第二十八話 崩壊の足跡が迫る
お久しぶりです。二章開幕となります。
本編はほぼ終わったのですが、タイトル詐欺になってしまうのでタイトル回収と書きたいキャラが残っているので新たに連載を開始します。
二章でようやくタイトル回収かよと思ったからは……。その通りなので何も言わないでください笑笑
また、投稿のスピードはゆっくりとする予定なので末永く、見守ってくれると嬉しいです。
帝国の宮殿の長い廊下にカツカツとした靴音が響く。その音は徐々に激しく、強くなっていくが、それが明らかに怒りから来ているものだと誰もが理解した。
その靴音がやがて止まる。そこは皇帝に謁見するための部屋だったが、彼女ーーーーララティーナは強引に扉を開いた。
そこにはすでに皇帝が玉座に座り、その左右には王妃と皇女が座っていた。その下の段には大臣達が集まり、何が起こるのかと固唾を呑むんで緊張を露わにする。
ララティーナはそんな空気を無視してズカズカと侵入して行った。すると皇帝が口を開く。
「おお、ララティーナよ! 此度の活躍、見事でーーーー」
「五月蝿い」
「っ」
皇帝の一声を一蹴りする。
それだけでこの謁見の間はしん、と静まり返った。異様な緊張感の中、ララティーナの皇帝に対しての無礼な態度を咎められる人間はただの一人もここにはいなかった。
「そ、それで、ララティーナよ、突然の謁見の要請には驚いたが、何用か……? まさかようやく息子との縁談をーーーー」
「はあ? そんなのありえないから」
またも一蹴り。
ララティーナは皇帝の息子、つまり次期皇帝との縁談を持ち掛けられていた。ただしその素行に問題があり、皇子は皇族の地位を使って好き放題していた。
ララティーナは仮にも帝国随一の魔術師だ。故に皇子の家庭教師として魔術を教えていたが、その過程で皇子がララティーナを気に入ったらしく、縁談を取り付ける様に皇帝にお願いをした。
それが過程なのだが、ララティーナは頑なに頭を振ろうとしなかった。
「あんなガキに何で私が嫁がないといけないの? ありえない妄想しないでくれる?」
そしてその気持ちは今も変わっていないらしく、この様に断っている。
皇帝とて、息子の愚行には頭を悩ましているのだ。大臣の話も聞き、芯の通った女性、つまりララティーナの様なしっかりと発言できる女性が伴侶となってくれればと常々思っていたのだ。
だから是非ともララティーナを息子の妻に…………と思っていたのだが、今回は別の要件だろう。
ララティーナから漏れ出る魔力が、その途方も無い怒りを物語っている。
そしてその原因も皇帝は心当たりがあった。
だから皇帝は何とか話をすり替えようとする。
「な、ならば、前回の遠征の報奨金が足りなかったからーーーー」
「そんな事はどうでもいい!」
その怒気の混ざった叫びに皇帝は「ひいっ」と情けない声を上げた。
「何故だ! 何故、私の兄、オルガンを追放した!!!」
そしてついに、ララティーナの封じていた魔力が爆発した。その魔力の爆発によって大理石の床や壁、天井、高価な装飾にまでヒビが入る。
皇帝を含む、大臣達は恐怖で震え上がる。
「お、恐れながら、申し上げます……」
「あ?」
話しかけてきた新団長のリーガスに魔力で威圧する。“でしゃばるな”と。
しかし、ここで引くわけにもいかずにリーガスは何とか口を開く。
「オ、オルガンは、我々を裏切りました……!」
「はあ? どういう事よ」
その言葉を聞いたララティーナは漏れ出す魔力を封じ込めて、リーガスの話に耳を傾けた。
そしてリーガスはいける、と内心でほくそ笑む。
「元聖騎士長のオルガンはあろう事か国家転覆を目論み、皇女であるヴァーリ様をも脅して粛々とその準備を進めていました! それを察知し、我々がオルガンを粛清したのです!」
「え、ええ、その通りよ!」
魔力に震え恐怖していた皇女も、その話を聞いて慌てて頷いた。
嘘。嘘。真っ赤な嘘だ。
だが、オルガンの排除計画は大臣でも一部の者にしか知らされておらず、当然ララティーナも知らない。
だから、その一部の者が口を閉ざせばいくらでも事実の改竄は可能であった。
「そう、そうだったのね…………」
まるで落胆した様に肩を落とすララティーナ。
「何て、愚かな」
そう呟いた。
次の瞬間、先程まだとは比べ物にならない魔力が解放される。
それは禍々しく、猛々しく、魔王を連想させる様な圧倒的な恐怖感。
大臣達は気を失ってその場で倒れ、皇帝はその場で震え上がる。そしてその殺気を最も向けられている皇女は悲鳴を上げた。
「にいさんが謀反? そんな事をすると思ってるの? 両親が死んでも、妹の私のために聖騎士と働き続け、苦しい思いをしても弱音を吐かず、民のためにもと戦いつつ負けたにいさんが?」
ゆっくり、ゆっくりとララティーナは玉座へと歩み寄る。
「ありえないわよね、そんな事」
本来ならそれを近衛兵やリーガスが止めねばならないが、今はそれを誰も咎めなかった。この場にいる誰にも、そんな余裕も一切無かったから。
「ねえ、知ってる? にいさんがどんなに苦しかったのか。どんなに貴方達を恨んでいたのか。そしてその弱音を私にすら漏らせなかったのを……」
一歩進むごとに魔力による圧力が増していく。それは進む度に踏み締めた大理石の床が崩れるほどだ。
「ねえ、知ってる?」
そして遂にララティーナは玉座まで辿り着いた。
王妃はとっくに気絶しているのに対して、皇帝とヴァーリは気絶すらも許してもらえなかった。
はあ、とララティーナは溜息を吐く。
本当にこの人達は何も知らずに兄を使っていたんだと、本気で落胆した。
「私も帝国を抜けるから」
そして、もう決めていた事を告げた。
「そ、それは許さぬ! 許さぬぞ!」
「別にアンタの許可なんて求めてないけど」
ララティーナは帝国の最高戦力と言っても過言では無い。そのララティーナが帝国を抜けるなど、皇帝として許せる物ではなかった。
しかし、ララティーナはそんな事は知った事では無い。
ララティーナにとっても、自分を帝国に留めて置けるのは兄のオルガンだけだった。
オルガンがいるから帝国にいたのに、オルガンがこの国にいないのなら、もうララティーナが帝国に留まる理由も無くなった。
「仮にも母国だからね、最後の義理は果たしたわ。それじゃあね」
「ちょ、ちょっと待ちなさい!」
「は?」
「今まで、今まで我慢していたけれど、もう我慢できないわ! 貴女のその愚行、目に余る! 皇女の名に置いて貴女をーーー!!」
「黙りなさい」
一声で五月蝿い皇女を黙らせる。
「我慢していた? ふふっ。面白い事を言うのね。私の方が我慢していたと言うのに」
「っ」
「私が今まで我慢していたのはね、ヴァーリ。貴方がにいさんの婚約者だったから。でも、もう違う。今なら貴方を苦しませて殺す事だって出来るのよ?」
「ひいっ……!!?」
皇女に全ての魔力を向ける。
そこでようやく、皇女は気絶する事ができた。
「まあ、そんなことはしないけどけ。兄さんは優しいから、そんな事をすると悲しんでしまうから」
そう捨て台詞を残して、鼻歌混じりに全員が気絶した謁見の間を後にした。
ララティーナは愛しき兄、オルガンが住まう地に向かうのだった。
妹登場!!
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