深夜の秘密
ここ最近あることで困っている。
それは、兄妹のように過ごしていた幼馴染が最近起きると同じベッドにいることがあることなのだが、彼女は同じ家に住んでいないのにそのようなことが起こるのだ。
歳が一つ違う彼女は、最近俺に対してきつめな対応をするようになった。それに関してはこれに関係ないな。
そこで、一体いつ来ているのか気になってある日、赤外線の暗視カメラを部屋全体が見えるように朝になっても気がつかれたいような位置に設置した。
それ自体はテレビでの映像で興味を持ち衝動買いをし、部屋にて埃を被っていたものだった。
ついにこんなものを使うときが来るとは。
録画開始は就寝直前。時間でいうと23時20分程だったと思う。
さて今朝も例の如く彼女は存在していた。
俺は彼女に片腕をおくようにしていた。
そして放課後、録画されたものを見ることにした。
変化が現れたのは、朝の4時くらいになった頃だ。
それまで気になる行動は突然立ち上がったり座ったりという俺の寝相が悪い程度だった。
画面の上端にあるドアがゆっくりと開いた。
やはりというか何と言うか幼馴染が現れた。
実は別のところにボイスレコーダーをセットしていた。
時間を揃えて再生する。
『やっぱりよく寝てる』
聞こえる声は女の声、彼女のものだ。
それ以外の声が聞こえたらそれはお化けくらいだろう。
『ねえ、起きて今日も来たよ』
いつもと違い、若干猫撫で声で俺に話し掛けている。
話し掛けられているそのおれは、足を崩して座っていた。
とりあえず言ってはおくが、あんな朝早く、って言うかまだ暗い時間に呼ばれた覚えは無い。今日は起きたのがいつもよりも寝過ごしたくらいだ。
『おはよ。やっぱりここは暗いな。いつもみたいにこっちにおいで』
だ、だだ、誰?
どこからくそみたいな声がしてるんだ?
男の声だよな、お化けか?幽霊なのか?………いや、見えづらいだけでおれが話しているようだ。
どの口からそんな言葉が出んだよ。
その声を聴くと彼女は俺のベッドに上っている。
馴れてるな。暗闇の中なのによくあんなによくすいすいと動ける。
ゆっくりとおれのいるベッドに入る彼女の隣には俺に見えないおれがいた。
『いつ見ても綺麗だよ。こんなに中学にいた時よりこんなに変わったのに気づかない陽の僕は、本当に鈍い。君がこんなに頑張っているのに』
幼馴染のあごに手を添えすーっと指先をあご先まで、まるで壊れやすい美術品に触るようだった。ってなんちゅう言葉を発してるんだ!恥ずかしいったらありゃしない。
気がついてはいるさ、こんな変なやつに言われなくても。彼女が最近いろいろと変わっているところは。
つーかあいつ、何言いなりになってるんだよ。
『ずっと君の顔を見ていたいよ。ほら目を閉じないでこっちを見てごらん』
っかぁー。とてつもなく、今画面にいるあいつを殴りたくなった。
どんなたらしだ。
そんなところで、てめぇうっとりしてないでなにか言えよ。
『やっぱりこの時間だけあなたは積極的になってくれる。やっぱり少し寂しいな』
『大丈夫、今だけでも君を悲しませたりはしないから。ほら』
ダメだ。こいつら頭がいってる。
俺が幼馴染の頭をゆっくりとベッドに降ろし肩の横に手をおいて見つめ合っていた。
『……朔さん………』
もう好きにしろ。
しかしこの茶番。こういうものは長く続かないと相場が決まっているのだろう。ゆっくりとその変化は現れた。
さっさまで幼馴染を見つめていた俺はゆっくりと崩れ落ちて彼女の顔の横に顔が着陸。
『もう時間切れか。これさえ無ければなぁ』
ゆっくりと彼女の横で眠る俺を見て残念そうにつぶやき彼女もまた寝てしまった。
朝までほとんど変化がなくそしていつも通りの朝を迎えた。
ビデオは最後俺が電源を落とすまで、レコーダーもギリギリまで動いてくれて俺が消すところまで残っていた。
この現象に関してだが、やつに聴く必要がある。
いつ頃この状態になったのかそしてそれに気が付き、このような犯行を実行していたかを。
しかし今は無理だ。彼女は俺とは異なる学校にいる。
じつは彼女の方が頭がよかったりする。
その学校は一年は強制として部活に入る規則となっていた。
俺の学校はそのようなことは無いが。
ちなみに通学方向が同じなのだからか、会えるのは朝の限られた時間だ。
攻めてみるか。
残念なことが起きた。
今日もまた俺のベッドで寝ていた。
どんな日課だよ。もっとまともなものがあるだろうに。
例えば、走るとか。
「おはよう。ふっ、今日も朝から馬鹿面さらけ出してるんじゃないよ」
「勝手に頻繁に、ベッドに入り込んでるやつに言われたくない台詞だ」
「わ、私だって…………、朝起きて別人みたいに変わるあんたに言われたくなんか」
なんだよ。最後になんか長い台詞を言われた気がしたが全く聞こえなった。
「もうどうでもいいから、とりあえず出ていってくれ」
「なんでよ」
「おまえだって、馬鹿面とやらを朝から見たくないだろ。俺も後、最低でも10分程、最高30分の二度寝が可能だ。だから狭いと寝づらい」
カァーッという擬態語が似合うように顔が赤くなっていった。
強引に近くにあった置き時計を取り出し、
「とろい!!もう五時半だよ。10分とか20分とか言って無いで起きるよ。まだ寝れるとかありえないから」
突然おこりだしさらにおまけといいたげに頬にビンタまでされた。
痛ってぇ。今まだ20分じゃ無いかよ。理不尽だ。
結局起こされていつもよりも早めの朝飯を食べさせられて流れで30分早く家を出ることになった。
だいたい一時間ほどの出来事だがその間彼女はずっとイライラしているようだった。
不本意だが、時間が出来た。昨日の隠しカメラのことに関して歩きながらでも聞くことにした。
「ところでだがおまえ、俺の部屋にいる日の朝早く俺の顔した変なやつに会ってるだろ」
「…………」
黙秘か。
「取り合えず証拠は上がっているのだが」
「……っ!」
歩くことを止めてしまった。
顔を見ると、おお、なんちゅう顔している。面白すぎではないか。
「安心しろよ。俺だって恥ずかしい映像だったし、音声だったからな」
おまえにあんな口説き文句言っていたなんて考えるだけで暴れだしたくなるくらいだぜ。
「……それどこに隠してあんの?」
「何が?」
「そのデータとカメラとか一式、どこ!!」
「答えるわけが無いだろ。消されたらこれまでの努力が泡と化して消える」
「馬鹿の努力よりも私の幸福を奪わないでよ」
どんな幸せだよ。偽物の可能性がある幸せのどこがいいんだ。
「俺が訊きたいのはいつからこうなったのか、だ」
「ここだと、言えない。は、恥ずかしいから」
そんなこと言える義理かよ、お前。
「そんなに言いたくないことなのか?」
しずかにコクりと頷き、歩きだした。
「今日だけど!!」
ピクッと彼女が止まる。
「今夜、うちに泊まってもいいぞ。隠しカメラもしないから。そこなら言えるだろ」
それを聞くと彼女は走り去ってしまった。
さて、いろいろと知っているようだ。
夕飯前に来てくれるとうれしいな。
早く寝たいから。
放課後、帰宅中にメールが来た。
送信者は幼馴染だった。
内容は、いつから来て良いか聞くの忘れたから教えてくれないかとのことだった。
返信の内容は、部活終わって支度が出来たらいつでも良い。と送った。
夕飯をうちで食べたいならお袋に頼むけれどというのも一緒に送ったら。ソッコーで返ってきた。
そうするだそうだ。
「いただきまぁーす」
いつもより遅い夕飯の並んだ食卓に元気な声が響く。
現在食卓には、お袋と大学生の姉貴、俺にイレギュラーの幼馴染がいる。
幼馴染は俺の姉貴を本当の姉のようにしたっていた。
俺にはそんなこと無いのに。
夕食が終わり俺は自分の部屋に幼馴染を呼んだ。
おまけとして姉貴がついて来たことには驚いたが。
そして議題について話しはじめるとすぐに姉貴が反応した。
「なにあんた、そんなこと今頃になってやっと気がついたの?」
「どういう意味でしょうか?お姉様」
まるで知ってるような口調だ。
「当たり前じゃんあたしが中学の時にどんだけ夜中のあんたに起こされたと思ってるの?」
「マジですか?」
話しを善く善く聞くと彼女曰く、最初は普通の夢遊病のようなものだったらしい。それを面白がった彼女が口説き文句を吹き入れていったそうだ。
「それも達者になった時に、時々この子も入れて遊んでたってわけ。ねぇー」
「はい!!」
とても良い返事です。
へどがでる。
「どれくらいでこいつを仲間にしやがった」
「そうだね、この子が中二の頃かな?いろいろと盛り上がったな」
ついにまともに怒るのも億劫になってきた。
「さて、いつからお前は抜けたんだ?」
「何言ってるの?あたしまだやめてないんだけれど」
「は、何?証拠に使用しようとした映像に映ってないけれど」
それを聞くと姉貴は幼馴染の方を向いた。
「美月ちゃん。こういうことは、ばれないようにしないといけないんだよ」
「でも家の中に入れてくれましたよね?」
初耳な事を姉貴に訊く幼馴染。なんだよそれ。
「私がね、いつもあの時間くらいに美月ちゃんを家にあげるの」
陰の朔は話し掛けないと反応しないからその前に探りを入れないといけないよ。この子の現在の動向もわかるし。っと付け足し幼馴染は、はい!っと元気に答えていた。
もうアホ過ぎて何も返せません。
「じゃあなんだ、姉貴は、暇さえあれば俺をいじってるのか?」
「そうだね、昨日や一昨日はあんたの部屋が騒がしかったから行かなかったけれど。ストレスが溜まった時に、ね」
あんたら俺をなんだと思ってるんだ。
「何って、おもちゃ?」
「私の計画だと、このまま夜の朔さんに取り込んでもらう予定だった」
この幼馴染なんちゅう野望を。姉貴、俺はお前のおもちゃじゃない。
「それは言っちゃダメ。ゆっくり知らない間にゆっくりと落とすっていう楽しみが無くなっちゃう」
「ああ、そうでした。」
てへってしてるがそんなにやわな事ではないぞ。
もうほんとに、こいつらについていけない。
「ほんと、もうお前等夜にここ来るなよ!!俺は姉貴のおもちゃじゃねぇ!!それにこれが俺だ!!お前は俺を書き換えようとするな!!あれとてつもなくキモいから!!俺は俺のものだぁぁ!!」
どうだったでしょうか。
とある特撮の女ったらしの亀を久しぶりに見てつい、衝動的に書いてしまいました。