幕間:Dream, old times, and event from it
夢。
そう、夢。
俺は今、夢の中にいるらしい。
何故分かるかって?
だって目の前に広がってるこの光景はあり得ないから。
西洋的な建築物が並ぶ道路の脇に小さなカフェテラスがある。
そこのオープンテラスの席のうちの一つに座り、『あの人』と俺は楽しそうに話してる。
とは言っても俺は無表情。あの頃はまだ感情表現が苦手だったんだっけ。
『お前さぁ、そればっか食うなよ。体に悪いぞ?』
『あの人』が、無表情で『それ』ばかり食べる昔の俺を見て苦笑する。
仕方ないじゃないか、好きなんだから。
にしてもどこか聞き取りづらい声だ。電話越しに声を聞いているような。
そんなことを思う俺を無視して、会話は進んでいく。
今度は昔の俺から口を開く。やはり聞きづらい声で。
『別に良いではないですか。好きなんですから』
うわ……同じこと言ってるよ。
『いや、だってさ、お前昨日からそれしか食べてないじゃん。腹減らないか?』
『減りません。だいたいいつも肉類ばかり食べる貴女に言われたくありません』
『ぐっ……それを言うか、こんにゃろぅ』
『いくらでも言ってあげますよ。貴女は本当に愚かですよ。肉食獣ですね、ははっ』
『お、お前、そりゃ言い過ぎだろうがよ! アタシを馬鹿にしてる痛い目に遭うぞ……!』
『そうですかー、肝に銘じておきますねー』
『……おい』
そう言ってジト目で昔の俺を睨む『あの人』。
昔の俺は下向いてひたすらフォークを動かしてる。
まぁ、怖いわけじゃなくて腹がすいてただけなんだけどな。
そんな風に俺が昔を思い出しながら二人を観察していると、言い争っていた二人が不意に動きを止めた。
そして二人とも同じ方向を見る。
『あの人』は真剣な目で、昔の俺は冷ややかな目で。
しばらくじっとしたあと、
『……行くぞ』
『了解』
突然席を立つ二人。
目線は動かさず、静かに移動し始める。
決して速くはないが、だからといって二人の歩みに躊躇いは見えない。
まるで最初から行く先が分かっているような足取りだ。
ていうか、これはたぶんアレだな。うんアレだよ、絶対。
俺の記憶が正しければ、確かこの辺で『あの人』が言うんだよ。
『神隠し――か』
やっぱり、な。
ということはやっぱりこれはあの事件の――
とそこで俺は突然衝撃を受け、夢の――いや、もう取り戻せない日々から目を覚ました。