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第37話:嵐(6)

遅くなりました。申し訳ありません。

 嬉しくないことに、二重弾幕の運転は容貌とマッチしてワイルドだった。自動車のほとんどが自動操縦となった現代で、ここまで危険な走り方をする車は他にないだろう。もしあったら日本の交通事故の量が世界一位になってしまうことが容易に予想できる。そんな走り方だ。

 現在、俺と二重弾幕は静歌のもとへ車を驀進させていた。

「おぅうえ。もっと丁寧に運転してくれ、二重弾幕……」

「おいおい吐くなよ。この車、高かったんだから。これくらい我慢しろ」

 朝の通学路を逆走し、国道をひた走る。途中にあった信号など、まるで存在しないかのように無視する。完全に暴走族だ。いや、速度が出てる分、暴走族よりタチが悪い。

 朱雀の隣町である夕凪町の中心部を猛スピードで走り抜ける。朝とはいえ、それなりに通行者がいるのにスピードをまったく緩めない。むしろどんどん加速していく。窓の外の景色が凄い勢いで流されていく。今も赤信号を無視した。やがて夕凪を抜けると、少し人通りがなくなった。ここぞとばかりにアクセルを踏む。

 荒い運転のせいで加速的に気分が悪くなる。吐き気が一気に押し寄せてきた。きつく目を閉じ、体を座席に預けることで、なんとか耐える。なおも胸の奥に不快感が溜まっていくが、それを出さないように口も強く閉じる。

 しばらくそうやって耐えていると、やがて吐き気の波が引いていった。だいぶ楽になる。目を開け、窓の外を見るもやっぱりとんでもない速さで景色が流されている。まだ胸で疼く不快感を耐えながら、ボーっと外を見ていると、ついさっきまで二重弾幕としていた会話が鮮明に浮かび上がってきた。


 ◆


「始めに言っておくが、あたしは今回の件にあまり深く突っ込めない。つまりペンテクスの救出はお前一人でやって欲しい」

 そう前置きして二重弾幕は話し始めた。

「今回の件、つまりは小規模宇宙爆発の誤作動爆発の件も含めた一連の騒動についてはどれくらい知っている?」

「そうだな……とりあえずは小規模宇宙爆発の計画データがクラッキングされていたことくらいかな」

 他にもいろいろ知っているが黙っておく。話すと長くなるし、なにより面倒くさくなりそうだからだ。愛歌とか切り裂きジャックとか。

 俺の答えに満足していないのか一瞬眉を顰めるも、二重弾幕は続ける。

「それだけか……じゃあ今回の件に米国アメリカが絡んでるのも知らないのか」

「ああ? 米国? 米国ってあの科学大国の?」

「そうだ」

「おいおいマジかよ」

 米国アメリカ。世界で唯一魔法の存在を否定している国だ。世界的に認められた魔法の行使の一切を禁止しており、その代わりどの国よりも科学技術が発達している。噂では魔法を使用した場合、どの州でも例外なく終身刑に処せられるという話だ。俺が住んでいた頃も魔法を使うのは御法度だったが、最近はもっと厳しくなったらしい。

 なるほど、確かにあの国なら関わっていてもおかしくない。

「朱雀が邪魔になったか」

「上層部はそう考えている。実際、朱雀ここと京都にある白虎びゃっこは日本魔法界の象徴と言ってもいいからな。ヤツらから見たら目の上のたんこぶだろう」

 二重弾幕は苦笑する。

「事実上、今回の騒動は米国対日本魔法界といったところだよ。まさかPSI候補生たちを利用してくるとは思わなかったけれど」

「なるほどね……んで、静歌は? なんで静歌は(・・・・・・)自分から(・・・・)捕まった(・・・・)んだ?」

「……なんのことだい」

「とぼけるなよ。悪いけどあの書置きが静歌自身のものじゃないっていうのはわかってんだよ」

「……」

 自分から捕まった。これは朝の書置きを見たときから考えていたことだ。というか、あの書置きは誰が見てもそう思うだろう。つまり問題点はそこじゃない。

 問題は『誰に』でも『どうやって』でもない。

 『なぜ』静歌は自ら捕まった?

 俺は押し黙った二重弾幕に畳み掛けるように言葉を浴びせる。

「お前が何を思ったか知らないけど、静歌は生き別れの姉に感傷して会いに来るほどまともなヤツじゃない。ましてや道を踏み外しそうな姉を助けてやるようなヤツでもねぇ」

 そもそも最初からおかしかったのだ。あいつがテロリスト潰しを手伝うなんて殊勝な真似をするわけがない。むしろ事態を悪化させて楽しむ。あいつはそういうヤツだ。

「ならなぜ手伝うなんて言ったんだ? 答えは簡単だ、お前が脅したんだ。手伝え、そうしなければお前を捕まえる、てな」

 静歌はWMOからAランクで極秘事項扱いされるようなヤツだ。そんなヤツが俺たちではなく、他のヤツらに捕まえられればどうなるかなんて目に見えてる。よくて終身刑、悪くて極刑、最悪実験動物のように体を弄くりまわされた挙げ句ぞうきんのようにあっさり捨てられる。そんなところだろう。

 だからこそ自分で放った刺客である静歌を見失うはずがない。おそらく魔法で監視しているのだろう。だから静歌の場所がわかると豪語したのだ。

「あとは全部お前のシナリオだ。俺と接触したのも、現在の状況も全部な。違うか?」

 俺の問いに二重弾幕は黙ったままだった。しかしその顔には笑みが浮かんでいる。その顔を見て、俺は自分があっていることを確信した。

お疲れさまでした。読んでくださりありがとうございました。


今回はちょっと雑かもしれなかったです。機会があればまた書き直そうかなと思っています。


ではまた次話で。

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