目覚め
暗いそこでは視界はなく、夢心地であった。手足の感覚もない、更に言うなら五感で感じる事ができる物は一切無い。しかし意識だけは、はっきりしていた。
「ようやくお目覚めだね‥‥」
‥‥‥‥
どこからか誰かの声がする。
‥‥‥‥
「念話は使えるかい?」
気のせいではないようだ、確かに声が聞こえる。それにしてもネンワとは‥‥‥‥ネンワ‥‥念話?私には何が何だかさっぱり分からなかった。
「これで大丈夫かな?」
「誰か居るのですか?」
辺りは暗く見えないが話しかけてみた。
「よかった大丈夫なようだね。いきなりで悪いんだが少し君の魔力を分けてくれないか?」
やはり何かが居るようだが、[魔力を分けてくれないか?]とはどういう事だろうか。その声からは少し焦りを感じた。
「私は何も出来ませんが、少しならどうぞ」
「ありがとう、久しぶりに食事にありつけるよ」
そう言うと近くの何かが微かに光りだし、暗闇の中に姿を表した。透き通るそれはスライムのようにも見えるが、想像していたものとは違った。目も無ければ、水らしきもの以外何もない。100人居れば100人が水溜まりにしか見えないと思うだろう。
「ごちそうさま、こんな所で世界樹を見つけられるなんて驚いたよ」
微かに光るそれは満足そうに言うとプルプルと動き始めた。
何も感じないがもう終わったのだろうか。
「もう済んだのですか?」
「あぁ済んだよ、ここら辺は魔力を宿すものが少なくてね助かったよ。」
済んだらしい、少し話を聞いて見たいが大丈夫だろうか。
とりあえず何から聞くべきだろうか‥‥
「あなたはスライムなんですか?」
「スライム以外に何に見えるんだい?」
やはりスライムなのか。スライムはケタケタと当然の事を聞く私を笑う様に答えた。
「私はどうなっているのですか?身体が動かないのです。」
「そうだろうとも君は世界樹だからね。魔力を宿しているとしても木であることに変わりはないからね。君はおかしな奴だね、普通世界樹はまとまって存在するはずなんだけどね‥‥」
話を聞きながら私は困惑していた。こんなにも非現実的であって、今まで見てきたどの夢よりもそれらしい。しかし意識ははっきりしていた。