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初めての戦闘

朝が来た。

昨晩探検に出た窓から朝日がさす。目にしみる。


眠い…寝れなかった…


「ドラゴンよ、食事が終わったら『ことり』郵便局へいくぞ。ゲヒヒヒ。マリアに手紙を渡しに行くのだ」


「キュアン?」

「食べ終えたらまた屋敷の前まで戻ってこい」

ミクロ伯は鏡台の前に座って、置かれた薬剤を順々に頭に塗り込み始めた。


なんと!郵便局ということは、街についに連れていってくれるのか!


「キュア!」

返事をしてワクワクしながら部屋を飛び出した。


実は昨晩新たに一つ決心したことがある。

ある質問を他の先輩ドラゴンにしたかったので、一目散にドラゴン舎へ向かった。




(ね。ジースさん。レベルを上げるのってどうしたらいいの?)

(今更かい?!)


トーマスさんがわたし用に可愛らしい木のお皿を買ってきてくれていた。食事はいつものカルナの実とミモゼの葉だ。以前、食事は兄妹達との取り合いだったが、今日からはゆっくり食べられる。むしゃむしゃ…量がファームにいた時より多い気がする。太らないようにしよう…


ロンは今朝はここにいない。

トーマスさんはジークさんの向かいの部屋を綺麗にしている。

なので食事をジースさんの鉄格子の前まで引っ張って持ってきた。食事中ならまた話すことができる。


(ええ、ジースさん。わたし今まで必要ないと思ってて)

(よっぽど君のいたファームは平和だったのだな。だがしかしどうして突然?昨日マルクに馬鹿にされたからか?)


ジースさんは鉄格子の中で笹みたいな…ラザックの葉、というらしいが、それを食べていた。ドラゴンでも食事の内容が違うのね。


(それもあるけど…それよりも伯爵に抱き締められて寝れなくて。あんな腕くらい振り解ける力が欲しいの)

(ブフッ!!!あんな男の手も振りほどけんのか?!)

(いえ、ジースさんこれ、切実なんだから。本当に)


夜の散歩から帰ってから、ベッドの上で寝始めたのは良かったが、乗った衝撃か、ミクロ伯爵が起きてしまった。おかげでまた再度布団の中に引き込まれてしまうという…。


(寝不足で鱗の調子も悪いし…)

横でジースさんが肩を震わせて笑っている。こんなに真剣な悩みなのに。寝不足からくるお肌の悩みはドラゴンでも共通のはずだ、きっと。現にほら、鱗が昨日よりカサついてる気がする。


(フハハ。いや、悪かったね、おチビさん。レベル上げのことだが)

(はい!)


(簡単で当たり前の話さ。外に出て他の魔物と戦うしかあるまい)

(…やっぱり。それしかないんですね)

(…ないことはないが。いや…君の場合は、その方法しかないか。マルクに戦い方を見てもらえばいい。あいつは言い方は冷たいが面倒見のいい男だぞ)

(…?わかりました。頼んでみます)

昨日の今日だからバカにされそうだなぁ。


(さて、わしはそろそろいつも通り寝るとしよう)

ジースさんは奥の方に歩いて行き、ドサっと倒れ込んであっという間にイビキをかき始めた。





花の迷路を出て、ここに来て最初に見た槍を持つミクロ像の前に来た。相変わらずキラキラとした像だ。誰か磨いているのだろうか。

屋敷からミクロ伯爵とマルクが出てきた。


「ん、ん。よし行こうか」


「キュア!」

(おはようございます、マルクさん)


「………」


マルクは無視をしてくる。いいもん。

そんなことで負けるわたしではない。


(あの、マルクさん、わたしレベルをあげたいと思っていて魔物と戦ってみたいんです)


(…)

見事に無視ね!!

どう言ったら…あ!!


(あのあと色々考えて、やっぱり最低限ドラゴンとしての強さというのをつけていきたい、って思って)

(……………)


だめか…。


「ゲヒヒヒヒャ、マリアに会える、マリアに会える、ほらほら、早く行くぞ!」

「はい」


スタスタと二人は出口に向かって歩いていく。

マルクさんはなにも返事をしてくれないな。残念だが、仕方ない。ジースさんにまた教えてもらおう。


(……街まで、少しだがスライム出る。攻撃をしかけてみろ。ご主人には俺が話してやる)

(!!!ありがとうございます!!)

おお。ドラゴンの強さって言えばやっぱり反応してくれた。

マルクさんのこと、なんとなく分かってきた気がする。潜入中の活動家だものね。


ついにミクロ伯邸の外門についた。

ミクロ伯爵はここから馬に乗っていくようだ。マルクが素早く準備している。


わたしは先に門から出て、景色を見てはしゃいでいた。

ついに!

辺り一面はのどかな花畑。道がつづいていて、その先に街も見えている。

こんな短距離でスライムが出るように見えないが…


あ、いた。


ちょっと先の道の真ん中で、ポワンポヨンと青いものが揺れている。

なんだか可愛い。


ミクロ伯爵とマルクが門から出てきた。


「ん、マルク。道にまたスライムが出てきている。頼んだぞ」

「はい。…あの、よろしいですか。ミクロ様」

「なんだ」

「聞いた話ではございますが、ルミナ・ドラゴンはレベルを上げると宝石としての輝きを増すそうです。一度この子にさせてみてはいかがでしょうか」

「そうなのか?」

「はい。レベルが上がれば、魔力数も上がります。ルミナ・ドラゴンの鱗の輝きは魔力に依るもの、だと」

「あい分かった。よし、ドラゴン、先にいくのだ。私が着くまでに倒しておけ」


(ありがとう!マルクさん)


ドキドキするがやるっきゃない。

安眠と美容のためだ!!



わたしがざっと前に立つとスライムはポヨン!とその場で跳ねた。

よし、まずは…

《スキャン》!!


---------------------------------

スライム

♂ Lv.8

健康

ランク:F

スキル:《タックル》

---------------------------------


昨日習得出来て良かった。

うう。レベルかなり上じゃん。

勝てるか分からないけど、スキルの数は少ない。

よし。《タックル》されないように空から攻撃してみよう。


バタバタと空へ上がり、スライムめがけて急降下して体当たりをする。


ぽよん


と跳ね返されただけだった…。

なにを!諦めるものか。

もう一度さらに高く飛び上がり、突撃!!


ぽよん


スライムになんか笑われている気がする…

でもわたしはぐっすり寝れるようになりたい!


えい!!

ぽよん


えい!!!

ぽよん


えええい!!!

ぽよん


スライムの《タックル》!!

わたしはスライムに近くの木まで勢いよく跳ね飛ばされた。

うぅぅぅうぅ痛い。鱗から血がでてる。やだあぁ。


「マルク、あいつは遊んでいるのか?」

「いえ、ミクロ様。あのドラゴンは真剣にしているつもりのようです…」

「むむ。やはり愛玩用のドラゴンか…」

「そうですね…」

もう二人にはすっかり追いつかれてしまっていた。


(おい!スライムに打撃はあまり効かないぞ!斬撃か、炎、風がよくきく!)


(あ…ありがとうございます!)


よし、斬撃…といってもわたしの爪は丸くて尖ってないし…口?

やだやだ、あんなの口に含みたくない。


炎…は、一応出せる。芝生も燃やした女なめんなよー!?

よし1度やってみよう。

もしかしたら《ファイアブレス》ができるようになるかもしれない。


よし!

スライムを見据えてファイアーーー!!


《命の息吹》


ブアアアアアアア…


スライムは心地よさそうだ。



…違う!!なんで今《命の息吹》がでるわけ?!

習得できたのは嬉しいけど!!


ぱっと後ろを振り返ると、マルクが死んだ魚のような目で見ている。

ミクロ伯爵は、見てもいない。手鏡で確認しながら、自分の髪を撫で付けている。


どうしよう。


うん、ひとまず回復だ。次また《タックル》されたらしんどい。

出血している所に《命の息吹》をふきかける。

ふぅ。これができるようになったのは大きい。


スライムは余裕である。

ぽよぽよと横に揺れている。


あと、は、風?

翼で風を起こしてみようか。

えーーい!!


そよそよそよそよ…


スライムは快適な暖かさと、そよ風で

心地よく眠ってしまった!!



よし!!



……

目の前には心地良さそうに眠るスライム。

何度も炎をだそうと試みるも、もう《命の息吹》しか出せない。

スライムになんにもダメージを与えられていない。

むしろ回復させている。

わたしがした《命の息吹》と翼でのそよ風。

ご主人様にしたら喜ばれそうな、やつだよね。

はあ…


(もう諦めるか?)

(いえ、や、やってみます…!)


あとはやりたくなかったけど…。

覚悟を決めよう。


ダッシュして眠っているスライムに掴みかかり、

牙を立てようとした…


「わ、わ!!!マルク!!?やめさせろ!!」

「はい!」


あっという間にわたしはマルクに押しのけらた。

顔を上げた時には剣の斬撃でスライムはパシュッと弾け飛んでいた。


「ふぅ…良かった。やはり危険ではないかね、マルク」

「そう、ですね。この子には攻撃するスキルが何もないようです…」


呆然としていた。

一体、牙を立てて何がダメだったのだろう。


…は!!?

可愛く、なかった?!?

ペットだとそうよね!飼い犬に手を噛まれる的な??

牙を出しちゃ、駄目よね。うん。


「ドラゴンよ。魔物を口に含んではならんぞ。分かったな?」

「キュ…キュア…」

シュン、とした。

やっぱり、はしたなかったのか…。

気をつけよう。しかし今後スライムにどう勝てばいいのか。


と今気づいたが…体がポカポカと暖かい。

もしかして?


《チェック》してみよう。

---------------------------------

ルミナ・ドラゴン(幼生)

♀ Lv.3

健康

ランク:F

固有スキル:飢えた心

スキル:《命の息吹》《スキャン》《チェック》

称号:宝石の原石、美の象徴

---------------------------------


レベルがあがってる!!


(決定打を加えなくても少しでも戦闘に参加して、スキルを使っていると多少なりともレベルがあがっていく。もちろん相手を倒せたら、だがな。もちろん一人で倒せた方が経験値も稼げる)


わたしが小躍りしているとマルクが説明してくれた。

なるほど。


(それにしても弱いな。止められる前にかぶり付くくらいの気持ちで行け)

(…わたしもここまでダメージ与えられないとは…)


「ゲヒ。おい。時間がかかってしまった。早くいくぞ」

「キュア!」「はい」

「ドラゴン。もうお前は戦うでない。マルク、いつも通り頼むぞ。はやく街に向かいたい」

「かしこまりました」


がーん…。もう戦わせてもらえないようだ。

いや、Lv.3になったもの。今日こそ伯爵の腕を振り解けるに違いない。


(おい、チビ)

(あ、はい!)

(夜、また出てこい。少しレベル上げに付き合ってやるから)


マルクは面倒見がいい、っていうのは本当のようだ。


その後、出てきたスライムは全てマルクが素早く切り捨てていった。

早い。全て一撃だ。

彼は今人の姿だが、ドラゴンになるとどんな強さなのだろう。

ドラゴンの強さ、誇り…かあ。

でもわたしの場合、ぐっすり眠れる強さが欲しいだけなのよね。快適な暮らしが出来ればそれでよし!

今日伯爵の手から逃げられたら、もうそれで満足だ。




街についた!!ついに!!

異世界の街へ!!パパーン!!


門扉では当たり前だが伯爵は顔パスだった。

街には露店がならんでいる。

うわああ、人間だったらあれもこれも食べてみたいのばかり。うーん、残念。

いろんな形の飴細工に、何かの肉の串焼き。

それに、なんだか甘い匂いがする。ミルクの匂いと甘酸っぱい匂い。やだ意外といちごミルクに似たようなジュースがありそうじゃない!?

「キュアアアア…」

「だめだ!食事はトーマスにもらっているだろう?」

思わずジュースのお店のカウンターに足をかけたが、ミクロ伯爵に叱られてしまった。残念。


建物はレンガ造りの物が多い。

人もたくさん…あ!!獣耳!!獣人ってやつ?

もふもふだああ…いいなあ、もふもふ…。

わたしももふもふになりたかった…。


街中には冒険者も多いのか、結構いかつい装備をしている人が多い。髭面のおじさんもたくさん。

そんな人たちがたくさん入っていく、綺麗な建物…。

仕事を斡旋するところかな。みんな何か書類を持って出てきている。

その近くには武器屋さん。それと薬屋さんもある。1番活気があって賑わっている。


ミクロ伯爵はそれらに見向きもしないで通り過ぎ、鳥がデザインされたアイアンの看板が掲げてある店に意気揚々と入っていった。

『ことり』郵便局、らしい。

大切な手紙や速達をお願いするところらしい。防御魔法をかけられた、コピックという小さくてすごく早く飛ぶ鳥にくくりつけるのだそうだ。伝書鳩みたいなものなのかしら。


昨日寝言でつぶやいていたマリアに手紙を出すのだろう。

しかし意外だな。彼の場合、人に出してこいって頼んでもいいのに。

彼なりに街を視察しようとしているのかしら。


「ゲヒ!!ゲヒヒヒッヒヒヒヒ!!!マリアはいるかね!!!?」

正面カウンターに座っているのは、金髪碧眼の美しい女性だった。

腰まであるであろう長い髪がサラサラと肩から落ちる。伯爵を見た途端、整った顔がすこし歪んだ。


「あら…伯爵様またいらしたのですか…」

「うむうむうむ。手紙をね、出したくてな」

「今日はどちら様、にでしょうか?」

「郵便局につとめるマリア・ランスロットに。ゲヒヒヒ」

「あら…また私にですの…ありがとうございます」

彼女がマリアか。

ははん。自分で出しに行くっていうのはこれか。

手紙を持っていけば彼女に会えるってことね。

しかし彼女は丁寧に接しているが嫌そうだ。

我がご主人ながら哀れなり。


「いやな、君が好きだというルミナ・ドラゴンを私は手に入れた。それを伝えたくてね」

「あらあら、手紙の内容を教えてくださったわけですし、もうじゃあ読まなくてもいいかしら。」

「いや、この手紙には、簡単に口にできない君への思いをね…ゲヒヒヒヒヒ。是非読んでくれたまえ」

マリアは嫌そうに手紙をうけとり、その際にカウンターの下にいたわたしと目が合った。


「……あら!?この子ですか!!?」

「む。うむうむ、そうだ。昨日来たばかりでな」

「まあ早速連れてきてくださったの?」

マリアが嬉しそうにカウンターから出てきた。

「キュアア」

「ああん、可愛い。お名前は?」

すべすべとした手でマリアが撫でてくれる。

ああ。幸せ…。


「いや名はまだない…。その、わたしと一緒になってくれるなら、この子に名前をつけてくれてもいいぞ。その子の赤い鱗はね…あの『永遠の春』を作れるそうだ。どうだね、二人で未来永劫、年もとらず一緒に…」

「いえ、そんな。恐れ多いですわ。ご遠慮します」

おお。すっぱり振ってる。マリアは口元に微笑みを浮かべているが、目は笑っていない。真剣に断っている。

前世で同じように振られた身としてこのご主人には同情しよう。

…わたしがマリアだったら同じようにするだろうけど。


「ん。ふ…。し、しかし、うちで暮らしてくれれば、この可愛いドラゴンと毎日一緒に過ごせるぞ?」

マリアはゆっくりと優雅に首を横にふった。

「伯爵様…?それよりもまたこの子を連れてきてくださる方が私嬉しいですわ」

「ゲヒヒヒ。またここに来ていいのか。うむうむ。ではそうしよう」


だめだ。あしらわれている。

その時また別のお客さんが店内に入ってきた。

「あら…伯爵様。次のお客様がいらっしゃったので、失礼致しますわ。お手紙、どうもありがとうございます。可愛いドラゴンちゃん。また来てね」


あっさりとマリアは立ち去った。

ぽつんと残された伯爵の背はなんだか寂しそう。少し同情してしまう。

「キュアン」

「…はっ。ゲヒ!帰るぞ」


かわいそうに。

身分も高いのだから、無理にでも結婚してもいいのに。

なんだかんだで優しいのだろう。


「ぶつぶつ。このままドラゴンを見せるために通うか?いや、もうこうなったら無理やり…」


あ、だめだ、よからぬことを考えていそうだ。




帰る道中、ミクロ伯爵はずっと心ここに在らず、といった感じだろうか。

マルクは帰りにも出現したスライムを淡々と切り捨て、屋敷へ戻ってきた。


「はあ…マルク、明日のことで話がある。少し部屋に来てくれ。ドラゴンは…自由にしていろ。暗くなったら部屋に戻ってこい」

「かしこまりました」

「キュア」

二人は2階の部屋へ消えていった。


街に行けたのは楽しかった。

なかなか豊かな場所だ。食事の種類もありそうだったし。今のわたしには関係ないけれど。

露天のジュース屋さんで売っていたものが忘れられない。見た目と微かにする匂いが、いちごミルクにすごく似ていたからだ。

いや、忘れよう。どうせもらえないのだから。


折角もらえた自由時間!気分を変えてまた歩いてまわってみよう。

まずはまだ行ったことのない所へと思い、屋敷の1階部分を見てまわることにした。


廊下を歩いていくといい匂いがする。台所だろうか。

そこにはメイドが数人と、あの赤毛の男の子、ロンがいた。

メイドさん達は黙々と忙しそうに今日の食事の用意をしている。

「あ!おチビちゃんだ!!」

ロンがすぐにわたしを見つけてこっちに走ってきた。可愛い子だ。見ると、彼は今日露店でみかけたジュースを持っている。興奮気味にジュースを見つめてしまった。

「あ、これ?これはねぇ…フルッティアジュースっていう…味は甘酸っぱくてね。ミルクも入っていて美味しいんだよ。僕これが大好きなんだ」


いいなあ。甘酸っぱくてミルク入り。

是非ひと口でも飲めるなら飲んでみたい。

「キュアアーン」

パタパタと尻尾をふってみる。ダメ元だ。


「欲しいの?うーん…ちょっとくらいならいいのかなぁ」

ロンが迷いながらジュースを近づけようとしてくれた。いいのかしら…!期待で胸が弾む。


「ロン、何しているの?」

赤毛で恰幅のいいメイドが一人寄ってきた。ビクッとしつつロンは後ろを振り返った。

ああ、ジュースが離れていく…。やっぱりダメか。


「ママ!ほら、この子!昨日うちにきたルミナ・ドラゴンだよ」

「そう」

「ね、可愛いでしょ?」

ロンが頭を撫でてくれる。うん、気持ちいい。


「ふん!ママはドラゴンが嫌いだわ。ロン、あなたは知らないでしょうけど、本当に怖い魔物なのよ」

「そんな…ママ、おチビちゃんは怖くないし、うちにいるジースもアモネも優しいよ?」

「ああ。ロン。危ないんだからドラゴン舎に行かないでって何度言ったらわかるの?改良されたドラゴンが安全だっていう保証はどこにもないわ。おじいちゃんに、もうあなたを入れないようきっちり言っておくわ」


ロンは泣きそうな声を出す。

「ママ、嫌だよ。僕はドラゴンが好きなんだ」


「あんたはわかっていないの。最近、世界中で野良ドラゴンが増えてきて討伐が追いついていないのよ。そいつらで勝手にまた繁殖しているっていうし…おお怖い。いつまた昔のような恐ろしいドラゴンが生まれるか」

彼女はかぶりを振って、すぐわたしを睨みつけた。

「とにかくここには入ってこないでちょうだい!!ロンにも近づかないで!!」

それだけ言うとロンのママはわたしを蹴って入り口まで追い立てた。

「キュアン?!」

「わぁあん!やめてよ!ママ!ごめんね、おチビちゃん!またドラゴン舎にいくから、そこで遊ぼう!?」


ロンの声が最後聞こえたが、鼻先で台所への扉を閉められた。

ここにきて、初めて人間から拒否された気がする。

そうだよね。犬嫌いな人も前世にはいたし、ドラゴンが嫌いな人もいるだろう。

ショックだけれど…


そういえば今日遠征からフライ・ドラゴンのアモネさんが遠征から戻ってくると言っていた。

もう帰ってきているのだろうか。

いつまでも落ち込んでいられないし、アモネさんに挨拶もしたい。ドラゴン舎へまた行ってみよう。


それにしても彼ら先輩ドラゴンたちは本当にこの家を出ていってしまうのだろうか。

先ほど泣いていたロンが、さらに悲しむだろうな、と思うと胸がチクリと痛んだ。

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