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第四日『波乱』

参加者一覧

穴吹あなぶき 和歌恵わかえ

稲崎いなざき 太一たいち【死亡(初日夜)】

かがみ 桜花おうか

川淵かわぶち すすむ

小石川こいしがわ 未来みく

軸丸じくまる 夏希なつき

島野しまの れい【死亡(初日夜)】

高浦たかうら 大祐だいすけ

三溝みみぞ りん【死亡(2日目夕処刑)】

湯村ゆむら 哲西てっせい【死亡(3日目夕処刑)】

鷲頭わしず 朗真ろうま

瀬上せがみ さき

宮田みやた りょう(主人公、祈祷師)


役職一覧(人狼サイド―勝利条件は村人サイドの全滅)

人狼(3人)―毎夜同室相手の一人を襲うことができる。襲われた相手は死ぬ。パスは一回のみ。人狼同士は誰が人狼か把握しており、また常に念波によってお互い意思疎通が可能。

狂人(3人)―夜中自殺を行うことで同室相手に疑いをかけることができる


役職一覧(村人サイド―勝利条件は人狼の全滅)

祈祷師(1人)―2日目以降人狼に襲われた場合、聖水で反撃することにより人狼を殺せる。1回限り有効

牧師(2人)―人狼に襲われた場合、お守りを使って防御することができる。1人1回限り

村人(4人)―能力はなし


時間経過について

昼(議論タイム)→夕方(投票タイム。公開投票。1番票を集めた人を処刑)

→夜(ゲームマスターがランダムに選んだ人が夜一緒に過ごす同室相手を選択できる。奇数人数の場合のみ最後の部屋は3人。能力の行使は基本ここのみ)


3日目までの動向(前回の後書きと同じです)


初日 夜

1「稲崎【死亡】―湯村」 2「小石川―宮田(主人公)」

3「鷲頭―瀬川」 4「高浦―鏡」

5「三溝―島野【死亡】」 6「軸丸―川淵―穴吹」


2日目 昼

湯村「村人CO(=カミングアウト、宣言のこと)」

三溝「村人CO→祈祷師CO→村人CO」


「三溝」(七票)【死亡】……穴吹、軸丸、瀬川、高浦、宮田、湯村、鷲頭

「湯村」(四票)    ……鏡、川淵、小石川、三溝


1「穴吹―小石川」 2「鷲頭―鏡」

3「高浦―瀬川」 4「宮田―軸丸」 5「湯村―川淵」


3日目昼

川淵「牧師CO。湯村防御宣言」

湯村「川淵は嘘を言っている」


「湯村」(八票)【死亡】……穴吹、鏡、川淵、小石川、軸丸、瀬川、高浦、宮田

「川淵」(二票)    ……湯村、鷲頭


1「宮田―瀬川」 2「軸丸―高浦」

3「鏡―穴吹」 4「小石川―川淵―鷲頭」



 テーブルに並んだ豪華な食事の数々。その内の一皿を手に取り、ゆっくりと味わいながら食べた。


 毎日食べていた、懐かしい味。素朴で、体中に染み渡るような美味しさ。あぁ、これが咲の料理だ。


――ねぇ、こんなことわたしが言えた事じゃないけど、多分これがわたしたちにとって最後の夜になると思う。だからせめて、わたしのワガママだけど夜が明けるまでは一緒に居てほしい。


 咲のそんな最後のお願いを、オレは二つ返事で了承した。今は二人で晩御飯を食べている。と、言っても咲は普通の食事では腹が膨れないらしい。しかし、形だけでも食べることはできるらしいので、こうして仲よさそうに食事を取っている。話していることは他愛もないこと。けれど、そんな話の合間に度々訪れる無言の間。これが、二人の考えを悲しいくらいに汲み取っていて、その度に涙が出そうになる。


 ご飯を食べ終わった後は日常生活のような、毎日していたような些細なことをして、過ごした。それが何よりも幸せだったんだと、気付いたから。


 そして、最後に、咲が切り出した。


「ね、一緒に寝よ……?」


「ああ、分かった」


 本当の最後の時間。オレもそろそろ腹をくくる時が来たようだ。


 ――このポケットの中の聖水を使うべきか、どうか。


 布団の中で一緒にうずくまる。……もう夜明けは近い。


「ねぇ……頭なでなでして……」


「うん……」


 いつもどおりの安心しきった咲の顔、その顔に涙が流れていたことをオレは絶対に一生忘れないだろう。


 咲にオレがいるから安心しろと、力になってやるからとあんなに息巻いていたのに、結局はこのざまだ。オレには咲を救えない。できることはこの聖水で楽にしてやることだけ。


「涼くん……ごめん……もう限界が来たみたい……」


「そうか……」


 なあ黒幕よ。どうせ見てるんだろう。咲をこんな風にして嘲笑あざわらっているんだろ。くそったれ。オレは絶対にお前を許さない。ここから抜け出したら地獄の底まで追いつめてやる


「本当に……ごめんね……」


 オレはそっと布団から出て、ポケットの中で聖水を握り締める。謝るのはオレの方だ……咲……ごめん……。



   *


 

「……くん。宮田くん!」


 意識が急に戻る。


「宮田くん、さっきから上の空でしたが、せめて質問には答えてください」


 ここは……?


 周りを見ると噴水と数人の人間が居た。ああ、そっか。ここは広場か。


「それで宮田くん、あなたの役職は何なのでしょうか」


 役職……その言葉を聞き思考が戻った。そうか、今はいつの間にか昼か。


「……オレは祈祷師です。咲は反撃しました……」


 眩暈がする……あぁ、やはり咲はいない……そうだ、咲は死んだんだ……オレが……オレが殺した。


 ならせめて、咲の分まで生きてやらないと、咲に合わせる顔がなくなってしまう。


 周りを確認する。今いるメンバーは、高浦さん、鏡さん、穴吹さん、小石川さん、川淵さん、そしてオレのたった六人。どうやら、咲以外にも軸丸さんと鷲頭さんが死んでしまったようだ。鷲頭さんが死んでいる……咲を失い、そして唯一の知り合いとなっていた鷲頭さんまでもが……


 いや、鷲頭さんだけでない。軸丸さんも昨日の夜に話しあった仲だったというのに。


 違う。今は悲しみに暮れている暇なんてないんだ。考えろ、これを生き延びる術を。それが今できる最大の罪滅ぼしなのだから。


 咲と、軸丸さんと鷲頭さんが死んだことにより、現在の容疑者はオレと高浦さんと小石川さんと川淵さん。


 容疑者じゃない方が鏡さんと穴吹さんで少ないのか……


「次は僕ですね、僕は牧師なんですが、アレ、鏡ちゃん何かあるんですか? ではどうぞ?」


 高浦さんの発言を遮るような形で、鏡さんが手を挙げていた。何か言うみたいだ。


「――宮田、違う、()()()()()……」


 なるほど、ここに来て祈祷師の対抗ときたか。感情は未だぐちゃぐちゃだが、頭はいつもより働いている。


 オレ視点では鏡さんが人狼はロジック的に有り得ず狂人が確定したわけだ。鏡さんが人狼だとするなら、パスを消費していたと仮定しても、一日目から三日目の間二日間は人狼と相部屋でなくてはならないが、人狼は三人で咲と鏡と誰かと考えても、鏡は一度も同じ人と同室になっておらず、また咲とも同室になっていない為、牧師が防御したのにそれを言っていない限り鏡さんは人狼ではない。


 また牧師が防御したのにそれを発言しないのはメリットがなく、また鏡が村人だとしても嘘をつくメリットがないので鏡は村人でもなく、理論上狂人しか有り得ない。


 しかし、鏡が狂人だと言うのはおろか人狼サイドであるかどうかはオレ以外の村人サイドでは分かっていない人の方が多い上に、人狼は咲が死んだことで、俺オレが祈祷師ということがバレている為、自動的に鏡の狂人も確定し、情報のアドバンテージを与えてしまった。


 鏡視点での考えだが、俺が人狼で祈祷師を騙っていた場合がある。が、その場合、真なる祈祷師が異を挟むはずだが、それがないということは、初日の夜に死亡した稲崎もしくは島野が祈祷師ということになる。

 更に俺は二日目まで同室相手の死者を出していないので、初日か二日目に人狼同士の相部屋があったということになり、その情報を鑑みると人狼は俺、小石川と湯村か三溝で確定し、現時点で、人狼が二人、狂人が鏡自身含め一人以上いる上、祈祷師が死んでいるので勝率が非常に高いままゲームを進行できる。なるほど言いたくないが狂人としては確かに悪くない手だ。むしろ最善手とも言えるかもしれない。しかし、この情報群を彼女はあの一瞬で計算し、発言したのか……オレが言うのもなんだが、本当に見た目通りの年齢なのだろうか……


「なるほど、それは重要な情報ですね。とりあえずそれは後で言及できる話題として、僕が役職を言う番でしたね。僕は牧師です。もちろんまだ誰も防御していません。相手には自殺されてしまいました」


 高浦さんが話に入る。祈祷師の話を流してくれたのは少しだけありがたい。


「次は私か」


 そういって小石川さんが立ち上がり――


「私は――()()()


 ――とんでもないカミングアウトをした。


 驚いたのはオレだけじゃない。ここにいる小石川さんを除く全員が驚いていた。それもそのはずだ。夜の二人きりの状態で狂人と言ってもその真偽が不確かなため、特に問題はないが、皆が聞いている場で狂人だと宣言したら、処刑されてしまうはず……


 いや、そうか……オレとしたことが全く気付かなかった。この狂人の宣言には――ほぼリスクが存在しなかった。


 ゲームが続行しているということは少なくとも狼は一人存在する。そして、オレと鏡の祈祷師宣言。これはどちらかが嘘をついていることは誰から見ても分かるとおりで、村人サイドに嘘をつくメリットは少なく、どちらかが人狼サイドであることはほぼ明らかだ。そしてあの何でもお見通しというような小石川さんならその先の視点である俺と鏡のどちらも人狼は有り得ず、どちらかは確実に狂人である。ということも見抜いているだろう。


 自身を除いた五人中人狼一人と狂人一人がいるこの状況下での狂人のカミングアウトはうまくいけば、このままゲームエンドまで持っていける力がある。なぜなら、人狼サイドが三人だとすると、村人サイドも三人となる。人狼がそれに気付き、投票先を指定しまうと、どう足掻いても三対三の同数となり、決選投票も同数で処刑は流れる。その後の夜で人狼がゆっくりと確実に村人サイドを襲っていけば、そのまま人狼の勝ちとなってしまう。


 つまり、この状況を悪用されてしまえば、少し厄介なことになってしまう。


「うーん……確かに狂人の宣言は怪しいですが、怪しすぎて何か裏があると勘ぐってしまいますよね。二日連続で容疑者である川淵さんも怪しいですからね」


 そう、高浦が呟いた。


 それに対し、川淵さんが反論した。


「いやいや、狂人って言ってるようなやつだぞ!? 処刑しても問題ないとは思わないか?」


「はい、確かにそう思います。しかし、祈祷師も二人宣言していますし、やはりここは各々投票でいいんじゃないでしょうか」


 その川淵さんの反論を高浦さんがうまくまとめた。


 幸いだったのは、小石川さんの狂人宣言を誰も悪用しなかった点だ。川淵さんも昨日の防御済み牧師の意見は変えなかった。そろそろ昼も終わるだろう。



 ――さて「昼」が終わり「夕方」に移ります。日が暮れるまでに投票を終わらせますように――



 高浦さんの言うとおり、まだハッキリしないこの状況では各自で各自の視点から投票するほうがいいだろう。そうして、全員投票をし終えた。しかし、俺は理解してた。この投票の結果がこのゲームの行く末を決めるということを。



 ――これで皆さんの投票が終了しました。では、投票結果を発表します。


 「川淵」(三票)……穴吹、鏡、高浦

 「高浦」(二票)……小石川、宮田

 「小石川」(一票)……川淵


 よって今回処刑となるのは川淵さんです。それでは川淵さん、最後に遺言として、言いたいことがあれば三分以内にどうぞ。その後は一人で南の出口へと向かってください――


 今日の処刑者は川淵さんだった。彼も2日連続で容疑者になったのが決め手だろうか。


「…………いやもう何も話すことなんてねーわ。とりあえず俺は牧師だから」


 それだけ言い残して、川淵さんは「あの二人みたいに頭押さえながら行くのもアレだしな」とボソッと呟いてトボトボと出口へと歩いていった。



 ――さて「夜」になりました。それでは、鏡さん、誰と同室するか決めてください――



「……宮田……」


「オレか」 



 ――では鏡さんと宮田さんは「1」の家に入ってもらいます。そして残った高浦さん、小石川さん、穴吹さんは「2」の家に入ってもらいます。それでは皆さんそれぞれの家へお入りください――



 人数が減ったせいか、部屋割りもとても簡単なものになってしまった。しかし、まだまだゲームは続いている。川淵さんも処刑されてしまった。


 しかし、オレは表情が顔に出ないよう意識しながら「1」の家に入っていった。



 ――それでは、今から「夜」を開始します。――



 しかし、もうこの夜に語るべきことはない。鏡は狂人でほぼ確定しているし、鏡も俺が人狼だろうが祈祷師だろうがもはやゲームの大勢に影響はない。台所にあった簡易食だけをボリボリとかじり、オレはそのまま床に就いた。



 朝起きて広場に向かうと、穴吹さんの姿がなかった……



4日目までの動向


初日 夜

1「稲崎【死亡】―湯村」 2「小石川―宮田(主人公)」

3「鷲頭―瀬川」 4「高浦―鏡」

5「三溝―島野【死亡】」 6「軸丸―川淵―穴吹」


2日目 昼

湯村「村人CO(=カミングアウト、宣言のこと)」

三溝「村人CO→祈祷師CO→村人CO」


「三溝」(七票)【死亡】……穴吹、軸丸、瀬川、高浦、宮田、湯村、鷲頭

「湯村」(四票)    ……鏡、川淵、小石川、三溝


1「穴吹―小石川」 2「鷲頭―鏡」

3「高浦―瀬川」 4「宮田―軸丸」 5「湯村―川淵」


3日目 昼

川淵「牧師CO。湯村防御宣言」

湯村「川淵は嘘を言っている」


「湯村」(八票)【死亡】……穴吹、鏡、川淵、小石川、軸丸、瀬川、高浦、宮田

「川淵」(二票)    ……湯村、鷲頭


1「宮田―瀬川【死亡】」 2「軸丸【死亡】―高浦」

3「鏡―穴吹」 4「小石川―川淵―鷲頭【死亡】」


4日目昼

宮田「祈祷師CO」→鏡「対抗祈祷師CO」

高浦「未防御牧師CO」

川淵「牧師CO変わらず」

小石川「狂人CO」


「川淵」(三票)【死亡】……穴吹、鏡、高浦

「高浦」(二票)    ……小石川、宮田

「小石川」(一票)   ……川淵


1「鏡―宮田」 2「高浦―小石川―穴吹」



ここまで読んでいただき誠にありがとうございます。


この物語で使われているルールはとあるMMORPG内で実際に行われていた人狼ゲームのルールを基にしています。


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