序
創作のリハビリのために書いてみた。低クオリティ。
グロとか性的表現あるので苦手な人はブラウザバック推奨。
がんばります。
プロローグ 恥の多い人生を送ってきました
恥の多い人生を送ってきました。というのはかの文豪太宰治の名作『人間失格』の一節だったが、こうして人生の終わりを目の前にして浮かぶ感想がそれのまるパクリなあたり、やはり自分はどうしようもなくつまらない人間だったんだなぁと思った。
いつものように独房で目を覚ました僕は、朝食を食べた後今日は軽作業のない日だしなにをして過ごそうかなぁと悩んでいた。学生の頃から暇さえあれば読書をしていたので、空いた時間はひたすら本を読んでいたのだけれど、今持っている本は全て読み終わってしまった。
だから、今日は刑務官になにか新しい本を頼もうか。そう思っていたのだけど、暫くして表れた刑務官は、物々しい雰囲気の警備隊を数名伴って表れた。
それを見て、あぁ、今日なのか。なんて、どこか他人事みたいに思っていた。もう、なのか。やっと、なのか。自分の中にわき上がってくる感情が、どっちに振れているかは正直自分でもよく分からなかった。
多分、やっとっていう気持ちの方が強かったのだと思う。僕は素直に立ち上がって、泣きわめくことも暴れることもせず、粛々と彼らに着いて歩き出した。五年過ごした独房を出る時に思った事は、読みかけの本が無くてよかったな――と、ただそれだけだった。
最初に連れて行かれたのは、あまり好きではない匂いのお香が焚かれ、お坊さんがお経を上げている部屋だった。良く見れば、壁には仏像まである。まだ僕は死んでいないのに、これじゃまるで葬式場みたいだ。
遺書を書くこと、好きな食べ物を食べること、タバコを吸うこと。希望すればそれらが出来る事を刑務官に説明された。なので、有り難くタバコを吸わせて貰うことにする。伝えたい人に伝えたいことは、もう既に手紙で伝えてあるし、朝食食べた時点で手遅れなのだけど、死んだ時に垂れ流す物は少ない方が良い。只でさえいろんな人に迷惑をかけてきたのだから、最後くらいはなるべく手間をかけさせたくはなかった。
差し出されたのはアメリカンスピリット。葉が詰まっていて普通のタバコより長く楽しめるので、捕まる前はよく吸っていたそれが渡されたのは、偶然なのか故意なのかはわからないけれど、有り難く吸わせて貰う。深く吸い込んで、ぷはーとゆっくり吐き出す。お香の匂いを紫煙が上書きしていく。久しぶりの喫煙にヤニで頭が余計にぼぅっとしていくのが分かった。
もう何か言いたいことはありませんか? と問われた。特に何もないと思っていたのだけど、いざ自分が処刑されるとなると、一つだけ聞いてみたいことが思い浮かんだ。
「貴方達は、人を殺すことになにか思うところはありますか?」
皮肉というか嫌みにならないように、極めてフラットな調子で聞いてみたのだけど、どうやら失敗だったらしい。怒りを露わにする人。苦虫を噛み潰したような表情をする人。今にも泣いてしまいそうな顔をする人。様々だけれど、公に認められている殺人であっても、なにも感じていないわけでも、まして望んで行っている人はいないようだった。
「あぁ、安心しました……」
思わず、五年ぶりに頬がゆるんだ。きっと自分は、今までの無表情が嘘のように穏やかな表情をしていることだろう。いったいコイツは何を言っているんだと、様々な表情を浮かべていた職員達が今度は一様に困惑していた。
「僕を殺す人達は、僕とは違って人の死に何も感じないわけではない。僕を殺すのは心ある善良な人達なんですね。それが僕にはとても嬉しいのです」
白装束に着替えさせられ、頭から白い布をかぶせて目隠しをされた。中央の踏み板の上で首にロープが巻かれ、いよいよ最後の時が来た。後ろ手に手錠までされたけれど、そんな事をしなくても逃げるつもりも抵抗するつもりもない。死刑執行官にでもならない限り、どのような理由があれ人を殺すことは許されないことだ。僕は僕が殺した14人に対して特に何も感じてはいないけれど、いずれはこうなることだと知った上でやったのだから。
――意外と長いな。結末は変わらないんだからさっさとやってほs――
急な浮遊感。床の踏み板が外れたのだと思う。視界は無いのだけれど、なんだか世界がスローモーションになった気がする。これが走馬燈なのか。
恥の多い生涯を送ってきました。陳腐だけど、自分の人生を思い返してもそんな感想しか浮かばなかった。
それなりに裕福な家庭に生まれて、決して贅沢ではないけれどさしたる不自由もなく過ごしてきた。勉強も運動も周りの人よりは努力してきたけど、結局なんにもモノにはならなかった。物覚えが悪くて、他人が当たり前に出来る様な事が、自分には酷く難しかった。学生時代はそれでも困らなかったけど、社会に出てからは周りの人に迷惑ばかりかけていた。
その結末がこれだ。
特に身を固くするでもなく脱力していた僕の身体は、ロープが伸びきった瞬間の衝撃で首が引っ張られ、苦しむ間なく意識が飛――ごきり――
これにて僕、東雲蓮の三十年ちょいの人生は幕を閉じました。死後の世界があるとすれば地獄行きは確定だと思うので、本物の閻魔大王がどんな方なのか、ちょっぴり楽しみです。
序章なんで転生前。生まれながらにして色々ぶっ壊れている破綻者ですが、基本的には善人という主人公です。