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第6話:決戦

 第三次世界大戦後に発見されたオドを使った空間干渉法。

 一般的に魔法と呼ばれるそれは、本来は『一時的空間情報干渉方法』という名前だ。

 なぜ魔法になったのか定かではないが、一説には魔法を見つけたとされるイギリスの学者、ダニエル・ブランチャードがもう一つの空間干渉法と区別するためにそう呼んだらしい。

 さて話は変わるが、ダニエルは大変オカルトに興味を寄せていたらしい。

 そのためオカルト、特に魔法についての研究も行っていた。

 そんな彼の論文の中に『魔法と魔術の違い』というものがある。

 その論文の中で彼はこう言っている。

『魔法と魔術の違いについては諸説ある。例えば規模。あるいは人数。ほかには使用するもの。

 しかし、私はそのどれもが違うと思う。

 私は魔法と魔術の違いは効果時間にあると思っている。

 魔法は一時的、魔術は永続的だ。

 そして、もしこの仮説が合っていた場合、人が単体で行えるものは魔法しかない。

 なぜなら有機物には限界というものがあり、特に人間の場合それが著しい。人間単体では永続的・・・に魔法を扱うことはできない。

 だからもし人が魔術を使ったら、それにはなんらかのカラクリがあるだろう――』




 6 決戦


 片桐先生の合図と同時に弐村にむらと俺はお互いから離れる。

 その間に先生も闘技場の端っこに移動する。

 それを一瞥いちべつしてから弐村を見ると、ちょうど魔法を発動させている。

「来い、魔法刀『神立弐位丸かんだちにいまる』!」

 そう弐村が叫んだ瞬間、弐村の足元に直径三メートルくらいの魔法陣が現れる。

 魔法陣とは転移系の魔法を使ったときに現れる円形の陣だ。

 空間が歪曲し、情報が改竄かいざんされた証。

 そして、今弐村が使ったのはおそらく転移系魔法『物体取り寄せ《アポーツ》』。

 遠くにある物を自分のところに出現される初歩魔法の一つ。

 魔法陣の中から一本の刀――おそらく『神立弐位丸』が現れる。

 弐村はその柄を掴み、一気に引き抜く。

 現れたのは美しい一本の日本刀。

 鞘はなく、刀身と鮮やかな紅色の柄しかない。

 刀身は鋭く光り、時折赤く染まる。

 弐村はそれを上段に構え、

「行くぞ」

 振り下ろした。

 瞬間、剣先から紅蓮の炎がほとばしる。

 炎は五メートルくらいあった距離を一気に詰め、俺に猛然と襲いかかる。

「くっ!」

 俺はそれを右に跳んで避け、弐村に向かって駆け出す。

 その勢いのまま突貫。顔に向かって正拳突きを放つ。

 しかし、弐村はしゃがむことで避け、立ち上がる勢いで下から斬り上げてくる。

 俺は刀を横から蹴ることで逸らし、蹴った左足に体重を乗せ、右足で回し蹴りを放つ。

 それを片手で阻まれる。

 しかし、俺は止められた右足を支点にし回転。その勢いで踵落とし。

 が、それもバックステップで回避されてしまう。

 バックステップしながら弐村は、

「燃え盛れ、紅蓮の劫火」

 詠唱。さっきより強い炎が俺を襲う。

 なんとかそれを左に跳んで回避。

 一旦距離を取る。

 離れながら俺は心の中で毒づく。

 くそ! 弐村の奴、俺を殺す気か? 

 本来、こういった演習などの場合、相手を殺害しないよう使っていい魔法は最高、危険度Bランクまでと決められている。が、大体はみんな最高Cランクくらいしか使わない。Bランク以上なんてそれこそ警察や軍の人間、あるいは国家魔法士しか使わないのだ。

 今、弐村が使ったのはBランク普遍魔法『獄炎』の詠唱簡略。

 そんなもんくらったら普通に大怪我もんだぞ! なに考えてんだ!

 俺はありったけの不快感を乗せて睨む。

 しかしそんな俺に目もくれず、

「紅をまとえ、焔走ほむらばしり」

 さらに詠唱する弐村。

 瞬間、刀身が炎に包まれ、炎の刃になる。

 Dランク普遍魔法『焔走り』。

 対象物に炎を纏わせる魔法。しかも簡略だ。

 弐村は数歩で距離を詰め、横薙ぎに炎を纏った刀を振るってくる。

 それをしゃがんで避ける。頭上でゴウッ! という凄まじい風切り音。

 俺はしゃがんだ状態から勢いをつけて掌底を放つ。

 しかしそれは体を反らすことで避けられた。

 次の攻撃に移――ろうとするがやめ、後ろに回避。

 瞬間。

 さっきまで俺のいた位置に刀が突き刺さり、炎が迸る。

 あっぶねぇ……かわしてなかったら食らってたな。

 にしても、やっぱり体術だけじゃつらいな。仕方ない、『札』使うか。

 俺は『札』を使うことを決意すると、準備するために弐村から一気に距離を取った。




 片桐由美子side


 今、これから一年間私の生徒になる二人が実戦演習という名の決闘を行っている。

 戦っているのは、十貴族『弐村』家の次期当主、弐村・アルフレッドと今年から入る外部新入生の夏目なつめりょうだ。

 高校生にしては高度な戦いをしていて、それなりに見応えがある。

 二人とも接近戦主体らしい。

 弐村は主に刀と炎を合わせた戦法。

 夏目は完全な肉弾戦。

 ほとんど止まることなく動き続ける。かなりハイスピードだ。

 最初に騒いでいた生徒たちも今は二人の生徒の戦いに見入っている。それどころか幾人か違うクラスや学年の者もいる。まったく他にすることはないのか?

 私が呆れている間にも戦闘は続く。

 弐村の斬撃。それをかわし蹴りを放つ夏目。それを受け流し魔法を使う弐村。

 ひたすら攻撃し、かわし、また攻撃。

 どちらも決定打を与えられず、平行線のように戦闘が続く。

 私が少し飽きて始めていると、

「退屈してるみたいだねー」

 右側から誰かが声をかけてきた。

 私は前を向いたまま、右側の人物と話す。

「何しにきたんだ? 二年のお前が見て楽しいもんじゃないぞ?」

「それはお姉ちゃんが決めることじゃないよ。それに私だけじゃないよ」

「そうだな。でも詩織、生徒会長のお前がわざわざ見るものか?」

「だって弐村の次期当主が戦ってるって聞いたからねー。見たほうが良いんだよ。

 それに相手が良くんだからね」

「夏目のこと、知ってるのか?」

「昨日廊下で武彦くんが絡んだんだよー。そのときに名前聞いたんだよ」

「ふーん」

 テキトーに相槌を打つ。正直、どうでもいいしさ。

「……じゃあ、質問」

「なに?」

「二年……いや、生徒の中で最も強い生徒会長のお前から見てどうだ? 二人の戦いは」

「え? ……いい勝負だと思うよ? ただ……」

「ただ?」

「ただ、良くんが全部肉弾戦・・・・・っていうのが気になるかな」

「ふむ」

 確かに気になるな……。

 ちらっと夏目の方を見る。

 夏目は腰から何か取り出し、凄い速度で指を動かしていた。

 夏目……お前は何を隠している? ……。

 


 

 


 


 

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