夜の過ごし方
夜景の映える窓辺に腰掛ける一人の"少女"。ヘーゼルの瞳に映る物は一体何でしょうか。ネグリジェにパーカーを合わせた格好で夜景を見つめる。小さな手をかけてそっと窓を開ける。ふわふわした金髪が薔薇の匂いに乗って夜風に揺れる。(……。)程よい風の冷たさに身体を預ける。瞳を閉じて風の音を聴く。薔薇の匂いに混じって香る若葉や新緑の香りが鼻腔に届く。(こんな、香りもあったのね)しばらく自然の風に身体を預けていると、寝室のドアがガチャリと音がして振り向くと、そこには燭台を持った執事の姿。上から下まで全て黒い執事が"少女"のいる窓辺に近づく。「お嬢様」今まで聞いた事のない美声に三日月の光に照らされた整った顔立ち、真っ黒い髪。「もう、おやすみのお時間なのにどうか、されましたか?」不意に顔を近付けられて、"少女"は執事の瞳を見つめる。「お風邪を召されてしまいます。早くベットへお戻りください。」執事がぎゅっと抱きしめてきた。心地良い執事の香水。「こんなに冷たくなって…」"少女"は左の手首を舐めた。「ヴァンパイア」の証である薔薇の紋章が浮き出る。人間とは掛け離れた存在…そして、人間を誘惑出来る美しさ…。そう、この"少女"の正体は「ヴァンパイア」だったのです。左の手首の紋章が光って、「ヴァンパイア」特有の紅い瞳に代わる。「夜風が気持ち良くて。つい窓を開けてしまったの。」執事が顔を上げる。主人の髪を撫でる。「そうですか…。もう十分でしょう?さあ、ベットの方へ。」執事が主人を抱いてベットのほうへ連れて行く。「さあ、もうおやすみください。」主人に布団を掛けて窓を閉めに行く。「待って。」執事がこちらを振り向いた。「寝るまで側にいてちょうだい。」執事がクスリと笑う。「貴女はいつからそんな子どもになられたのですか?わかりました。貴女が寝るまで側にいましょう。」主人のベットに近付いてふわふわした金髪を撫でる。「おやすみくださいませ。お嬢様」おでこに口付けを落とす。外で吹いていた風はまだ優しい風を生み出していた。