第三話 暗黒騎士オルガン
目が覚めると俺はどこかの森の中に立っていた。
「フランガッハは発動したみたいだな」
俺はボロボロになり、輝きを失った鎧を見てそう言う。
聖鎧フランガッハ。
能力は“蘇生”。
どんな傷を負おうとも、一度だけ生き返ることができる。
発動条件は所有者が死ぬ事。
正直、半信半疑だった。
けど、本当に生き返った。
「それにしてもここはどこだ?」
俺はその場所に見覚えがなかった。
帝国なら大体は見覚えがある。
「なら、ここは王国かもしれないな」
聖鎧フランガッハは元々、王国で作られたものだ。
製作者が帝国民ではなく、王国民に使わせる気だったのなら、生き返り場所が王国に設定されていても、説明がつく。
「ふむ。なら、近くに街があるはずだ」
力を貯めて、一気に跳ぶ。
雲の近くまで飛ぶと、遠くの方に街が見えた。
南に約二十キロメートルってところか。
「よっ、と」
よし。とりあえず行き先は決まった。
その時だ。俺の辺りを覆うほどの巨大な影が出来た。
「あ?」
『クハハハハ! 我ハ漆黒竜ブラック! コレヨリアノ街ヲ火ノ海デ包ンデヤロウ!』
空を見上げると、そこには漆黒の巨大な竜がいた。
ドラゴンは元々、知能が高いから喋れるんだろう。
さて、こいつ今、あの街を襲うと言ったのか。
まずいな。俺はあそこ以外の街を知らない。
壊されては困る。
「おい、お前」
『ム? ナンダ、虫ケラカ』
いらっ。
「おい、トカゲ」
『トカゲ? ソレハマサカ我ノコトカ?』
「お前以外誰がいるんだよ。俺はこれから、その街に用があるんだ。失せろ。今から見逃してやる」
『断ル! ヤメル必要ガナイ!』
「なら仕方ないな。王国の皆さんには、お前の首を手土産にしようか」
『ヤッテミロ。虫ケラ!』
すぅぅううううううう!!
漆黒竜がブレスを溜める。
全力の一撃だろう。
ならば俺も全力で叩き切ってやろう。
エクスカリバーを召喚しよう。
「来い《魔槍グングニル》」
あれ?
口が勝手に動いてーーーー。
「貫け! グングニル!!!」
ドゴオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!
凄まじい音を鳴らしながら、凄まじい勢いで飛んでいく《魔槍グングニル》。
禍々しい形状の槍は血のように紅かった。まさしく、魔槍。
『消エ失セロォォオオオオオオ!!!』
漆黒竜も全力のブレスを放った。
あれ一つで街の一つや二つ、破壊できるだろう。
だが不思議と俺は《魔槍グングニル》が負けるとは思わなかった。
「……無駄だ」
《グングニル》は止められない。
一度投げると“絶対不可避”の槍なのだ。
漆黒竜のブレスに真正面から向かっていく《グングニル》はどんどんとブレスを押し返していく。
『ヌウッ!?』
《グングニル》がブレスを打ち破った。
そのまま《グングニル》は真っ直ぐに突き進んでいく。
ついに漆黒竜の腹に突き刺さった。
『ヌウウツウウ! 負ケヌ! 負ケヌゾ、我ハ負ケヌ!』
漆黒竜は抵抗しているようだ。
だがそれも無駄な努力。
《グングニル》は漆黒竜の腹を突き破った。
漆黒竜は死に絶え、落下してきた。
ズドォォォンンンンン!
あれだけの巨体だ。
漆黒竜が落ちると、凄まじい地響きが鳴った。
「……」
少しして、漆黒竜が死に絶えると同時に《グングニル》が戻ってきた。
俺の真横に突き刺さった。
俺は《グングニル》を見て考えた。
俺はこの感覚に覚えがあった。
それは聖剣を召喚できるようになった時と同じだった。
名前も知らないのに、自然と口が動いて、その能力がわかる。
ーーーーまさか。
俺は自分のステータスを開いた。
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オルガン 人間 男 十九歳
職業《暗黒騎士》
スキル
《魔眼》
《魔剣召喚》
《聖眼》
《聖剣召喚》
《装着換装》
《剣術・極》
etc…………
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なるほど。
やっぱりか。
俺は転職していた。
それも《聖騎士》とは真逆の《暗黒騎士》に、だ。
《聖騎士》が聖剣を使うのに対して、《暗黒騎士》は魔剣を使う。
だが俺はなぜか、聖騎士のスキルを受け継いでいる。
それが何を意味するか。
俺は聖剣と魔剣、どちらも使うことができる。
つまり、最強だ。
これなら俺は復讐することができる。
皇帝を殺し、皇女を辱め、聖騎士どもは無様に晒してやろう。
今から楽しみだ。
「さて、街に行こうかな」
《魔槍グングニル》を異空間に戻してから、俺は街に向かって出発した。
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