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2話 Die

 何でも願いが叶うって言われたら世界征服とか、最強になりたいとか、ハーレムをつくりたいとか?何でもって言われると逆に困っちゃう。でもまさか「殺してほしい」っていうのは思いつかなかったなぁ。

「どうかな?出来ればお願いしたいんだけど…」

『ん~…』

 あんまり他の人に迷惑も掛からないし…って問題はそこじゃないか。

『な…なんで死にたいのかが分からないとなんとも…』

 目の前の彼は私の言葉を聞いた直後に真剣な顔になった。やっぱり死にたくなるほどの理由は聞かないほうがよかったかな…でもそれを聞かないとちょっと判断もできないし。

『すみません、言いたくないですか?』

「ん?あぁ、ごめん。そっちじゃなくてね。」

 そっちじゃない?そういって彼の顔は一瞬にして先ほどまでの優しそうな顔に戻った。

「当然頼んでいるのはこっちだからね、ちゃんと説明もするよ。でもちょっと待ってね。先に安全を確保しないと。」

 安全って?…!

「すでにこの施設は包囲されている!おとなしく出てこないと命の保証はしない!」


 あ、軍の人達かな…

 彼はおとなしく出なければ望みを叶えられるのでは?なんてことをのんびり考えていると、よいしょと抱えられてしまった。よいしょという割には結構軽々だったけど。

「じゃあ安全なところに移動するね。」

 そう言って私を抱えた彼はまっすぐに声の聞こえてきた出口に走っていく。そっちはむしろ危険だと思うけど、彼の表情からは緊張を一切感じられない、むしろおもちゃを買って帰る少年みたいに嬉しそう。

 廊下は衛兵さんたちが転がっていたが、呻いていたり、少しもぞもぞしていたり、彼の言った通りみんな生きてはいるようだ。そうこうしていると出口が見えてきた。

 外にはびっくりするほどたくさんの兵士と、その奥には見物に来ていた町の人たちでいっぱいだ。

『あのー…今更ですけどこのまま出たら危ないのでは…?』

「大丈夫!ちゃんと守るから、君には傷一つつけないよ。」

『いや、あなたの心配を…』


 そんな会話をしていると、とうとう外に出てしまった。すると何の意思疎通もないまま兵士たちは一斉に突撃してきた。圧倒的な人数差、アリの巣の目の前に砂糖でも置いたかのような光景。普通なら絶望するところだが。

 青年が何かを呟いた瞬間、ある程度の距離まで来た兵士たちは次々に倒れていく。兵士たちの声で何と言ったのかは分からなかったが、おそらくこれは彼の魔法による影響だと思う。最前列付近にいた兵士たちは全員倒れ、無事だった兵士もその場に立ち尽くしているか、腰を抜かしている。奥にいた町の人たちも気が付いたころには静かになっていた。

 彼は指揮官と思われる人のほうを向いて手を口に添えて、

「次ぎ来たらもっと広くいきますからー!もう襲わないでくださいねー!」

と叫んだ。そして私を抱えたままその場を離れた。追いかけてくる人は一人もいなかった。


 彼の足の速さは、一人の少女を抱えているとは思えないほどに速く、1分もしないうちに、街を出て、山道を進んでいる。つい先ほどの光景が目に焼き付いている。無事だった兵士たちや、遠くから見ていた人たち。あれだけの人数がいながら、彼の魔法が発動した瞬間、時が止まったかのように静かになった。何が起こったのか誰にも理解出来ていなかったのだろう。私も理解できていない。

『あの…さっきのって…』

「ん?あぁ、あれが僕の魔法だよ。言っただろう、君には傷一つつけないって。」

『あの人たちって…どうなったんですか…?』

「え?()()()よ?もしかして知り合いとかいた?」


 私たちがたどり着いたのは山の中腹の古城。前に聞いた話では、昔、魔王と呼ばれる悪い人が住んでいたが、その魔王はある時から姿を現さなくなった。その後、軍がこの城に調査に入るも、中には何も確認出来なかったとか。それ以降は、言いつけを守らない子はあの城に連れていかれて魔王に殺されてしまうっていうしつけの時の脅し文句になっていたが…

「そんな誰彼構わず殺してたわけじゃないけどなぁ。」

「でも、実際多くの人々を殺していたんでしょ?」

「だってわざわざ襲ってくるんだもん。自分から殺しにいったことは…まぁ…割合的には少ないよ…」

『殺しに行ってるんじゃないですか…』

 中に入ると身長の高い女性が迎えてくれて、まずは食事をということで今、三人で食事をいただいている。特に自己紹介もないのでわざわざ訪ねないが、会話的に青年とは知り合いのようだ。提供された料理はこの城には似合わずずいぶんと家庭的だったが、私からすれば御馳走で、多少の受け答えはしても意識は食事に向いていた。とりあえず空腹が満たされると

「それじゃあそろそろ、()()に入ろうか。」





          続きます

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