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第二日『動き出す』

初日、夜の部屋割り情報。最後の部屋以外指名した人を先頭に持ってきています。

1「稲崎いなざき湯村ゆむら」 2「小石川こいしがわ宮田みやた(主人公)」

3「鷲頭わしず瀬川せがわ」 4「高浦たかうらかがみ

5「三溝みみぞ島野しまの」 6「軸丸じくまる川淵かわぶち穴吹あなぶき


役職一覧(人狼サイド―勝利条件は村人サイドの全滅)

人狼(3人)―毎夜同室相手の一人を襲うことができる。襲われた相手は死ぬ。パスは一回のみ。人狼同士は誰が人狼か把握しており、また常に念波によってお互い意思疎通が可能。

狂人(3人)―夜中自殺を行うことで同室相手に疑いをかけることができる


役職一覧(村人サイド―勝利条件は人狼の全滅)

祈祷師(1人)―2日目以降人狼に襲われた場合、聖水で反撃することにより人狼を殺せる。1回限り有効

牧師(2人)―人狼に襲われた場合、お守りを使って防御することができる。1人1回限り

村人(4人)―能力はなし


時間経過について

昼(議論タイム)→夕方(投票タイム。公開投票。1番票を集めた人を処刑)

→夜(ゲームマスターがランダムに選んだ人が夜一緒に過ごす同室相手を選択できる。奇数人数の場合のみ最後の部屋は3人。能力の行使は基本ここのみ)


 ――おはようございます。朝になりました。各自家の外へ出てください。またこれ以降、次の「夜」まで人狼の意思疎通以外の能力の行使を禁止します――



 ハッキリ言って、最悪の目覚めだった。何度聞いても慣れることのない頭で響くような声。これを目覚ましにされたのだからたまったものじゃなかった。


 しかし、何はともあれ生き延びることが出来た。正直自分のことでいっぱいいっぱいだったが咲はどうだったのだろうか……オレは不安を胸にすばやく着替えて、外へと出た。


 どうやら大半の人が既に外で集まっていたようだった。えーっと、ひーふーみー……今は十一人か。と、数え終わった瞬間、またあの声が聞こえた。



――これで全員揃いましたね。それでは皆さん、昨日の広場へと向かってください――


 ……予想はしていたがやはり少し堪えるな……いなくなったのは二人、稲崎さんと島野さんか……とりあえずこの話はきっと「昼」で議論されるだろう。今は広場へと向かうとしよう。それと、一体いつ入れられたのか全く分からないが、ズボンのポケットに聖水と思しきものが入っていた。次の夜からは襲われそうになればこれを投げればいいのだろうか……



 ――残念ながら稲崎さんと島野さんの二人が死亡しました。しかし、未だ人狼は潜んでいます。では、今から「昼」を開始します――



 「昼」が始まって、真っ先に声を上げたのは高浦さんだった。


「稲崎さんと島野さん。残念でした……。しかしこのゲームで勝利すれば彼らが村人サイドだった場合、生き返らせることが可能とのことです。今は悔やむよりも人狼探しに尽力を注ぎましょう。

 そこでまずは、稲崎さんとの相手だった湯村さん、島野さんとの相手だった三溝さん。彼らに話を伺いましょう。後、もし、他の部屋で牧師の防御等が行われていたのであれば、おっしゃってください」


 高浦さんの発言に対し、誰も何も言わないので、次はオレが声を上げた。


「じゃあ、三溝さん、あなたの役職は何ですか?」


 議論の主導権を握りすぎると人狼と疑われそうではあるが、あのままいくと高浦さんだけで進行してしまいそうな雰囲気だった。あまり一人に進行をゆだねるのは出来る限り阻止しておいたほうがいいだろう。


「えっ、わたし、人狼じゃないです! 家に入ってちょっと目を離したらいつの間にか死んでて……わたしもうわけが分からなくなって……」


 役職を聞いたのだが、まあ確かに相手が死んでしまうと取り乱すのもあるいは仕方ないのかもしれない。オレもよくよく考えたら平静を保てる自信がない。


「つまり、相手は自殺したと言うわけですね。ではあなたは何の役職なんでしょうか」


 しかし、三溝さんも人狼の可能性がある限り、同情をしている暇がないのは事実だ。


「わたし……ただの村人です」


「そうですか、なら湯村さんの役職は何でしょうか」


 オレに出来ることは淡々と進行させること。今日の夕方には処刑投票が行われる……考える材料はあればあるほどいい。


「俺も村人だよ。いきなり自殺されて、いや参ったね」


 この発言に対し、川淵さんが声を荒げた。


「お前、稲崎のツレだったろ。どうしてそんなあっけらかんに自殺されたとか言えるんだよ……!」


「川淵さん、よく考えてくれ。裏切られたのは俺の方だ。あいつだって自殺すれば俺が疑われることは分かっていただろう。それを承知で自殺されたんだ。本当に怒りたいのは俺の方なんだよ。そこを勘違いしないでくれ」


「ふん、どうだか。本当はお前が人狼で稲崎をやっちまったんじゃないのか?」


「川淵さん!」


 もっと早く止めておくべきだった。


「川淵さん、その発言に意味はありません。議論が進まなくなるだけなので出来る限りそのような発言は控えてもらえませんか」


 例え仮に湯村さんが人狼だとしても、湯村さんはそれを絶対言わないだろうし、人狼でなければ二人の溝を深めてしまうだけの結果となってしまう。


「チッ……餓鬼が……」


 その川淵さんの発言で、これは終止符を打たれた。


 オレはどれだけ罵られても構わない。元々顔見知りでもなかったわけで、深まる溝なんて存在しない。


「宮田くん、ありがとう。他に彼らに何か聞きたい人はいますか?」


 そして、また高浦さんが進行を勤めた。まあ、オレが聞きたかったのは役職だけだから、後は高浦さんに任せよう。


「どうやら、誰もないみたいですね。では、皆さんも考える時間が必要だと思いますので、とりあえずいったんここで議論は休憩でいいですかね。また、聞きたいことがあれば各自で言ってください」


 そうして、また皆無言になった。オレはと言うと咲の隣へと行っていた。


「咲、大丈夫か。怖いとは思うがオレがついてるから安心しろ」


 本当のところ、オレがついていても何かできるわけではない。でも、今はこう言うしかない。早くなんとかして、二人でこのゲームから抜け出せればいいのだが……


「……うん、大丈夫。ありがと」


「良かった……何かあれば言ってくれよ。できるだけ力になる」


 これ以上おびえている咲は見たくないんだ。そう思い、咲の頭をなでる。怖がっている咲にこれをすると、すぐに安心しきった顔になることを知っていたから。


「……本当……?」


「ああ、約束するよ」


 そう言い終わったとき、今度は別の方向から声がした。


「おい、餓鬼ども! 何をコソコソ話してるんだ! お前ら本当は人狼じゃないのか!?」


 ……川淵さんめ……オレは急いで反論しようとすると、


「川淵さん、子どもたちまで疑うなんてどうかしてます。それに人狼同士は、念波により、喋らなくても意思疎通が出来ると書いてあったじゃないですか。人狼同士がコソコソ話をする必要なんてありません」


 高浦さんがオレに代わって反論してくれた。


 しかし、川淵さんはそれで納得するわけもなかった。


「ふん、狂人と人狼かもしれないだろ。それだったら念波かなにかしらねえが、意思疎通は図れないわけだしな」


「宮田くんと瀬川ちゃんがこれ以前に二人で会話をしていたことはありません。このゲームは他者の役職は分からないと言うルールです。仮に二人がそうだとしても、お互いにお互いの役職が分かるきっかけとなったことは一度もないですよね」


「けど、二人だけでコソコソ話でもされたら怪しくて仕方がないんだよ!」


「川淵さん、彼らはまだ子どもです。今回の件は大目に見てください。宮田くん、瀬川ちゃん、ごめんだけど、これから二人で会話するときは誰か他の人にも聞こえる状況で喋ってください」


 それで一応納得はしたのか川淵さんは身を引いた。


 しかし、今回の件で怪しいと思う状況を作ってしまったのは確かにオレの責任だ。咲には悪いがこれが最善なのだろう。


「はい、ごめんなさい」


 形だけきちんと謝っておいて、この話はこれで終わった。咲が何か言おうとしていたような気がするが、この状況だと夜で相部屋にならない限り、それを聞くのは難しいな。


 そうして各自、シンキングタイムに入っている中、今度は三溝さんが質問をした。


「あの、今日の夕方の投票、皆さんはどうされるんですか……?」


「それは、悪いがキミか湯村さんの二択ということになるだろうねえ」


 そう答えたのは鷲頭さんだった。確かに今回だと三溝さんが湯村さんの二択になるだろう。


 しかし、その答えに不満があったのか、三溝さんはさらに皆に話しかけた。


「おかしいです。わたしは村人で相手に自殺されただけなんですよ? それなのに……他にもっと選択肢はあるんじゃないですか……?」


「おかしくなんてないよ。仮にキミが本当にただの村人だったとしたら結果として村人と狂人の一対一交換になる。それだとしても村人サイドにとっては、悪い選択肢ではないんだ。それにこれを言ったら宮田くんに怒られるかもしれないけど、キミが人狼で嘘をついている可能性は大いにある。

 そして、他の選択肢だが、特に怪しくもない人を投票の対象に選ぶのはリスクが高すぎる。この場合怪しいのはキミと湯村さんだけだからね」


 全く持ってそのとおりだ。鷲頭さんの反論には疑問の余地を挟む余裕さえないほど正論だった。

 だが、それを聞いた三溝さんがとんでもない発言をした。


「……わたし祈祷師なのでわたしに投票しないでください」


 その言葉を聞いた俺は反射的に

「バッ……」

 カやろう…… と言おうとした瞬間――


「バカやろう!!」


 オレよりも早く鷲頭さんがキレていた。


「いいか、よく聞け。キミが仮に本当に祈祷師だとする。そうするとどうだ? 確かに村人サイドはお前に投票しなくなるかもしれないが、人狼はお前を警戒して襲わなくなるし、どうにかして投票でお前を処刑しようとする。つまり村人サイドのエースが封じられたまま終わってしまう可能性がでかくなる。

 そしてキミがもし村人で、死にたくないから祈祷師だと嘘をついたのならすぐに取り消せ。村人はできる限り嘘をつかないほうがいい。村人側で混乱をおこすだけだからな。さらにもう一つ言っておくと、このゲーム、村人は知恵で人狼を追い詰めろと書いてあったな。あれは、全部がそうだと言わないが、はっきり言えば嘘だ。村人は「死ぬ」事が重要なんだよ。例えば、夜、人狼に襲われて死んでしまったとしても、その襲った人狼に疑いをかけられることができるし、投票で死んでしまっても、牧師や祈祷師を処刑から守れるかもしれない。分かるか? 村人サイドが勝てば結果的に生き返ることが出来る。なら、村人はより意味ある「死」を迎えることが大事なんだ。まぁ、ワシからのアドバイスとしては、どっちにしても祈祷師発言は取り消せってことぐらいだ」


「……すみません、ただの村人です……」


 三溝さんもこのゲームの肝が理解できたのかおとなしく従ってくれたらしい。


 ……しかし、ここまで的確に発言できるということは鷲頭さんは村人サイドと考えてもいいのだろうか。できれば、そうであってほしいが……。


 そして、ここでまたあの声が聞こえた。



 ――さて「昼」が終わり「夕方」に移ります。これより「夜」開始まで「遺言」を除き一切の発言を禁じます。皆さんここより西の出口付近にある投票所へと向かい、投票してください。また、日が暮れ終わるまでは時間がありますので、悩みたい方はそれまで自由に悩んでください。なお、投票の結果最多が同数だった場合、その者たちで各自弁論を行っていただき、その後、最多だった者以外で最多だった者を対象に決選投票を行います。そこでまた同数だった場合は、その日の処刑をなしとします。

 また、投票は公開投票です。誰が誰に投票したかがわかりますので、そこも含めてお考え下さい――



 オレの投票先は既に決まってある。悩んでも結果は変わらないだろうから、さっさと西の投票所へと向かった。


 他の人は悩んだり、オレと同じようにさっさと投票に行ったりバラバラだった。結局全員が投票し終わったのは日が暮れかかる寸前だった。



 ――これで皆さんの投票が終了しました。では、投票結果を発表します。


 「三溝」(七票)……穴吹、軸丸、瀬川、高浦、宮田、湯村、鷲頭


 「湯村」(四票)……鏡、川淵、小石川、三溝


 よって今回処刑となるのは三溝さんです。それでは三溝さん、最後に遺言として、言いたいことがあれば三分以内にどうぞ。その後は一人で南の出口へと向かってください――



「え、え、わたし……死にたくない。いや……わたし村人なのに……なんで、なんで……お願い、絶対生き返らせて……」


 そういって、三溝さんは泣き崩れてしまった。


 祈祷師発言を取り消したとはいえ、やはり、祈祷師のオレからすれば怪しいのには間違いなかった。三溝さんには悪いが、村人サイドだったとしたら生き返らせるから待っててくれ。


 結局、三溝さんはその後、何もしゃべらず三分が経った。最初は南の出口に向かうのを躊躇っていたが、急に頭を押さえだし、女性とは思えない悲痛な悲鳴をあげながら出口へと向かっていった。


 みんな顔を伏せ押し黙っている。もちろん喋る権利がないというのもあるが、自分たちの投票によって人が死に向かうのはいい気分ではないのだろう。もちろんオレだってそうだ。


 しかし、黙っていてもこの最悪なゲームは続いていく。悲しみに暮れる暇もなく、あの声が響いてくる。



 ――さて「夜」になりました。昨日言ったとおり、既に同室となった方は選べません。但し、もし生きている方全員と同室になっていた場合、同室情報はリセットされ、自由に同室の相手を選べるようになります。

 それでは、最初に穴吹さん、誰と同室するかを決めてください――



「……じゃあ小石川さんで」



 ―― では穴吹さんと小石川さんは「1」の家に入ってもらいます。続いて鷲頭さん、誰と同室するかを決めてください。



「ん……桜花ちゃん。ワシとお願いできるかな」


  ――では鷲頭さんと鏡さんは「2」の家に入ってもらいます。続いて高浦さん、誰と同室するかを決めてください――



「えーっと、瀬川さんで」


 ……また咲と一緒になれる機会を失ったか……



 ――では高浦さんと瀬川さんは「3」の家に入ってもらいます。続いて宮田さん、誰と同室するかを決めてください――



 ここに来て初めての指名権獲得か。残っているのは、軸丸さんと湯村さんと川淵さんか……まだ情報も少なく湯村さんが人狼だとしてもパス権は残っている。この状況では誰を選ぶべきかは特に決まらないな。


「軸丸さんで」



 ――では宮田さんと軸丸さんは「4」の家に入ってもらいます。そして残った湯村さん、川淵さんは「5」の家に入ってもらいます。では皆さん昨日と同じように東の出口付近のそれぞれの家へお入りください――



 今日に関しては考えていることは特にない。軸丸さんがもし人狼なら返り討ちにするまでだし、もし違うのなら、またこのゲームを終わらせるための道筋を考え続けよう。



 ――それでは今から「夜」を開始します――

 


 そうして、二回目の夜が始まった。



   *



 うん、なんと言うか喋ってみたけど軸丸さんは普通に良い人で、特に気にすべき点もないぐらい普通だった。一応お互い村人だと言うことで話は進んでいる。まぁ俺も祈祷師だけど村人と言ってるし、軸丸さんが本当に村人かどうかは分からないけど自殺するつもりの狂人ならわざわざ村人だなんて言わないだろうし、今日はこの部屋では何も起こりそうにないかな……


 ちなみに聖水はいつの間にかポケットに入っていた。


「私もあまり料理できないの……ごめんね」


 と言うわけで、一緒に食べたインスタントラーメンは割と美味しかった気がする。



2日目の動向

1「稲崎【死亡】―湯村」 2「小石川―宮田(主人公)」

3「鷲頭―瀬川」 4「高浦―鏡」

5「三溝―島野【死亡】」 6「軸丸―川淵―穴吹」


湯村「村人CO(=カミングアウト、宣言のこと)」

三溝「村人CO→祈祷師CO→村人CO」


「三溝」(七票)【死亡】……穴吹、軸丸、瀬川、高浦、宮田、湯村、鷲頭

「湯村」(四票)    ……鏡、川淵、小石川、三溝


1「穴吹―小石川」 2「鷲頭―鏡」

3「高浦―瀬川」 4「宮田―軸丸」

5「湯村―川淵」


ここまで読んでいただき誠にありがとうございます。


この物語で使われているルールはとあるMMORPG内で実際に行われていた人狼ゲームのルールを基にしています。


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