いざゴブリンの谷へ
私の心を察したようにスライムさんは言葉をつけ加えた。
「スキルや魔技には熟練度があるんだ。今のままだと駆け出し冒険者にも劣るだろうね。」
私は期待がはずれ静かに尋ねた。
「今の私の強さはどのくらいなんですか?」
「そうだね‥‥ゴブリンが1匹居たとして殺される事はまずないだろうさ」
ホッとした私に
「ただし、ゴブリンを倒す事はできないだろうね。ましてやゴブリンに囲まれたら今の君の器は殺されてしまうかもね。」
と追い討ちをかける。
スライムはにっこりと笑い私に手を差しのべる。
「そうならないためにも、今から軽く戦闘訓練をしに行こう」
「ありがとうございます、よろしくお願‥‥‥‥!?」
私がスライムさんの手を掴むと同時に景色が一変した。
明らかに朝陽が照らしはじめたフィゴの森ではない。周りを見渡すがなぜか光が一切無く暗闇に包まれていた。微かに感じる肌寒さだけが私を出迎えていた。
「スライムさん、どうしたんですか?ここはいったい‥‥」
そう呟くと優しい小さな光が1つポッと現れる暗闇が私から引き剥がされる。改めて周りを見渡すと洞窟内だとわかる。ゴツゴツした岩の壁やに地面に時折天井から水滴が音をたてている。
「驚いたかい?転移を使ったんだがごめんね、魔道具の灯りを準備してなかったね。ここはフィゴの森の隣にあるゴブリンの谷と呼ばれているダンジョンさ。隣といっても距離は大分あるんだけどね。あそこだと、森の木が邪魔だし魔物も殆ど居ないからね。今居るのは谷の最下層で地下10階位かな?」
いたずらっぽくスライムは言う。どうやら実践訓練はダンジョンで行うようだ。
「ゴブリンの谷は名前の通りゴブリンが生息しているんだ。ここなら今の君にうってつけだよ。最下層は普通に入り口から来ても入れない所で転移を使わないと来れない所なんだけど、ゴブリンもここには入れないみたいでね。まずはスキルと魔技を使って能力の確認と無詠唱できるように練習しようか。」