少年、酔う
しばらくぶりです。携帯治り、テストも終わり、ひとまず落ち着きました。これから投稿頑張ります。
「おーい、サム。酔ったりしてないか〜? 」
「…… 」
めちゃくちゃ気持ち悪い…… 返事ができないくらいには。
── 何故こんなことになったのか。理由は数時間前に遡る。
――――――――――
「これに乗るんですか? 」
「そうだ。めちゃくちゃ早いからな。」
そこにいたのは、とても大きな狼だった。あ、こっち見た。にっこりと笑いかけてみたが、ガン無視でそっぽ向きやがった。なんだこいつ……
「これは、魔獣じゃないんですか?」
「これを魔獣だなんてとんでもない。王国に伝わる由緒正しい軍事用動物ですよ。」
ちなみにわかりにくい方は、丁寧な言葉遣いが町長、ちょっとカッチョいいお兄さんっぽいのがグリッドさんと思ってくれればいい。まあグリッドはおじさんなんだけどな。イケメンなのが腹立つけど。
「じゃあ町長さん、魔獣と動物の違いって何なんですか?」
「前言ったかと思いますが、魔力から生まれるのが魔獣です。つまり、魔獣には親がいません。自然とそこから現れるのです。対して動物は繁殖関しては人と大差ないです。違いはそれくらいですかね。」
「じゃあ見分け方みたいなのは……?」
「ありません。」
いや、ないのかよ。元々教授だって言ってたから期待してたのに。ちょっとガッカリした。
「というか、そんな動物に乗るってグリッドさん何者何ですか?」
「ああ、まだ言ってなかったか。俺は王国軍第一師団団長、グリッド・アンダーソンだ。よろしくな、サム。」
……は? 師団の団長? しかも王国軍の? てかよく考えてみれば王国ってなんだ? 訳が分からなくて頭がこんがらがりそうだ。というかこんがらがってる。
「ちょっと、何個か質問していいですか? 」
「おう、全然いいぞ。」
「まず、王国って何なんですか? 」
「王国を知らないのか? サム、お前どんな田舎住んでたんだ?」
言えない。異世界いました、なんて絶対言えない。
「ははは…… まあそれは置いといて、王国って何ですか? 」
「ああ、そうだな。この世界には五つの大陸があるのは知ってるか?」
「あ、はいそれは知ってます。」
それはレーシーが前言っていた。たしか東西南北と中央だ。
「そうか、それなら話が早い。その各大陸に、王国があるんだよ。まあ中央大陸の王国を中心にした、四つの地方政府って感じなんだけどな。」
へ…… へ〜。レーシーが森に引きこもってる間に王国出来ちゃってたのか…… レーシー何歳なんだろ。
「それで、俺はここ、西大陸の王国、ロミニアス王国の軍の第一師団団長ってわけだ。これで大丈夫か? 」
「あ、はい。」
聞きたかったこと…… と言っても二つだけだけど全部答えてくれた。さすが師団長様だ。
「で、師団長さん、これからどこに…… 」
「お……おい、サム! 師団長って呼ばないでくれ!!! ちょっと恥ずかしい…… 」
正直、おじさんが照れてるのを見ているのは辛かったが、イケメンだから許すとしよう。
「じゃあ、グリッドさん。これからどこに行くんですか? 」
俺が普通に呼んだ途端、グリッドさんは落ち着いた様だった。テンションが上下しやすいおじさんである。
「えっとなぁ、とりあえずここで、魔力探知をする。」
「魔力探知? 」
「知らないのか? あんな魔法使えるのに。」
「知らないです。ちなみに聞いたこともないです。」
「そうか…… なんかお前ほんと変わってるな。妙に丁寧な話し方するし、おかしな魔法使うし。」
「僕を変人扱いするのは辞めてください!!」
ちょいちょい俺のことを変人扱いしてくるのだ。特にあの魔法を見せてからは。いい歳こいて子供をからかっているのだ。師団長ともあろう人が。王国が不安で仕方がない。
「すまんすまん。で、あれだな。魔力探知だな。まあ説明って言っても読んで字のごとくなんだが、周辺にある魔力の位置が、大体察知できる。察知できる範囲は人によるが、俺は常人の範囲の8倍程度は可能だ。」
8倍。よくわからないがすごいのだろうか。
「町長さんはどのくらい出来るんですか? 」
「私は常人の1.5倍程ですよ。一応元教授なので普通の人よりは広いですけど、さすがにグリッドさんには敵いません。」
元教授の町長さんにここまで言わせるとは、正直腕っ節の強いオッサンかと思ってたけど違うようだ。少し見直した。
「ま、そういう事だ。俺は凄いんだ。言ってなかったけどな。」
自分で言ってしまうところが、このおじさんのいい所でもあり、悪いところでもあるのだろう。なんだか憎めない雰囲気を持つ人だ。でも、今回は仕方が無い。皮肉の一つでも言って差し上げよう。
「なんか、自分で言ってしまうと、醒めますね。せっかく見直した所だったのに。」
「おおおおおい!! そんな事言うなよぉ〜 」
「そんなことより… 」
「そんなことってなんだ! そんなことって! 」
めんどくさい。とにかくめんどくさい。前世も家計上、めんどくさい人はいたが、このタイプは初めてだ。あと、過去編についてはいずれ書くので心配ご無用。とりあえず謎に包まれてるってことで。
「分かりました分かりました。見直しましたよ。」
満足気な表情でグリッドさんは頷いていた。このおじさん、ちょろいな。
「で、まあ本題に入りますけど、それを使って魔獣を探すんですか?」
「まあな」
「魔獣以外が引っかかる可能性は? 」
「当然ある。だが判別は簡単だ。奴らは魔力から構成されてるから魔力保有量が多いんだ。魔力量によって反応が変わるから、後は1番強いやつの所に行けばいいだけだ。」
なるほど。さすが師団長。意外とスペックが高いようだ。
「じゃあ、早くお願いします。」
「なんだサム、冷たいぞ。」
「もう正直疲れました。早く行きましょう。」
「分かった。分かったから少し待ってくれ。魔力探知するから。」
グリッドさんが本気モードだ。珍しく。
「『サーチ』」
グリッドさんの手が緑に光る。アレが恐らく魔法、そしてその前にブツブツ言ってたのが詠唱だろう。詠唱を覚えれば誰でも使えるというのは、確かに使い易い。
「分かったぞ、あっちの方だ。サム! こいつに乗れ!」
「いや待ってくださいよ! 急すぎますって! 」
「じゃあな町長さん、後で報告に行くわ。」
「わかりました。晩御飯を作って待っておきます。」
「おう、サンキュー! おっしゃ! 行くぞジラルド!全力だ!」
「うわぁぁぁぁぁぁぁあああ」
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という訳で、冒頭に戻る。まあ原因は乗り物酔いだ。早いし揺れるし正直きつい。
「おいサム、ダメだったら降りて歩くか? 」
「…… そ… それは大丈夫です。多分…… 」
グリッドさんは心配そうな顔でこちらを見つめていたが、しばらくして前を向いてしまった。俺はというと気持ち悪過ぎて吐きそうな気持ちを抑えながら、ギリギリのところで耐えていた。
それからしばらくして、標的が見えてきた。忘れもしないあのサイズ、間違いなくあいつだ。
「見えてきたな、グリッドさんの闘いをよく見とけよ?」
「はい…… 見ておきます……」
「なんか逆に調子狂うな。まあいいや、じゃあ行ってくるわ。」
「…… お気を付けて。」
そう言って向かっていくグリッドさんの背中は、なんだか頼もしく見えた。まあ本人には絶対言わないけど。
ちょっとグリッドさんキャラ崩壊したかも…笑笑
すみません、力不足です…