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とあるお嬢様

 まだゴールデンウイークに入る前の話のこと。


 純白の椅子に座り夜空を見つめながら紅茶を嗜む少女がいる。その少女は生まれつきの綺麗な金髪を耳にかける仕草をしてから呟いた。

「セバスティアン」


 すると静かにスーツを身にまとっている白い髪の男が姿を現した。

「お呼びでしょうかお嬢様」


「ええ。貴方の淹れる紅茶は絶品よぉ」


「お褒めに預かり光栄です」

 そう言って男は軽く礼をする。毎日言っていることなのだから礼なんてしなくていいのにと少女は毎回思うが口にはしない。やっぱりお嬢様っていうのはあまり好きになれないわねえ。


 少女は紅茶を飲み終えると足を組み、純白の机の上に置かれている写真に目を向けた。

「例の件はどうなったのかしらぁ。順調?それともぉ」


「順調でございます。本日、最後の準備を終えました」


「そう。それは良かったわぁ」

 そう言って思わず笑みを浮かべた。それはプレゼントを今にも貰える喜びに心が躍っているかのよう。


 男はそんな少女を見て、呆れるように言った。

「おもちゃが手に入るのがそんなに嬉しいのですか?くれぐれも今回の件は百パーセント上手くいくとは思わなきように」


「そんなの分かっているわぁ。それでも楽しみじゃなぁい。弱みを握られ私に逆らう事の出来ないおもちゃが手に入るかもしれないなんて考えただけでゾクゾクするわぁ」


「はあー。たまたま選ばれてしまった彼も災難ですね」


「何か言ったかしらぁ?」


「いいえ、なにも」

 そう言って平静を装う男を見て、最近言うようになったなと少女は感じていた。だが、少女はそれで満足していた。


 男の目線は写真の少年に向けられ、可哀そうにと心から思うのであった。


 そんなことを知る由もない少女はその写真を手に取り天にかざして呟いたのだ。

「同じクラス。そして青春委員。弱みを握って脅すには完璧ねぇ。ゴールデンウイークなんて早く終わらないかしらぁ」

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