第15話:Magic investigation
朱雀の魔法調査は三日間に亘って行われる。
理由としては、生徒の規模(小中高全校)、調査・検査の種類が多いなどが挙げられる。
つまり膨大な時間が掛かるというわけだ。
「ですから、効率良く回らなければ、後で呼び出されてしまうんですよ。先生方に」
だから頑張りましょうね、と言ってニコニコしている美夜。楽しそうだ。
「まぁ、でもそんなに大変じゃないから頑張ろう!」
とこれまたニコニコしてる秋奈。うん、いつも通り。
「普通にやれば?」
いつも通りの無表情。うん、凪さんです。
「でも夏目君は外部生だからね、分からないことがあったらいくらでも頼ってくれよ?」
歯をキラーンと光らせて微笑む新夜。爽やかだな、オイ。
「ちっ……庶民が……!」
睨むな弐村。不愉快だ。
そして、
「はぁ……憂鬱だ」
この後、厄介事が来るであろうことを予感し、多大な不安を抱えてる俺。
このカオスメンバー(正確に言えば、高等部一年花の五人組とおまけ一人)で魔法調査の検査巡りをするのだ。
つまり、
俺の目の前で五者五様の態度でたたずむ一年トップの五人に、分からないように『切り裂きジャック』――もといテロ組織を暴かなくてはいけない、ということなんだよな。
14 Magic investigation
そもそも何故魔法調査の最中に調べるかと言えば、これが一番のチャンスだからだ。
ここでまた一つ疑問が出る。
では何故チャンスなのか?
答えは簡単。『切り裂きジャック』は学校関係者、おそらく生徒…………かもしれないからだ。
えーっと、確信はしてるが確証はないって感じ、かな?
まぁ、確信の理由もいくつかあるが、流石にそこまで考える必要はないだろう。
だいぶ頭の中スッキリしたし。
……その頭の中をかき乱す原因が残ってれば、意味ないんだけどな。
俺は軽く嘆息してから、頭の中を乱す原因、もとい、周りの生徒から注目を集めまくる五人組を見る。
すげぇ。周りの視線をものともせずに話してるよあいつら。
「さて、どこに行きます?」
「うーん、秋奈は特性検査したいな」
「いいけど……珍しいね、秋奈が特性検査受けるの」
「むふふ、ちょっとね〜」
「……そういえば、少し使う魔法変えてたわね……」
「え? そうなの? 秋奈」
「うん! ちょっと強化系が上手く扱えるようになったんだ〜」
「へぇ、凄いじゃないか」
「あっ! 新夜兄さん…………とアルフレッドはどこか希望はありますか?」
「僕は……特にないよ」
「俺もねぇ」
「そうですか……じゃあ、良さんは?」
そっか、魔法の特性検査もあんのか……なんてことを考えてた俺は突然の(流れ的には当然か?)問いにびっくりする。
見ると、五人(一名は睨みつけてきたが)がこっちを注視していた。
慌てて答える俺。
「え!? ……どこでもいいぞ、俺は」
だって魔法使えないし。
「そうですか……じゃあ、秋奈の案の特性検査にいきましょう!」
そう元気にかつお淑やかに言って歩きだす美夜。
待ってよみーちゃんっ、と髪をなびかせ走る秋奈。
やれやれと首を振り、ゆっくり追いかける凪。
それを追う野郎三人。
ふー、やっぱカオスだな。
シンプルな外観にも関わらず見る者を驚嘆させる存在感。心弱きものは門を通ることすら許されぬであろう威圧感。壁に彫られ、今にも動き出しそうな印象を与える朱雀の秀麗さ。そしてそれらをうまくまとめあげ違和感を感じさせない安定感。
第二闘技場。
前回の弐村との対決の時にちらっと見ただけ(片桐先生が少ししか説明しなかった)の建物だが、間近で見ると凄い。なんか圧倒される。
俺が入学式のときのように硬直していると、
「……よく考えたら、高等部に進学する前に検査してるから意味ないかも……」
……そういうのはもっと早く思い出しなさい。
「まぁ、でも良さんに私たちを知ってもらう、いいきっかけかもしれません」
ボジティブですね、姐さん! ……あれ? 俺は今何を……。
俺が美夜のあまりの潔さよさ(?)に惚れていると、先に中に入ろうとしていた凪が冷たい言葉を浴びせてきた。
「何してるのかしら?」
「えっ!? ……いや、別に何も……すいません」
「謝るくらいなら早く来てくれないかしら?」
「はい……」
「なにピリピリしてるの〜? 凪らしくないよ?」
「……そうね。秋奈の言う通り。私らしくないわね……」
ごめんなさい。
そう言って身を翻す凪。
……なんかあったのか?
凪の様子に釈然としないものを感じながら、俺たちは第二闘技場の門をくぐった。
伍塔凪side
私らしくない、か……。
確かにその通りだ。私らしくない。
私は第二闘技場の門を潜りながら、後ろを歩く夏目良を軽く見る。
困惑したような顔。
それが『あのバカ』と重なり、なんとも言えない感覚を私に味わわせる。
ムカつく。イラつく。でも……。
「……ほんとっ、私らしくないわね」
まったくいつまで私は、『あの糞兄』のことを引き摺るのかしら……。
私は溜め息をつき、もう一度後ろを見てから闘技場の門をくぐった。