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第20話:New friend?(2)

 だが目を開け景色が見えた瞬間、瞬時に目を閉じた。

 とりあえず目を瞑ったまま深呼吸し、胸の奥でバカ騒ぎを起こしている心臓を落ちつけようとする。

 うん、なんかありえないもんが見えた。何アレ?

 もう一度深呼吸。落ちつけ落ちつけ。

 意を決してもう一度ゆっくりと目を開く。

 見えるのは若干赤みを帯びた空に、茜色の雲。そして顔。

 そう、顔だ。しかも女の子。黒のショートボブに涼しげな目元、ニヒルな笑みを浮かべた口。男装したらさぞかっこいいんだろうなと思わせるような美形の女性。そんな人が目の前にいた。

「おはよう、夏目。こんなとこで寝てると風邪ひくぞ」

「……何してんの」

「覗き込んでんの。てか、ほら、挨拶返そうか」

「……いろいろ納得できないけど、おはよう、朝倉さん」

 俺がぶすっとして返すと、よろしい、とニヒルに笑う朝倉さん。

 そう、確か落ち込んだ片桐先生を放置プレイして、自己紹介を済ませてしまったあの朝倉あさくら真帆まほさんだ。ほら、あの鬼畜どエスな感じの人だよ。

 まあ、それはいいや。百歩譲って顔を覗き込んでるのが朝倉さんなのはいい。いいけどな……。

 と、俺の苦々しい表情を見て朝倉さんが首をかしげた。

「どうしたんだ、夏目? まるで苦虫を噛み締めているみたいな顔だぞ」

「いやね、……かい」

「ん? ……貝がどうかしたのか?」

「だから! 顔が近いんだよ!」

 おもわず声を荒げる。

 この人、さっきから顔が近いんだよ!

「ははっ、夏目はシャイだなぁ。こんなの全然近いうちに入らな「入るよ! アンタにとって五センチは近くねぇのか!」

 うん、さっきから朝倉さんはめちゃくちゃ顔を近づけて俺を覗き込んでいるのだ。

 その距離約五センチ。顔を上げればその柔らかそうな唇とマウス・トゥー・マウスができる距離です。

 てか、よく見たらこの人俺に覆いかぶさってるよ! 周りから見たら絶対誤解招くぞ!

 自分のおかれた状況を理解し、俺は青ざめる。正直、こんなに焦ったのは何年も前を最後に一度もない。

「と、とりあえず退いてくれ! いろいろヤバいって!」

「ほう、ヤバい? ナニが? お姉さん、分からないな」

 そう言ってニヤリと笑う朝倉さん。どう見ても現状を楽しんでる。このどSが!

 俺が内心、朝倉さんにこのまま起きてキスして驚かしてやろうか、と不埒なことを考えていると、朝倉さんの後ろから天使の声が聞こえてきた。いや、実際にはそんなわけないんだけど、そんくらい綺麗で透き通った声なんだ。

「真帆、夏目さんも困ってますし、それくらいにしておいた方がいいですよ」

「うん、そうか? 夏目は嬉しそうだけど」

 嬉しくねえよ。

 と、違う声が降ってくる。

「はっ、誰がお前みたいな男女おとこおんなのこと意識するかよ、バーカ」

 今度も……たぶん女、だと、思う。なんか小学生くらいの女の子っぽく聞こえる。がそれに似合わない罵声。当然朝倉さんも反論する。

「ふん、男女? どっちが? 鏡を見てから出直してこい」

「な、なに言ってんだ? 意味分かんないし。意味分かんないし!」

「ほう、言っていいのか?」

「な、何を「中二の時……」すんませんでした! 自分、調子に乗ってました!」

 謝んの早いな、おい。

 ていうか俺に覆いかぶさったまま口論しないでくれ。いや、絶景だけどさ。

 と俺の思いが届いたのか、

「まぁ、弥生も言ってることだし退いてやるか。あとミオも」

「俺はおまけか! あとミオって呼ぶな!」

 口論しながらも退いてくれた。視界が開ける。

 体を起こしながらあたりを見ると、寝る前より紅く染まった風景が見えた。あとは三人の朱雀の生徒。

 一人はご存じ朝倉さん。あと二人は普通の女生徒と男装した小学生女子だ。

 うん、小学生女子だよ。絶対女子だよ! いくら高等部の男子の制服着てたとしても絶対女子だよ! アレンも中性的だけど、ここまでじゃねぇもん! あいつはまだ大丈夫だよ! こいつはアウトォォォォオオオ!

 とそんな感じに俺が動揺していると、

「なんだぁ? そんなに見つめんなよ。恥ずかしいじゃん。恥ずかしいじゃん!」

 何を勘違いしたのか、その小学生女しょうがくせいじょ……男子だんしは頬を染めた。その反応はない。

 というか誰だよ。

「というか誰だよ」

 あっ、また言っちゃった。

「誰だぁ~だと? 同じクラスじゃねえかよ、夏目ぇ」

「仕方ないよ。夏目君は弐村君と戦って一週間休んでたんだもん」

 と訝しげに見てくる男子。そしてそれを宥めてくれる美声の女子。

 にしても同じクラスなんだ。とりあえずそんな意味を視線に込めて朝倉さんを見る。

 それに気づいて苦笑しながら朝倉さんは対応してくれる。

「紹介がまだだったな。

 えーっと、こっちのおさげでおっとりしてるのが弥生、神田かんだ弥生やよいだ。でこっちのちっこくて女の子っぽいのがミオ、島木しまぎ三千緒みちお。二人ともあたしの幼馴染だ」

「女の子っぽいは余計だし。余計だし!」

「いや見た目完全に女の子だぞ?」

「んなわけねーじゃん! 見ろよ、この体中から溢れるダンディズムを!」

「……だんでぃずむ?」

「真帆のバカ――――!」

「あ、あの二人とも落ち着いてっ。夏目君も困ってるよぉ」 

 確かに困ってる。この部外者が入れない、身内特有の雰囲気に困ってる。

 ただなんとなくだけど、この三人が仲良いのがわかった。

 クールな笑みを浮かべ島木をからかっている朝倉さんに、おっとりしつつもなんとかケンカを止めようとあわあわしている神田さん。そしてその小さい身体(一五〇センチくらい)に収まりきらない元気を発している島木。

 うん、入りづれえ。実に入りづれ。てか入る気も起きねえ。

 俺はなんとなく視線を三人から外し、辺りを見渡す。目を開けた時と変わらず紅色に染まった世界。なんとなく夕暮れを感じさせ……夕暮れ!?

「お、おい! 今何時だ!?」

「ん? どうしたんだ、いきなり……うーん、今は四時半だぞ」

「よ……じ、はん、だと……?」

 俺が慌てて聞くと、朝倉さんが訝しげにしながらも答えてくれた。

 だってお前、俺がここに来たのが……十一時くらいだったよ、な……? まさか五時間近く寝てたのか……? 嘘だ。うそだああああああああああああああああ!

 俺はおもわず膝をつく。まわりが「どうしたんだ!?」「お姉さんに言ってみろ」「夏目君? 大丈夫ですか?」と言っているが気にならない。

 だって五時間、五時間だぞ? 休日に午後三時に起きたような気分になるぞ!? なんて残念なんだ!?

 俺は膝をついたまま歯を噛み締める。ちくしょう! ちっきしょうううううううううううう!

 そうして俺は項垂れたのだった。




 とそのあと、なんだかいってこいつらについていって(そのときもいろいろあった)今に至るのだった。

 なんとなく溜め息を吐いてから回想を終える。するとそれと同時に話題の三人が戻ってきたのだった。

 


 

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