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〜衝撃〜

 point of view 大輝


 目の前には扉がある。

 俺はそっとドアノブを掴んで、ゆっくりと扉を開ける。

 ぶわっと風が入り込み、思わず目を伏せる。


 目を開けると開放的な場所。


「ーー屋上?」


 間違いなく俺たちの通う学校の屋上だ。この前、朔夜たちと昼飯を食べに来たことあったっけ。


 あれ?でも、なんで俺は屋上にいるんだろう。

 何故か全く記憶が無い。気づいたら扉の前に立っていた。


「…頭悪いを通り越してボケちまったか?勘弁してくれよ…」


 ガックリと肩を落とす。

 俺、ダメだな。本当に。


 しかし、今問題なのは俺の頭のことではない。いや問題なのは重々承知だが…

 何が目的でここに来たか、だ。

 記憶喪失なんて、事故でもない限り起こらないだろう。

 とりあえず歩き回ってみる。そのうち思い出すさ。


 屋上にあるのは2つのベンチと落下防止のフェンスだけ。なんとなく勿体なくも感じる。こんなに気持ちのいい場所なんだ、他にもなにか設置すればいいのに。具体的な案はないけどさ。


 そんなことを考えていた時、



 ()()、誰かの気配を感じた。



 バッと気配の感じた方を見ると、落下防止のフェンスの向こう側に女子生徒が立っていた。


 おいおいおいおい、勘弁してくれよ。

 変な気を起こさないでくれよ!


 嫌な予感がした俺は、女子生徒の方へ全力で走り出す。

 一歩、また一歩と力強く踏み込む。頼む、間に合え。

 目一杯手を伸ばし叫ぶ。


「おい、お前!!自殺なんかするんじゃ…!!」


 俺の声に反応した女子生徒がこちらを向く。


「……っ!?!?」


 見覚えのある顔ーーいや、そんなんじゃない。

 俺たちはいつも一緒にいたじゃないか。何故俺は気づかなかったんだ。


 ーーなあ、



「梓ッッ!!!!!」



 俺が名前を呼んだ瞬間、身体が動かなくなった。心臓だけが激しく波をうつ。

 動けーー動けよ!!俺!!!なんで動かない!?


「ダメだ!やめろ!!飛び降りるなっ!!こっちに来い!!!!おいーー」


 梓の目には、大粒の涙が浮かんでいた。

 そして、一言、呟いた。


「ーーごめんね」


 刹那、梓は下へ消えた。



「梓ッッ」



 天井ーー。

 俺は慌てて周りを見る。見覚えのある場所だ。

 間違いない、俺の部屋である。

 そして俺はベッドの上に座っている。


「夢か…」


 なんとも最悪な夢だった。まさに悪夢。

 時計を見ると早朝の4時半を指している。二度寝しても問題のない時間だ。…だけど。


「なにか飲もう…」


 またさっきの夢を見てしまうのではと思うと、怖かった。だから今日はもう眠りたくない。

 …心臓が痛い。


 今日の俺は、()()()()()でいられるだろうか。





 ***





 point of view 葵


 先週、樹里が「一緒にテスト勉強しない?」と声をかけてきた。

 もちろん答えは「YES」だ。テスト2週間前、親友に誘われたなら、断る理由なんてない。


 そして連れて来られたのはまさかの2年D組の教室だった。

 同じテニス部の有原先輩もいる。


「いや、なんでだよ」


 と樹里にツッコミを入れたくなったが、あえて言わなかった。

 ここに来てすぐ、とあることに気づいた。


 樹里が見たことないほどに目を輝かせている。


 ああ、そうか。そういうことなのかな。

 どうして勉強という名目でここに来たのか。



 ーーねぇ、樹里。

 あなた自身は気づいてないと思うけど



 初めて人を好きになって、今どんな気持ち?

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