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06



 ソファの上でもぐっすり眠れるのは、労働者時代に身に付けた数少ない特技の一つと言ってもいい。キッチンの前、窓の磨りガラス越しに差し込んでくる朝日に、新波は細く瞼を開いた。

 夢ではなかったらしい。

 頭の中を整理している。突然決めた退職。次の住所も決めずに引き払った社宅。偶然再会した友人。連れていかれた事故物件。詐欺の告白。案内された、これから住む1Kの部屋。そして彼女の語った、その目的。

 一晩寝て考えろ、という言葉。

 すべてを思い出して、ぼんやりと新波は思う。考える前に、疲れのあまり深く眠ってしまっていた。もうすっかりセミの鳴き声が響く時間帯で、気温は体感で三十度を超えている。夏の日。眠っている間に何かを考えることは、自分にはできないことだったらしい。

 何の考えも纏まらないまま、喉の渇きだけは確かで、まずはソファを降りることにした。するとそのとき、がちゃりと扉が開いた。玄関ではない。キッチンの奥。ベッドのある部屋。

 黒い下着以外の何も身に着けていない頬澄が、目を擦りながら出てきた。

「う――うおわっ!!」

 思わず声を上げてソファから転がり落ちると、頬澄もびくっと手を顔から離して、目を丸めた。そして声の主が新波だった、ということを見て取ると、むにゃり、とまた寝ぼけ眼に戻って、ふわぁ、と手を当ててあくびを一つした。

「うっせーな、朝から……」

「いや、おま……!」

「あちーんだよ、こっちは」

 まるで気に留める様子もない。そうすると新波の方も、気にするこっちが失礼なのかもしれないという気持ちになって、というか暑いのはこっちもだ、という気持ちにもなって、何か言い返してやろうか、と考えていると、頬澄はぺたぺたと裸足のまま歩いて、トイレのドアノブを握ったところで「あ、」と言って振り返る。

「お前、先に入る?」

「な、」何が、と言おうとして、トイレ以外の何物でもないだろうとすぐにわかって「いや、別に。大丈夫」

「ホントか?」再会してから一番、不審そうな目つきを頬澄は作って、「言っとくけど、私のトイレはとんでもなくなげーぞ」

 知るかよ。

 いいから早く入れ、と手の甲でしっしっと追い払うと、「後悔すんなよ」と捨て台詞を残してようやく頬澄はドアの向こうに消えていった。

 溜息を吐く。久しぶりにゆっくり眠れたと思ったら、とんでもない目覚めになってしまった。

「……まあ、文句を言える立場じゃないけど」

 ソファに座り直せば、ポケットの中で部屋の鍵がチャリ、と鳴る。

 頬澄から「これから貸してやる部屋の鍵だ」と言って渡された、頬澄の住むこの部屋の、合鍵が。






 改めてもっかい言うと、と頬澄はカップ麺に湯を注ぎ終わってから言った。

「健全なビジネスなんだよ、これは」

「その前に服を着てくれ」

「なんで」

「俺が困るから」

 じっ、と頬澄は新波のズボンに視線を注いだ。そして勝手に「大丈夫だろ」と判断して、シンクに寄りかかったまま話を続けた。仕方がないので新波の方が妥協して、横を向いた。トイレに入ってからたっぷり九十分経った後に「わり、寝てた」と言ってのっそり出てきた頬澄は、全身に汗を流して、もうすぐ昼になっていく光の中で肌を輝かせていた。どうせすぐにシャワーを浴びてまともな恰好になるだろう、と新波は自分の思考の中に希望を見出している。

「私は生活するために金が欲しい。で、金を稼ぐ方法って言ったら、そりゃ特技を使うことだろ」

 昨日の夜、眠る前に言ったことを、ほとんど忠実に頬澄は繰り返している。その先はこう続く。詐欺のじゃねーぞ。霊媒でもねー。

「詳しいんだよ、そういうオカルトっぽい話に」

 最初はただのテキスト動画から始めたらしい。自分で怪談を作って、それを読み上げる動画。その話と頬澄の声もあって、何とか動画投稿サイトにおけるチャンネルの登録者数も五千程度までは伸びた。が、そこで頭打ちになった。

「やっぱり、基本的に怖い話をそんなオタクみてーに全部読んでるやつなんていねーんだよな。いたとしてもすげー少なくて、そういうオタク以外のライト層をちゃんと取り込まないとチャンネル登録者って伸びねーわけ。で、そういうライト層っつーのは別に新しい創作怪談なんか求めてなくて、既存のメジャー怪談をいい声で朗読してるのを求めてそういう動画を見るわけだ」

 昨日「怖い話を全部読んでるんだったら、『オタクみてー』とかじゃなくて『オタクそのもの』なんじゃないのか」と訊ねたところ「殺すぞ」と即答されたことを思い出して、新波は一旦口を噤む。それから、そのとき言えずじまいだった別の質問を投げかけることにした。

「別に、それならそれでメジャー怪談を朗読すればよかったんじゃないか」

「なんで自分がつまんねーと思うことをしなくちゃなんねーんだ。こっちは聞き飽きてんだよ。最近じゃネットで流行ったのが数年遅れでテレビにまで出てくるザマだし」

「でも、聴いてる人はそれを求めてるんだろ?」

 呆れた顔で頬澄は新波を見た。というか、ほとんど軽蔑の表情。

「お前、動画投稿とか向いてるよ」

「なんかちょっと馬鹿にしてるだろ」

 うん、と何気なく頬澄は頷き、新波は「うん、じゃないだろ」と心中で思う。

「別にそれでもいーけど、そっちの土俵に上がると声優志望とか崩れとか、普通に声で生計立ててるようなやつらと戦わなくちゃいけないんだよ。しかもそいつらは私と違ってメジャー怪談を朗読することに対して別に心の迷いとかねーわけだから、普通に角突き合わせても勝てねーの」

「弱気だな」

「うっせえ。それに、私のチャンネルに集まった五千人のうち、まあ百人くらいは熱烈な怪談オタクみたいなのがいるだろうな、とも思ってたんだ。新作怪談を求めてインターネットとかに張り付いてるやつら。そういうのがメジャー怪談朗読に移行したら離れていくだろうな、って思うと、そういう気が起こんなかったんだよ」

 ああ、と新波は頷く。前に、少しだけ聞いたことがあった。追いかけていたインディーズバンドがメジャーデビューした途端に興味がなくなった、という友人の話。確かあのとき、彼はこう言っていた。「新規層を拡大するとか、売れようとか、そういうアーティストの動きって基本的に既存ファンの切り捨てでもあるんだよな。もう視界から外される、っていうかさ」俺は後生大事にこのインディーズ盤を聴きながらグッズだけを買い続けるだろう、と悲しい顔で言っていたことも覚えている。

 ファン想いというわけだ、と何となく妙な気分で頬澄を眺めた。この友人が、十年経って他者とそういう向き合い方をするようになったというのは、なんだか不思議な成長に思える。

「だから、顔出して動くことにした。霊能力者って触れ込みで。中身を変えるつもりがないなら、外装を変えようってわけ。まあ、正確に言うなら顔は出してねーけど、オタクってこういう恰好好きだろ?」

 ほら、こんなの、と言うので、新波は逸らしていた目線を戻した。そしてぎょっとする。

「こんなのって、」もう一度目を逸らして、「そんな恰好してるのか」

 あん?と怪訝な声。間が空いたのは、たぶん自分の恰好を改めて見直したのだと思う。下着姿に、狐の面を被った自分を。「なわけねーだろ。服は着てるよ。そーゆー乳出しで伸びてるやつもいるけど、私じゃ相手になんねーし」

 乳出しって。

 あんまりにもあんまりな言い方に、新波は目を瞑った。もう、隣に水着の人がいる、くらいの認識くらいでいこう。実際、部屋の気温は密閉された海の家みたいなものになってきているし。

「それで一万くらいまで伸びたら、あの兄妹からコラボ依頼があったわけだ。妹が私のファンだ、つって」

「ああ」

 新波は頷く。昨日、一通りの話が終わってからほんの僅かな時間だけれど、調べた。

『イナバ。』

 三人兄妹の配信者たち。人気の理由まで解説しているサイトがあったから、ついでにそこで確認もした。

 はじまりは、次男のワニだったのだそうだ。ワニは作曲家で、高校生の頃から歌唱用の機会音声ソフトを使った楽曲の投稿を開始。楽曲のクオリティが高かったことから、ソーシャルゲーム等から楽曲提供依頼の声がかかるようにもなり、新進気鋭の現役高校生アーティストとして注目されていた。

 そして満を持して投稿された男女二人の肉声歌唱による楽曲が一千万再生を達成。さらにその男女二人がワニ自身の兄と妹だったこと、また兄のサメがチャンネル登録者数二十万人を超える料理系の配信者だったことが話題になり、その一週間後になって、新たなチャンネルである『イナバ。』が開設された。

 基本的な内容は、末っ子のウサが立てた企画に兄二人が付き合う、というものらしい。新波が見た限りでは、ホームコメディに近いような内容だった。ウサが言い出したものをサメが広げて、収集がつかなくなりかけたところをワニが畳む。過激なところはないが、見て親しみやすい内容で、実際コメント欄を確認すると、低年齢層や家族で見ている、という書き込みが目立つ印象を受けた。チャンネル発足時に唯一無名だったウサも現在ではモデル活動を行っているらしく、三兄妹それぞれがそれぞれにファンを引っ張ってきて、その中心になっている『イナバ。』のチャンネル登録者数は日に日に膨らんでいる。らしい。詳しいところまでは、まだ確認できていないけれど。

「まあ、そりゃ受けるよな」

 新波は同調する。動画の中身に自信があるのだったら、こんな一気に人の目に触れられる機会を逃すわけがない。

「でも、それと詐欺は話が別だろ」

「詐欺じゃねーよ」にたり、と頬澄が笑った。気がする。「お前、手品師に向かって『詐欺だ!』とか言うか?」

 頬澄の言い分はこうだった。そもそもオカルトなんか信じてるやつはいない。ホラーゲームをやってきゃーきゃー言ってるのは全部視聴者サービスだ。ちょっと怪談を齧ればわかるが、あれは半分は創作だ。残りの半分は『なんだかちょっと不思議な体験をしちゃった自分』が可愛くて、つい脚色に脚色を重ねて人に語ったものが流れ着いてきたものだ。超心理学の本を読んだことはあるか。科学哲学の本に書かれたタブーを驚くほど綺麗に踏んだ主張が次々に出てきて面白いぞ。そういうのが難しいんだったら、手軽にオカルト研究家とオカルト論破に精を出す科学者の本を並べて読んでみればいい。お前の場合は絶対に科学者の方を気に入るはずだ。賭けてもいい。絶対にそうだ。すべてを読み終わったときにはお前は科学を信奉するようになり、口癖は「百歩譲ってそれがお前の精神状態の悪化に伴う幻覚じゃなかったとして、じゃあなんでマンモスの幽霊を見たって人間がいないんだよ?」になる、と。

 それを言われた昨夜は、二の句が継げなくなってそこで会話が終わってしまった。どうしてそんなことがありうるだろう。怪談を作って霊媒師だと名乗っている人間が、オカルトを一つも信じていないなんて。あまつさえ、『オカルトを信じてるやつなんて一人もいない』とまで言い切るなんて。

「いや、普通にいると思うけど」一晩経ったおかげで、今は反論できた。「幽霊が怖い、って言ってる人、結構いるだろ」

「アピールだよ。『私、か弱いんですぅ~』ってアピール。お前に性的にすり寄るためのだよ。ちゃんと気付いてやれ」あまりにも、という内容を迷いもせずに口にする。

「いや、男でもいるって」

「お前さては性差別野郎か?」反論は途方もない速さで。「男が男に性的なアプローチをしちゃいけないってか」

 わかった、と新波は言った。俺が悪かった、と。ふん、と頬澄は鼻息を荒く吐いた。てめーのその素朴で醜いセクシズムと精々真剣に向き合いやがれ。だから重ねて新波は言う。すまん、今のは全面的に俺と、俺の価値感が悪かった。

「結局、気持ちよく騙されるのを全員が求めてるんだよ。嘘って知って楽しんでんだ。だから実話っぽい怪談が人気なわけ。テレビも何の罪悪感もなく心霊スペシャルとか嘘ぶっこけるわけ。大体学校の怪談なんかガキの騙し合いから生まれてんだろ。それと一緒。私もあのファンガールにサービスしてやったんだよ。普段は『いねー』って本当のことを言ってるところを、びっくりさせてやったわけ」

 一生の思い出になるだろ、とけらけら頬澄は笑った。

 なんて邪悪な奴だ、と新波は思っている。

「金も取ってねーし。今すぐ引っ越せとか言ったわけでもねーし。大体、あいつらあんなちっせー部屋にいつまでもいるつもりもねーから。しっかりしてっし不動産屋とも噛んでんだろ。事故物件って今、むしろ値段釣り上がってるしな。物好きなやつらがいるから。しかもあそこ、隣人トラブル系でもなんでもねーただの身内の刃傷沙汰だから、マニアも安心して住めるし。物件探しも『事故物件配信したいんですけど、どっかやっていいとこないですか』って感じじゃねーの。私が『います』つったら動画は盛り上がるし、部屋の価値も高まるし、win-winだろ。win-win」

 なんて邪悪な奴だ、と新波は二度思う。

 が、上手い反論が思いつかずにいる。確かに、言わんとするところはわからないでもない。頬澄の考えでは、霊能力者とその客というのは、つまり手品師と観客の関係だというのだ。驚かせる人間と、驚きたい人間。

「でも、幽霊がいるっていうのは嘘だろ」

「除霊します、つって金取ってんだったらまあそうだけど、ただ幽霊がいるってのは『悪い』嘘の範囲に入んねーだろ。別に損させてるわけじゃねーんだから」

「でも、怖がってたろ、あの人たち」

 可哀想だと思わないのか、というニュアンスを込めてから、新波は後悔した。可哀想だと思っていないんだろうな、というわかりきった理解が遅れてやってきたから。

 けれど、予想に反してすぐさまの反論はなかった。ぺたぺたと歩いていく音がする。部屋に入っていく音。出てくる音。気配が目の前に来る。

「なんでお前、目瞑ってんの?」

「…………いや……」

「開けろ。んで、見ろ」

 何をだよ、と思いながら薄目を開けたら、スマホがものすごく近くにあった。あまりにも近くて画面がよく見えなかったので、少し顔を離す。

 From:サメ

 To:ホーマch

 件名:昨日のコラボについて

 内容:

 昨日は本当にありがとうございました! あのあと無事、家まで帰れましたか?

 うちのウサは大喜びで、寝ないで動画編集してます。完成したら事前の確認のために動画を送りますので、楽しみにしておいてください。めっちゃ気合入ってます笑

 しっかり、それを読んでから。

 静かに、頬澄が問いかけてくる。

「で、なんだっけ。なんか言いたいことがあるんだっけ?」

「…………いや……」

 かろうじて答えると、「お前もう二度と私に逆らうなよ」というとんでもない要求が飛んできた。

 が、ここまで完璧にのされたら、実際に逆らう気はとても起きない。もう、これで収めよう。時給一万円で、種も仕掛けもある手品の助手をした、と。

「んで、話はこっからなんだけど」

「は」

「何驚いてんだ?」

 昨日言ったろ、とスマホをどかして頬澄は言う。

「家無し職無し惨め男なんだろ? 優しーお姉様が家と職を提供してやるって」

 家はここ、と言って、

「職はこれの手伝い。私、動画編集とか苦手なんだよ。お前そういうの得意だろ?」

「いや、やったことないし……」

 それに、と色々な逡巡が頭に浮かぶ。家はここ、って1Kで? それにこれの手伝い? って、つまり詐欺の片棒を担ぐって……いや、その話は今、手品ってことで解決したから、ええと、あとは。そもそも再就職がこういうのでいいのか、とか。てっきり自分は一生事務職か何かをしているものだと思っていたのに。

「やったことなくてもできんだろ。本買ってっから。読んでねーけど。向こうの部屋にあるから勉強しろ。得意だろ、勉強。向こうの部屋は冷房入ってるし」

 そりゃあ、得意ではあるけれど。たぶん、大抵の人間よりは。でも、センスとか、そういうのが要るんじゃないのかとか。

「もしかして、昨日あの、ほとんど意味のない付き添い役をやらせたのって」

「まあ、布石だよな。ちょうどいいのがいたから捕まえた感じ。家出しました、みたいなバッグ持って途方に暮れてるから、まあこいつは何もかもなくして落ちぶれたな、って感じでさ」

 第六感、と頭に指を置く。霊媒師だから、と笑う。

「そろそろ助手が欲しかったんだよ。トークはキャラ固まってからでいいけど、廃墟探索とか心霊スポット探訪とか、さすがに私もああいうとこに女一人で行くのはこえーしな。付き添いができたらもっと活動の幅、広がるし」

「ま、待て。いきなりすぎる。もう少し考える時間をくれ」

「いいぞ。明日の朝までな」

 短い、と言いかけた。一度入りこんだら、おそらく簡単には抜けられないだろう。下手をすると公務員をやっていた期間よりも、この助手?をする期間の方が長くなるかもしれない。決断の重要度に比して、考える時間があまりにも少ない。

 けれど、とも思う。今は友人の家に泊めてもらっている身なのだ。しかも異性。いや、もちろんついさっき言われたとおり性別についていちいち勘定に入れるのも馬鹿らしいことかもしれないが、それでも身についてしまった固定観念というものはどうしても拭えない。中学の同級の、1Kの家に、泊まり込み。一晩泊めてもらっただけでもものすごく譲歩してもらったという感覚はある。そのうえ考えるためにもう一晩くれるというなら、これはもうほとんど菩薩と変わりのない慈悲深さなのではないか。これだけ恩情をかけてもらって、むしろ悩む方がおかしいのではないか。うん、決めた。もう明日の朝まで待ってもらう必要もない。

 やっぱやる、と言う前に、頬澄は続きを言った。

「もう明日九時には出発しなきゃいけねーから」

 何を、と訊けば、またスマホの画面を目の前まで持ってきて、見せてくれる。

 ところで明日からの夏の怪談祭りへの参加は大丈夫そうでしょうか?(妹が確認しろってうるさくて……笑)

 オカルト系の方々がたくさん揃うみたいで、俺なんか今から戦々恐々ですよ。ウサはホーマさんと同じ部屋で寝るって言うからいいけど……。昨日のたぬきのお面の人も来るんですか? 夜中とかお化けが出てこないように俺らと一緒の部屋に泊まってほしい……って、なんか魔除けのお札みたいに思っちゃってますけど。

 準備なんかで忙しかったら全然返信不要です。

 明日お会いできるのを楽しみにしてます。

 ではでは~。

 スマホから目を上げた。

「怪談祭り?」

「怪談祭り」

 こくり、と頬澄は頷いて、

「百物語をしに、海に行くんだよ」




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[気になる点] 主人公と霊媒師の容姿の描写がほしい、
[良い点] やっぱ登場人物の掛け合いが面白い
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