第二十七話 英雄オルガン
「そして、私達は助かったのです」
「いや、その後はどうなったんだよ」
重要なところが抜けている。
Sランク冒険者のキャサリンが来て、どうなったんだ?
「それは……分かりません」
え?
「実は私も気絶してしまったんです。その後、すぐに」
「っ! 無事だったのか!? 怪我は!? 大丈夫か!?」
「だ、大丈夫、ですよ……。オルガン様……。あの、なので、えと……」
「あっ……」
しまった。
思わず、ソフィアの身体を触りまくってしまった。
「す、すまない……」
「いえ……」
気まずい空気が流れる。
お互いに顔を赤くして、俯いたままだ。
「………」
「………」
その割にはお互いに抱きついたままだ。
柔らかい。
「………」
「………」
幸せだな。
こうして過ごす時間が凄く、凄く幸せだ。
「なあ、ソフィア」
「はい?」
「結婚してくれ」
気がつくと、口に出していた。
「ーーーえ?」
ソフィアは唖然とした。
「俺は、凄く幸せだ。君と一緒にいることができて、君と一緒に笑えることが。ずっと、ずっと一緒にいたいんだ」
俺はソフィアが好きだ。
心の底から、誰よりも。
ソフィアは俺の話を聞き入れると、何度か瞬きをしてから、深呼吸をした。
「わ、私も!」
私も、とソフィアは言う。
「凄く幸せです。私でよければ、結婚してください。オルガン様」
〜っ、と我慢できずにソフィアを抱きしめた。
すると優しくソフィアも抱きしめ返してくれた。
「ソフィア」
「オルガン様」
「………」
「………」
そして、唇を重ねた。
「オルガンだ!」
「リンドバルトの英雄!」
「ばんざーい! ばんざーい!」
宿から出た瞬間、街人が集まってきた。
何事かと思いソフィアを見ると、ふふっ。と笑っていた。
「あの、え? なんで?」
リンドバルトの英雄?
なんだ、それは?
と疑問に思うと。
「バカヤロォオオオ!」
突然、罵倒された。
あれはデブンか?
包帯でぐるぐる巻きだから気付かなかった。
「お前は街を救ったんだ! お前は、英雄なんだよぉおおおお!」
叫びすぎだ。
だが、街を救った?
確かに魔王を倒したけど。
ああ、街の人から見れば、俺は街を救ったことになるのか。
「その通りだよ、リンドバルトの英雄さん」
今度はマカンが現れた。
戦闘服ではなく、正装をしている。
「本来なら、君が魔物の軍勢が街に迫っていることを知らせなかったのは重大な問題になるだろう」
しかし、と付け加える。
「だが、今回の君はたった一人で十万の魔物を足止めし、数万の魔物を倒し、魔王を打ち倒した。その功績によって、君の責任問題は不問とする!」
その言葉に冒険者が湧いた。
「さらに!」
そこでやっとか、街中が湧いた。
「君にAランク冒険者の資格を贈呈する!」
「「「うおおおおおおおおおおお!!!!」」」
と、街のみんなはテンションマックスだ。
「は、はは……」
一方の俺は状況についていけず、苦笑いするしかなかった。
ただ、その傍らにはソフィアがいて、一緒に苦笑いしてくれた。
「おめでとう!」
「お前のおかげだぞ!」
「街を救ってくれてありがとう!
街を歩くとみんなが祝福してくれた。
俺はもう一人じゃない。
英雄がリンドバルトの街に現れた。
十万の魔物をたった一人で足止めし、たった一人で魔王を打ち倒し、冒険者組合最速でAランク冒険者になった男。
彼は英雄である。
その男の名はオルガン。
オルガンの名声は瞬く間に世界中に広まった。
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