第1話:始まり
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魔法。
それは、過去に起こったと言われている第三次世界大戦のあとに、イギリスの一人の学者が発見したとされる空間干渉方法の総称だ。詳しいことは今だ不明。しかし、生物の中にあるオドとその他のモノが持つマナ、一般的な魔法はオドを主にして使うことだけは、はっきりと分かっているらしい。そんな不可思議な力である。
1 始まり
一人の少年を、もう一人の少年と少女が追いかけている。
先頭を走る少年は、あとを追いかけてくる自分の双子の弟と同い年だが義理の妹に声をかけた。
「大丈夫かぁ! 新夜に美夜!」
すると、
「そう思うなら、もう少しゆっくり走ってよ、良兄!」
「まってよ、お兄ちゃんー」
という弟の怒鳴り気味の声と少し苦しそうな妹の声が聞こえてきた。
その声に少年―――参崎良夜は苦笑いしながら、声を返す。
「ほら、もう少しで家に着くんだから頑張れ!」
「わかってる!」
「……」
やはり怒鳴り気味の弟と声も出せないほど疲れている妹の様子に、もう一度苦笑いしてから、良夜は見えてきた家に走って行った。
ドンドン!
「うわっ!」
俺は突然響いてきた音にびっくりして、あわてて跳び起きた。
周りを見渡す。どうやら自分の部屋みたいだ。てことは、さっきのは昔の夢か……。
俺は昔のことを思い出し、軽く憂鬱になりながらも、自分が起きる原因となったドア、正確には、その向こうの人間に声をかけた。
「……ノックくらい静かにできないのか? 楓……」
「わざわざ起こしてやったんだから、感謝しなさいよ。だいたい、それが嫌なら部屋にカギなんか掛けるんじゃないわよ! 良夜のくせに生意気よ!」
「なんだ、その無茶苦茶な論理は? それに、掛けなきゃお前がイタズラするだろうが」
「そ、それは……」
「わかったらこの話題終了! で、なんの用だ?」
そんなやりとりをしながら、俺はベットから降りて、ドアを開ける。すると、俺より頭一つ分くらい小さい少女が不機嫌そうに立っていた。普段は、セミロングの赤い髪と猫のような大きな目を輝かせながら笑っているのが印象的な美少女が、今は、君は視線で人を殺せるんじゃないか? と言われそうなくらい鋭く俺を睨んでいる。俺なんかしたか?
「用がなくちゃ来ちゃいけないの?」
「そういうわけじゃ……」
だからどうして、そんなに俺を睨む? 変なこと言ったか?
「ふん! まあ、いいわ……お父さんが呼んでる」
「結局用事じゃん!」
「あぁ?」
「すいません!」
急いで謝ると、楓は少しこちらを睨んだあと、ふんっ! と、そっぽを向いた。怖ぇ。
てか、今なんて言った?
「てか、今なんて言った?」
あ、口にしちまった。
「だから、お父さんが呼んでるって……聞いてなかったのかしら?」
「聞いてました! す、少し聞きづらかっただけです!」
「ほんとかしら……?」
本当ですから、その振り上げた拳をしまって下さい。にしても、爺からか……何の用だ?
「はぁ……とりあえず行ってみるか」
「さっさと行ってきなさい」
と俺は溜息を吐きながらお父さんこと、爺の部屋に向かって行った。
団長室、と書かれたドアを開けると、一人の爺さんがこちらを見ていた。
「何か御用でしょうか、団長」
一応は団長、それに団長室なので敬語で話す。すると、
「やれやれ、堅苦しいのう」
とダメな息子に接するような父親のような感じで呆れやがった。お前が、こんなところに呼ぶからだろうが!
そこまで言うなら、普段どおりやってやる。
「なんの用だ、爺?」
「ほほ、そうでなくてはの」
俺の質問を完全に無視し、爺は楽しそうに笑う。人の質問を無視しといて、笑ってるとは、いい度胸だなこのヤロー!
「さて、では話そうかの」
俺が激しく睨みつけると、ようやく話し始めた。
しかし、それは、俺の予想もつかない言葉だった。
「お主には朱雀エルフィード学院に行ってもらう」
……はぁ?