伐の印やドロップした武器を取りに一目散に魔窟に駆け込んで行き、一息呼吸しただけで酸欠に陥って倒れた。
「どうして……?」
悲惨な現場猫行為を見せられ、受話器を持ったままつぶやく俺。
「換気魔法」
手からビームなど出しながら、魔窟内を風魔法で換気をする。
汚水層や下水道に入る前はダクトファンで換気をしてからでなければ、内部のガスを吸って窒息、即座に倒れて救助に入ろうと続いた者まで窒息するので、現場猫行為をしないよう注意が必要だ。
「現場ヨシッ!」
ヘルメットをかぶって独特の例のポーズで指差呼称、今日もご安全に。
「魔窟内で集めた魔石や武具は武士団全体の収益とするっ! 慌てて飛び込んで死なない魔物と出くわして命を落とすような真似はするなっ」
現場監督(武士団長)からの訓示で朝礼があり、集めた魔石や討伐実績の収益は頭数で割って案分すると伝えられた。
それでも懐に入るだけ隠し持って、武器や防具でも高いものを見つけ次第自分の物にするだろう。
「お前たち、装備する前に呪われていないか鑑定するからな、勝手に装備して呪われても知らんぞ」
回呪魔法はあるが馬鹿に付ける薬はない。隊長連中が注意しても多分大半の者が呪われて仲間に斬りかかったり、歩くたびに生命力を吸われて死ぬことだろう。
「武士団出立っ!」
一番隊から魔窟に入り、松明を持った死番が若い者から入室する。
「室内ヨシッ!」
死番が早いだけあって既に極限状態。頭の天辺から素っ頓狂な声を上げてから魔物の死骸や魔石を漁り始める下級兵士。
もし松明が消え始めたり、火縄の種火が消えるような場所なら酸素がないので窒息。
生きていたスケルトンやゾンビが出れば一番に食われ、噛まれれば死人から歩く死体になる前に仲間に斬り殺される。
「魔物ヨシッ!」
人数にものを言わせ、部屋を開けて魔石やドロップアイテムを集めて回る。
一階層を回って部屋の探索を済ませるうちに慣れが出て兵士たちも油断した。
「きええええええっ!」
呪われた刀を持ってしまったようで、狂って仲間に斬りかかり、槍に囲まれ火縄銃を向けられる兵士。
「すまんな、安らかに死ね」
呪いを解く魔法を全員が知らないのか、寺院に連れて行くような余裕はないのか、呪われて狂った時点で刺殺射殺が決められている武士団。命が安い。
「ぐあああっ」
槍で刺され、火縄銃が火を噴いて倒れ込む兵士。
農民出身で畑や家族を捨てて入団したのか、浪人で士官先を求めていたのか、経歴はいくらでも嘘を付けるらしく、正しい出身先を知るものはいない。
「次は某の番だ」
別の団員が近寄り、呪われた刀を蹴り捨て、他の装備や巾着を取って行き、ほぼ裸で捨てられる哀れな男。
「待たれい、まだ間に合う」
着物や簡単な防具を外される前に割り込み、聖男としての務めを果たす。
「復活之呪文」
「「「「「おおっ」」」」」
「回復」
「アッーーーーーー!」
刺し傷や銃創が消えて、元のヒットポイント20ぐらいで復活した兵士。
他の魔物に出会えば、一撃で死ねる耐久力だ。
「せ、拙者は?」
メスの顔をして顔を赤らめ、抱き起している俺を見て「ドッキーン」とか「カアアッ(///)」という擬音を発している兵士。
残念ながらこいつもテイムしてしまったようだ。
「呪われた刀を持ってしまい、皆に斬りかかって始末された所、聖男殿の魔法で蘇らせて貰ったのじゃ」
隊長から説明を受け、呪われてから記憶が無かった男は自分が何をしでかしたか、その後士道不覚悟により討ち取られたのだと悟った。
「左様ですか、忝い」
給金や戦利品を売った金は、故郷や実家に送っていそうな男は、今後俺に金を貢いできそうな勢いでトロトロになった。
「気にするな、今後全員何かあれば蘇らせてやる。呪われても救う方法もあるから斬らなくて良いぞ」
ゲーム内では呪われた刀も実用性?があるらしく、安い奈良刀よりも買取が高かった。
この世界でも多分同じなのでケツベントリに回収しておいた。
「魔物出現っ!」
「泥の魔物っ、二体っ!」
他の部屋でもマッドゴーレムが出たようで、次々に討ち取られて倒れ行く兵士。
この世界でもゴーレムはEMETHの頭文字を削るとMETH(死)になって崩れ落ちるはずだ。
「皆下がれっ」
武士団の兵士に割り込み、実力行使で腹パン入れて倒すか、Eの文字を消そうとして異常に気付いた。
このゴーレムにはカタカナで「エメス」と書かれていた、国内仕様だ。
そこで俺は、もうオチがバレてしまった内容を実行すべく、「エ」の一文字を消した。
「アッーーーーーー!」
ゴーレムはメスの顔?をしてテイムされ、仲間になりたそうな顔?をしていたので今後同行することになった。
「お主たち、被害が酷いな。治療を済ませたらこれからは泥人形やオークを先行させる」
「「「「「アッーーーーー!」」」」」
鎖骨や肋骨を折られていた武士団の下級兵士も数人治療するとテイムしてしまい、マッドゴーレムと同じメスの顔で仲間になった。
以後はオークやゴーレムを先行させると、スケルトンやゾンビなど物ともせず侵攻できるようになった。
地獄熊も単体では強い方らしく、魔法攻撃が必要なゴーストやレイスも撃破して、二階層、三階層も楽々制覇していった。
「凄ぇ、こんな宝物見たことがねえ」
魔物が装備していたりドロップした武器や防具には、魔法でエンチャントされた品があり、拾い集めた団員も驚いていた。
俺が鑑定してみて、良い品物は団長や副団長、隊長連中にも配って行った。
「何と、この直剣には魔法が?」
団長にミスリルソード+2を渡すと、余りの切れ味と軽さに驚いていた。聖銀など無かった世界に現れた地獄の産物。
「宜しゅうござったな、武士団の武装も大分強化された」
「これは聖男殿がお持ちになられた方が良いのでは?」
笑顔のままの副団長もミスリルスピア+2を持ってご満悦。
「いやいや、拙者は何か装備すると装甲が落ちるのでな、何も身に付けないかニンジャ専用の装備でも探すしかない」
迷宮の底まで行くと、直刀のニンジャソードだとかシュリケンは見付かるかもしれない。
武装烈火してサムライト〇ーパーできる鎧は無くとも、ミスリルチェーンメイルとかニンジャでも装備できるものが出るかもしれない。
サムライ達の最高の装備は全身鎧の具足だけではなく、ドラゴンウォリア-と合体して、天使とか悪魔とか神罰執行形態の使徒と戦える装備があるはずだ。
若にケンタ、タロウやセバスチャンでも装備できる品を見つけ、武器だけでなく防具も装備させてやる。
「生涯大切にします」
相変わらず重いケンタにも防具を付けてやり、ショートソードかグラディウスのようなミスリル製の武器も渡す。
タロウにもグルカナイフかククリのような逆方向に曲がっている大型ナイフを、セバスチャンは職業は武士ではなく、せいぜい皮鎧かチェーンメイルまでしか装備できなかったが、若は武士だったようでかなりの具足を装備できた。
もっと下層階ならとか強化外骨格とか充実具足が出るかもしれない。
「これが聖銀ですか?」
若には重すぎる直刀は合わないので、中東の曲刀シミターに似た何かを渡した。
四階層に入る前、どうにかして装備を充実させられた。