第三十一話
オルガンとララティーナは感動の再会を果たした。
「久しぶりだな。ララ」
「こんなところでなにやってたのよ。兄さん」
「まあ、見ての通りだ」
「分かるわけないでしょ。さっさと説明して」
「はいはい」
口では毒舌を飛ばすララティーナも、心の中では兄弟の会話を楽しんでいた。
こうしてララティーナが毒舌を飛ばすのは、二人の兄弟仲が悪い訳ではない。
むしろ仲良し兄弟だ。
これはいわばララティーナの照れ隠しで、少し厳しめの口調で喋らないと大好きな兄の前で頬が緩んでしまうのだ。
「にしても、かなり成長したな」
そう言って、オルガンは周囲を見渡す。
そこは正しく地獄絵図と化していた。
亜種達をメラメラと燃やす黒い業火。高過ぎる火力が硬い鱗を溶かし、大地を焼いた。
そんな業火をも飲み込む氷河が業火を包み込んでいた。
しかし、業火は止まらない。氷漬けにされた今も氷の中で燃え続けている。
これらの魔法はオルガンが昔見た時よりも遥かに洗練されていた。
紛れも無く、ララティーナの努力の証だった。
「成長したな、ララ」
「…………うん」
オルガンが褒めるとララティーナが頬を真っ赤に染めて素直に頷いた。
さて、兄弟が二人の空間を作っていると堪らず、ソフィアが疑問を口にした。
「オルガン様と同じ匂い?」
首を可愛らしく傾げて、呟いた。
そう言えば、とオルガンはソフィアに妹の事を話していなかった事を思い出した。
少し照れ臭いが、ソフィアに紹介しよう。
「あー、妹のララティーナだ。ララ、こっちは嫁のソフィアだ」
お互いに初対面なので、二人にわかる様に紹介した。
「へー、兄さんのお嫁さん。ソフィアさんって言うのね。初めまして、私はーーーーーーーーっ、は、ええっ!!?」
遅えよ。
「よ、よよよ、嫁ぇええええ!!!?」
その日、一番の大声が森に響いた。
それから、俺達はリンドバルドの街に戻るために森を進んでいた。
ララティーナは魔法で箒を浮かせて、その上に乗って飛んでいる。
「兄さんがお嫁さん、ねぇ……」
未だに衝撃は抜け切っていないらしく、
「私も驚きました。オルガン様のご家族がいたなんて」
「あら、兄さんは話してなかったの?」
「えっと、オルガン様があまりララティーナ様の話をされなかったので、てっきり……」
そういえばそうだったか。
まあ、正直帝国から逃げて来た時点でララとは二度と会えないと覚悟していたから、話す機会も無かった。
完全に俺の落ち度だ。
「その首輪って」
「はい。私はオルガン様の奴隷です」
「それに……目が見えないのね」
「その通りです」
ララティーナは先程から、見定める様にソフィアをじろじろと見たり、時には質問をしていた。
彼女はいつもオルガンに近付く人間に対して、異常なほどの警戒心を見せていた。
まあ、今回は実害もなさそうなので放っておくとしよう。
オルガンは先頭になって歩いた。
そのすぐ後ろではララティーナとソフィアが今も会話を繰り広げていた。
「貴方、どうして奴隷に?」
「色々と事情があって」
「そうなのね。なら、深くは聞かないわ。兄さんにはどうやって出会ったの?」
「私をオルガン様が買ってくれました」
「へえ、兄さんが……」
「それから、私に凄く優しくして頂けました。この装備だって、出会って間もなかった私にプレゼントしてくれたんですよ?」
「相変わらずのお人好しね、兄さん」
「それからも、奴隷のはずの私に優しくしてくれて、強い魔王にも立ち向かって、万の軍勢を前にしても一歩も引かずに戦って」
ソフィアは両手を組んで、大切な思い出をララティーナに自慢するかの様に語った。
「……はあ、だからこそオルガン様を追放した帝国に腹が立ちます」
「へえ、分かってるじゃない」
「はい。こんなに優秀なオルガン様を裏切るだなんて、帝国は馬鹿なんですか?」
「そう、その通り!」
「と言うよりもオルガン様に深い苦しみを与えたとか言う帝国は許せません。即滅却したいです」
「ええ、私もよ。何度、帝国を火の海に変えてやろうかと思ったことか……」
「なるほど。その場合は私の付与で威力を倍増させ、さらに浄化の力で怨念者が湧かない様に始末しましょう」
「完璧ね」
「ですが、まだ足りません。特に王族の方達には……」
「死ぬことすら生温い責め苦を与える」
「はい」
「一番良いのは指の爪からゆっくりと剥いで行く事ね」
…………あのさ、さっきから後ろで怖い会話をしないで欲しいんだが。
何、君達は何で帝国を火の海に変えようとしてるの?
やけに現実的なのが怖すぎる。
つうか、この二人なら本気で出来そうなのが怖い。
正直、帝国の警備レベルはザルだった。
何度オルガンが警備体制を改めた方がいいと言っても聞きやしなかった。
お陰で抜けて来た暗殺者を俺が撃退していたんだが、その俺もういない。
それこそ、ララティーナに勝てる人間なんてこの世にはいないと言っても過言では無い。
あれ、これって本気でこの二人を止めた方がいいやつか?
なんて考えているといつの間にかリンドバルドの街に到着した。
「ただいま」
もうほとんど俺はフリーパスの様なものだった。
顔を見せるだけで通してくれる。
そのまま、街に入った。
「おお! オルガン、おかえり!」
「その怪我はどうしたんだ?」
「早く傷を見てもらったほうがいいぞ」
「ソフィアちゃんもな」
「君達に何かあったら大変だ」
一気に人に囲まれてしまった。
最近は気を遣ってあまり囲まれたりはしなかったが、今日は俺達が怪我や汚れだらけなのを見て心配して駆け寄ってくれたんだ。
本当に良い住民たちだよ。
「…………」
そして、遠目から人に囲まれるオルガンを見て、ララティーナは嬉しそうに微笑んだ。
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