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第三十話 再会

 深い森の中でオルガンは聖剣(エクスカリバー)を握りながら、駆け回っていた。


「聖魔一刀流 天地閃(てんちのひらめき)!」


 光り輝く一太刀でオーガ亜種を真っ二つに切り裂いた。


 俺もこの三か月の間で強くなっていた。


 今までは聖剣しか使えなかったから、聖剣一刀流だったが魔剣も使えるようになり、新たに聖魔一刀流を生み出した。

 

 ただ今はそんな事とは関係なしにピンチだった。


「どうしてこんなに亜種が……っ!」


 後ろで回復光(ヒール・ライト)を唱えている、ソフィアが言った。


 亜種。通常種とは異なった産まれ方をした生物だ。

 そして魔物の亜種は気性が荒くなり、さらに凶悪な能力をも手にしている。


 俺とソフィアはその亜種の大群に囲まれていた。


「オルガン様、右方からゴブリンの群れが!」

「当然、亜種か……!」


 俺は聖剣(エクスカリバー)を一旦、異空間に戻した。

 そして聖短剣(ソルディア)を取り出す。


「聖魔一刀流 千羽鴉(せんばがらす)!」


 ゴブリン亜種の群れに向けて、聖短剣を()()()()


 すると聖短剣が空中で増殖し、ゴブリンの群れに飛んでいく。

 それを何回も繰り返す事で無数の聖短剣がゴブリン亜種の身体を突き貫き、全ての命を奪った。


「周りの匂いは、消えました……」


 これで一旦、周囲の亜種はあらかた片付けた様だ。

 ソフィアの鼻の索敵だから、間違いないだろう。


 オルガンもソフィアもその場で腰を下ろして、少しばかりの休憩を取った。


「ソフィア、怪我は大丈夫か?」

「はい。オルガン様が護ってくださったので。それよりも、オルガン様の傷を……」

「ああ、すまないな」


 オルガンはソフィアをオーク亜種から庇った時に太腿を牙で貫かれて重傷を負っていた。


 かなり傷が深かったらしく、その場ですぐには治せなくて回復光(ヒールライト)で騙し騙し戦っていた。


 今、ソフィアは必死に治癒に専念してくれていた。




 ここに来るまでに百を超える亜種を葬ってきたが、何度倒してもきりがないほどこの森は亜種で溢れていた。


 途中で冒険者とみられる、見るも無残な死体で発見した。

 俺達と同じように亜種の群れに襲われたのだろう。


 問題なのは亜種は普通、年間でも数体しか発見されないのだ。


 それが百を超える亜種、おそらくは三百を超えるであろう亜種がこの森を闊歩している。


 三か月前の魔物の群れの方がどんなに楽だったかと思うほどだ。


 そんな亜種の群れがもしも、リンドバルドにやって来たとしたら……。


 考えただけでゾッとする。


 今回は本当にヤバい。早く逃げなければ街が滅んでしまう。






「オルガン様、治療が終わりました」

「……ん、ありがとう」


 一度、立ち上がって脚を動かしても違和感は全く無かった。

 設備も整っていない場所でこれだけの治療を行うなんて“聖女”の名も伊達じゃないって事だ。


「これからどうしますか? 一旦、街に戻って報告を……」

「いや、それじゃだめだ。亜種の群れはすぐに街を襲ってしまう」

「つまり――――」

「ああ。ここで亜種の群れを殲滅するぞ」


 ソフィアの布で覆われた目を見てそう言った。


「……分かりました」

「ごめんな、俺の我儘に付き合わせて」

「ふふ。いいんですよ。旦那様の我儘に付き合うのも、妻の役目ですから」


 本当に、最高の女だよ。


「今夜は眠れないな」

「寝たら怒っちゃいますよ」


 軽口を叩きながら、キスをした。


 その瞬間に周囲から大量の亜種が襲って来た。


「聖魔一刀流 覇純!」

「聖杖術 無天!」


 俺は魔戦槌(シャルーアを。ソフィアは聖杖(ラディウス)を振るって、亜種の群れを粉砕した。


 それでもまだ、亜種の群れは途絶えない。


「グルァア!」

「聖魔一刀流 粉砕!」


 拳を振り上げて襲い掛かって来た、サイクロプス亜種を目玉からぶっ潰してやった。


 ただ、やはり数が多い上に個の力が高い。


 ソフィアを護りながらだと死にそうになる。


 ならば……。


「“白薔薇の姫”!」

「っ!」


 俺の白薔薇の騎士団の上位互換の技だ。


 自分が愛すると誓った異性にのみ使える。

 その効果は絶大で、白薔薇の騎士団の三倍のバフが対象者に与えられる。


 その力を瞬時に感じ取ったソフィアが聖杖の先端に光を込めた。


「聖なる光よ! 敵を穿て! 閃光線(ホーリー・レイ)!」


 眩い光が放たれて、一直線上にいた亜種がまとめて一掃された。


 本来、ソフィアは攻撃は苦手だ。


 そんなソフィアでも、ここまでの威力の攻撃をできたという事がこの“白薔薇の姫”の凄さを物語っている。


 だが……。


「あ、れ……?」

「ソフィア!」


 普段使わない魔法を使ったせいで、ソフィアは魔力切れを起こしてしまった。


 身体から力が抜けて、倒れてしまう。


 ソフィアの元に駆け寄って、抱き寄せる。


「ソフィア……」

「オルガン様……、申し訳、ありません……」

「いいんだよ」

「愛しています。オルガン様―――――」

「ああ、俺もだよ―――――」


 そして、オルガンとソフィアは亜種の群れに呑まれて―――――。




「我が灼熱よ、燃え上がれ」




 まるで唄の様な詠唱がその場に響いた。

 芯が通っているのに、美しくて、とても強い声だった。


 その唄が聞こえた瞬間、俺は聖王盾(スヴェル)を取り出す。

 聖王盾は全ての魔力を代償にして、短い時間だが絶対防御の障壁を張る事が出来る。


 オルガンは迷うことなく、ソフィアを強く抱きしめて障壁を張った。





「炎熱によって苦しめ。爆炎により絶望しろ。噴煙に呑まれて、万物を焼き尽くすが良い! 大地噴火(ディ・アース・ボルケーノ)!」





 次の瞬間、森は地獄へと変わった。

 

 亜種の群れを巻き込んで、周囲を灼熱の海に変えて火山の内部の様になった。


 大地の岩がドロドロに溶けた溶岩が広がっていた。


「こんな大魔法、どうやって……」


 オルガンの腕の中で静かにソフィアが戦慄していた。


 ただオルガンはその正体を知っていたので


「おい! 冷やしてくれないと出れないんだが!」

「…………永久凍土(コキュートス)


 瞬時に冷気が溶岩を包み込み、凍り付いた。


 かなり寒いが、溶岩よりはマシか。


 オルガンは障壁を解いて、ゆっくりと降り立つ彼女の前に立って、再会を果たす。


「久しぶりだな。ララ」

「こんなところでなにやってたのよ。兄さん」


 俺の妹、ララティーナことララだった。


ララティーナアアアアアアアアアアア!!!


ここまで読んでいただきありがとうございます。ブックマークや高評価、感想など作者のモチベーションアップに繋がりますので是非よろしくお願いします。

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