二十三話 緊急クエスト⑨
最前線で戦う戦士や剣士たちの横に並んだ。
「みんな! すまない!」
「おう、オルガン!」
「てめえ、何で俺たちを呼ばなかった!」
「不甲斐なかったか? あぁ!?」
「ぶち殺すぞテメェ!」
「後でぶん殴ってやる!」
「俺は蹴り上げてやるよ!」
みんなして散々を言う。
だが、その顔は笑顔だった。
俺も自然と笑顔になる。
コイツらは俺を助けに来てくれた。
そして、俺が無事でいることを喜んでくれているんだ。
「それじゃあ私は魔法でドカンとやらせてもらうわ!」
「なら、私の弓矢の的になってもらおうかしら」
「怪我をしたら、私は治してあげます! だから安心して殴られてください!」
後衛職のみんなからも頼もしい声が聞こえてきた。
って、ちょっと待て。神官の君。
それは俺にボコボコにされた後にさらにボコボコにされろ、ってことか?
鬼か! 美人なのに! 鬼娘か!
「よし! オルガンが復帰したところで、これからさらに戦線を押し上げるぞ!」
「「「おう!!!」」」
後ろでマカンが指示を出した。
戦士と剣士、そして俺も力を合わせて、魔物達を押しのけていく。
だが、徐々に兵力の差が出て来た。
冒険者達は押されていく。
「くそっ!」
「数が多すぎる!」
「アーロンが怪我をした!」
「治療を頼む!」
「左側、三人負傷!」
………だめだ。
このままじゃ負ける。
どうする?
兵力の差は埋まらない。
それなら、一人一人の能力を底上げすればいい!
だが、このスキルには必要なものがある。
それを聞かないといけない。
「お前ら! 俺を信じられるか!?」
「「「当然だ!!!」」」
即答かよ。ったく、カッコいいな。
「《海槍トライデント》!」
俺が異空間から取り出したのは、青い槍だった。
「魔法職のみんな! 出せるだけの水をありったけ寄越せ!」
「「「「「クリエイトウォーター!!!」」」」」
後方の魔法使いから、魔法で大量の水を生み出した。
その水は俺達を中心に、洪水にさせるほどだった。
「巻き上げろ!トライデント!」
そして俺は、大量の水をトライデントで巻き上げる。
「《海波》!」
その水を周辺に展開する。
魔物の大群を波で押し返していく。
十数kmは押し返せた。
これで、スキルを使う時間が稼げる。
だが………。
「くそ、魔力切れか……」
まずい。魔力が足りないと、あのスキルを使えない。
あのスキルを使えないと、みんなはーーーー。
「私が支えます、オルガン様」
その時だった。
背中に誰かが手を置いた。
ソフィアの声がする。
身体を暖かい光が包み、俺の魔力が回復していった。
魔力は満タンだ。
これなら気兼ねなく、スキルを使うことができる。
「スキル《白薔薇の騎士団》発動!」
このスキルの発動条件はたった一つ。
双方が信頼関係にある事。それも、深い深い繋がりだ。
「お、おお! なんだこれ、力が湧いてくるぞ!」
「魔力の量も倍以上になってるわ!」
「切り傷くらいならすぐに治るぞ!」
「魔法の威力もすげえ! ファイアボール一発でオークが何頭も吹き飛びやがった!」
「俺の剣術でもゴーレムを傷つけられたぞ!」
「「「どうなってるんだ、オルガン!!!」」」
なんでみんなキレてるんだよ……。
まあ、聞かれたなら答えてやろう。
「全員に付与を百重にしたんだよ。これくらい普通だろ?」
「「「「「「「「「「「普通じゃねえよ!!!!!」」」」」」」」」」」」」
その日一番のツッコミが戦場に響いた。
ここまで読んでいただきありがとうございました。
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帝国に裏切られた死霊術師ですが、何故か死の女神に惚れられました。〜死の女神の力で最強の英雄達を生き返らせて、無敵の仲間達と一緒に楽しく暮らします〜
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是非、読んでください。




