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第四話 冒険者ギルド



 街に着いた。

 高い壁に囲まれている。

 魔物に襲われないためだ。


 だが門の周りが慌しかった。


「何かあったのか?」

「おお、よく無事だったな! 今、君が来た方角で漆黒竜が目撃されたんだ!」

「そうなのか」


 門番が答えてくれた。

 

 なるほど。漆黒竜は本来、災害級の化け物だ。

 しかも性格最悪の。

 戦闘力の低い人なら恐怖しかないだろう。


「……すまないな。俺は知らなかったよ」

「いや、君が無事でよかったよ!」


 少し悩んで、俺が倒したということは話さない事にした。

 別に話してもいいんだが、あまり目立ちたくないからな。

 帝国に情報が伝わる前に復讐の準備をしないと。


「それじゃあ、通行料として300ギルと身分証を見せてもらえないか?」


 まずいな、俺は身分証は持っていない。

 聖騎士団の紋章を見せれば通してくれるだろうが、それは面倒だ。


「あー、と。俺は身分証を持ってないんだ」

「そうなのか? それなら、冒険者ギルドに行って、冒険者登録してくるといい。ギルドカードは身分証がわりになるからね」

「そうなのか。ありがとう」

「ああ。それと身分証がないのなら、通行料が1000ギルに上がってしまうんだ」

「いや、大丈夫だ」

「冒険者ギルドは門を通って、真っ直ぐ行くと着くからなー!」


 俺は1000ギルを支払って、街に入った。

 門番は親切にも冒険者ギルドの場所を教えてくれた。

 ありがたい。


 この際だ。

 身分証のついでに、しばらくは冒険者として生活していこう。

 冒険者なら、様々な情報が手に入る。

 依頼次第なら、帝国に侵入することもできる。

 何より、強さがあるなら金を稼げる。

 それが冒険者だ。








 しばらく歩くと冒険者ギルドに辿り着いた。

 古い木造の建物だ。だが、かなりデカイ。

 後ろにも広い庭があるみたいだし、きっと訓練場として使っているんだろう。


 俺はギィと鳴るドアを開いた。

 冒険者ギルドは酒の匂いで充満していた。

 ここにいるだけで酔いそうだ。


 冒険者達は酒を飲み、自分の武勇伝を語る。

 酒を飲みながら今後のクエストについて考えたり、今日の疲れを癒し、そして明日への英気を養う。クエストに行く前に飲んでいく冒険者だっている。


 冒険者ってやつは、酒が大好きなんだ。


 とりあえず、受付っぽい場所に来た。


「こんにちは。冒険者ギルドへようこそ。本日はどのようなご用件ですか?」


 対応してくれたのは、オレンジ髪の受付嬢だった。


「ええと、冒険者になりたいんだが」

「そうなんですね。身分証はありますか?」

「いや、無い。身分証としても発行してもらいたいんだ」

「かしこまりました。では、こちらの用紙にご記入下さい」


 そう言って、受付嬢が一枚の紙を取り出した。

 冒険者カードの発行手続きに必要な書類のようだ。

 適当に書いていく。


「これでいいか?」

「はい。……オルガンさんですね。職業は、暗黒騎士!? 凄く珍しい職業なんですね!」

「ははっ。まあ、偶々ですよ」

「ほえー。私、これで三年目ですけど、暗黒騎士なんて初めて見ましたよ」


 受付嬢は驚いているみたいだ。

 まあ、暗黒騎士は聖騎士ほどメジャーじゃない。

 知らない人も多いだろう。


 あっ!と何かを思い出したようで、受付嬢が手を叩いた。


「私、これからオルガン様の担当をさせてもらいます、アンナと言います。末永くよろしくお願いしますね」


 受付嬢、アンナは笑顔でそう言った。

 人の良さそうな子だ。


「ああ、よろしく」


 だが、信頼はしない。信用もしない。

 いつか裏切られて悲しむくらいなら、最初からしなければいい。

 

「それではこちらが冒険者カードになります。再発行にはお金がかかるので、無くさないように気をつけてくださいね」


 そう言って、ギルドカードを手渡された。

 そこには必要な情報のみが載っていた。

 名前、種族、性別、年齢、出身地、職業といった感じだ。いつの間に撮ったのか、俺の写真もある。


 そして、まだ空白の欄があった。

 そこにはこれから、俺が受けたクエストの内容や結果が記録されていく。


 …………と、帝国の冒険者が言っていた。


「今後の活動についてはどうしますか?」

「そうだな。俺は戦闘系が得意だから、できれば討伐系を主軸にやっていきたい」

「なるほど、わかりました。討伐系なら、パーティを組む事をおすすめしますよ」


 パーティ。

 冒険者のチームの事だ。

 人数は二人から最大で五十人規模まで組むことができる。

 と言っても、普通は四人までが基本的だ。


「えっと、パーティは組みたく無いんだ。すまない」


 チーム。

 そう言われて、聖騎士団の仲間を思い出した。

 奴らは俺を裏切った。

 冒険者達も俺を裏切るに決まっている。

 絶対に、そうだ。


「このギルドでは余程の理由がない限り、パーティを組む事を推奨してるんですよ」

「そうか……」

「申し訳ありません。よろしければ、あちらでパーティ勧誘のためのボードがありますので、ご覧になってみてください。気になるパーティもいるかもーーーー」

「パーティは組まないと言っているだろうッ!!」


 「きゃあ!」とアンナは悲鳴を上げた。


 瞬間、気がつくと俺は怒鳴っていた。


 さっきまで騒いでいた冒険者達も、俺の怒声が聞こえたのかしーんっと静まった。


「…………すまない。女性に怒鳴るなんて」


 アンナはカウンターの向こう側で尻餅をついていた。

 何か言おうとしているが、言葉にならないほど震えている。


 当然だ。

 身長190センチを超える大男に怒鳴られて、怖くないはずがない。


「また……来るよ。少し、頭を冷やしてくる」

「わかり、ました……」


 俺は一人、ギルドの外に出た。


ここまで読んでいただきありがとうございます。


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