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第十話 パーティ結成

 朝、少し早くに起きて、ソフィアの部屋を訪ねるとソフィアはすでに起きていた。


 それから二人で朝食を食べた。

 女将さんのフランさんが作る料理は絶品だと、幼い看板娘のニーナちゃんが自慢してくれた。

 食べてみるとたしかに絶品だ。ソフィアも口にあったのか、とても美味しそうに食べていた。


 それから冒険用の服に着替えた。

 俺は壊れた聖鎧ではなく、新しく《魔鎧》を着た。

 全身が漆黒の鎧で、兜までも黒い。

 硬度なら前の聖鎧以上だ。







 冒険者ギルドに向かう。

 俺の後ろにはソフィアが付き従うように歩いているが、慣れない服だと歩きにくそうだ。

 多少、歩く速度は落とす。


「ソフィア。これから、冒険者ギルドに行って、冒険者登録をしてもらう」

「はい」

「個人情報を書かないといけないが、偽っても構わない」

「……いいんですか? ギルドにバレると大変な事に」

「言いたくないんだろう? バレた時はバレた時だ。その時考えよう」

「……ありがとうございます」


 ソフィアの両目には相変わらず、無骨な布が巻かれていた。


 少しして冒険者ギルドに着いた。

 朝と言うこともあって、昨日よりも冒険者達がいた。


 流石に朝は酒を飲んでいる奴も少なく、皆がどのクエストを受けるかを考えていた。




そんな中でも、俺は目立っていた。


 まあ、当然か。

 俺は全身を漆黒の鎧に包んだ大男だ。しかも武器を手に持っていないと来た。実際は異空間に収納しているから、いつでも取り出せるんだがな。

 そしてソフィアだ。美しい《聖衣》と中々に派手な《聖杖》を握っている。そして容姿も抜群だ。スタイルもいい。だが、両目を布で隠している。一目で盲目だとわかる。そんな女の子の首には奴隷の首輪。

 嫌でも目立つだろう。


 面倒な事にならないように早く受付に行こうと思うとやはり絡まれた。


「おいおい、そこのお前。ちょっと待て」

(誰だろうな)

「全身黒い鎧のお前!」

(へー。そんな奴いるんだー。珍しー)

「お前だよ!」


 あ、なんだ。俺か。


 戦士風の男に肩を掴まれて、俺が呼ばれていたんだと気がつく。

 よく見るとギルドの冒険者のほとんどが俺達を注目していた。


「お前、その女の子、目が見えないんだろ?」

「まあ、そうだが」

「そんな女の子を戦わせようとするのか?」

「そうなるな」

「最低だぞ」

「お前には関係のない事だ」

「彼女が死んだらどうするつもりだ!」

「俺の奴隷だ。生殺与奪は俺が握っている。俺がコイツをどう扱おうと関係のない事だ」


 それに、絶対に死なせないからな。


「この野郎、言わせておけばーーーー」


 男が俺に殴りかかろうとした。

 その時だ。


 シュッ


 男の頬を杖が掠めた。

 ツーッ、と頬から赤い血が流れる。


「ーーーーえ?」

「私の御主人様に、何をしているんですか?」


 そのソフィアは笑っていた。

 だが怒っているのが分かるほど、プレッシャーを感じる。殺気まで感じる。

 その手に握る聖杖を戦士風の男に向けていた。


 スキルを持っているのは知っていたが、ここまでとはな。

 これは戦闘でも期待できそうだ。

 これだけできるなら、戦闘で後衛を守る必要がなくなる。

 そうなれば戦闘の幅も広がるだろう。


「邪魔だ。失せろ」


 俺も面倒くさいから、ちょっと殺気を飛ばしてやると、すぐに怯んで手を離してくれた。

 まったく、と掴まれていたところを払って、受付に向かった。


 昨日対応してくれた、受付嬢のアンナがいた。

 だが俺の風貌を見て、怯えているみたいだ。


「え、えと」

「昨日来た暗黒騎士だけど、わかるかな」


 いや、分からないか。

 俺が兜を取ると、俺だと分かったみたいだ。


「オルガンさん! おはようございますっ!」

「あ、ああ。おはよう。昨日はすまなかったな。怒鳴ってしまって」

「いえ! あれは私が悪かったです! ごめんなさい!」


 と頭を下げた。

 素直な子だと思った。


 聖騎士の奴らは自分に非があっても認めようとしなかったからな。


「それより、今日はコイツの冒険者登録をしに来たんだ」

「あ、はい。わかりました」


 書類を取り出して、ソフィアに渡した。

 だが、よく考えてみるとソフィアは盲目だ。

 書けないだろうから、俺が代わりに書こう。


「俺が書こう」

「ありがとうございます」


 一つ一つの項目を質問していく。

 ソフィアはやはり、職業や出身地は誤魔化していた。


 記入が終わり、アンナは早速冒険者カードを作成した。


「これで冒険者カードの作成は完了しました。本日からよろしくお願いしますね、ソフィアさん」

「はい。よろしくお願いします、アンナさん」


 ソフィアはにこりと微笑んで、アンナも返すように笑った。

 そんな二人の空気を壊すようで気が悪いが、本題に入るとしよう。


「それじゃあ、次はパーティ登録を頼むよ」

「パーティ登録ですか? つまり、ソフィアさんと一緒にクエストを?」


 アンナは不満そうに聞いてきた。

 まあ、ソフィアは盲目だ。

 普通ならクエストなんて受けられないだろう。


 アンナは単純に心配してくれたのだろう。

 

「私は大丈夫です。匂いで人や魔物の位置も正確にわかりますから」

「ですが……」


 ソフィアが自分で大丈夫、と言ってもアンナは納得できないようだ。


 そりゃあ、簡単には納得できないだろう。

 失敗すれば死ぬ。それが冒険者だ。

 俺たちが次の日には死んでいるかもしれない。


 でもーーーー。


「大丈夫だ。死なせないように、俺が必ず護るからな」

「ーーッ。なるほど、それなら安心ですね!」


 根拠のない自信。

 それでも、アンナは納得してくれたみたいだ。

 隣にいるソフィアは頬を赤らめていた。風邪か?


「それでは、お二人のパーティ名はどうします?」

「パーティ名か。考えてなかったな。ソフィアは良い案はあるか?」

「そう、ですね。《御主人様とその下僕》なんて言うのはどうでしょうか」

「いや、却下だ」

「……残念です」


 ソフィアは本気で残念がっている。

 どうなっているんだ、そのネーミングセンスは。


「まあ、適当に決めるか。《黒白こくはくの旅団》なんてのはどうだ?」

「ーーっ! とっても素敵です! 御主人様!」

 

 俺とソフィアの見た目から適当に言ったのだが、どうやらソフィアのお気に召したらしい。

 こうして俺たちのパーティ名は《黒白の旅団》に決まった。


 後にこのパーティの名前が世界中に響き渡る事になるのだが、それはまだ先の話。







ここまで読んでいただきありがとうございます。


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