電柱
電柱の都市伝説…ぜひ読んでみてください!
「ねぇ、みんな知ってた?電柱の都市伝説…。」
ドアにオカルト研究会と吊り下げてあるサークル部屋の中では、暗闇に一本のろうそくの火がゆらゆらと揺れていた。手燭を持ったボブの髪形に丸眼鏡の先輩は、輪になって聞いている私を含めた五人に、早口気味に、そして淡々と語る。令和八年となった今では、科学技術が発達して、オカルトのそのほとんどが解明されてしまった。こっくりさんなどの、もはや伝統文化であるオカルトをし尽くしたこのオカルト研究会は、もうありもしない話で怖がらせる、怖い話研究会になりつつある。
「深夜零時、東町のロケット公園にある、不気味に一本そびえる電線の繋がっていない電柱に、コンコンコンと三回ノックすると…。」
「先輩、もうそれ撤去されましたよ。」
私の隣にいた新入りの後輩が、口をはさんだ。私は話の続きが気になったが、あいにく先輩はろうそくをフッと消して、ドスドスと歩いて電気をつけた。
「就職活動で忙しいの、先帰るわ。」
先輩はぶら下げて持ったハンドバッグを背中にまわして、部屋から出ていった。取り残された私たちは、誰も作ってきたネタを話そうとせず、そのまま解散となった。昼の五時、大学を出て、一人で駅まで歩いていた途中、先輩にメールで話の続きを聞こうと思った。言葉選びに思ったより時間がかかり、送るのは遅くなった。夕焼けに、実った田畑がきらきらと輝く。弾むトンボや鳴くコオロギに自然を感じる。先輩からの返信はなかなか来ない。スマホとにらめっこをして、今か今かと待っていた時、バサバサッと黒い何かが通った。私はブルッと体を震わせ、その黒い主が行く方向へ顔を向けると、それはカラスだった。ホッとして歩き始めようとした時、あるべきはずの感覚がないことに気づくと、ふと下を見た。そこには、ひびの入ったスマホがあった。拾い上げて電源を入れてみるのだが、点かない。周りをふらふらと見つつ、少し駆け足気味になる。太陽が地平線に溶けていき、ボヤアとしたオレンジ色の空が紫がかっていく。私はどこか不安定な心持で駆けていると、揺れる視野の一隅に、あの不自然に一本伸びる電柱を見た。私は戸惑い、足を止めた。何度も通ったことのある道ではあるが、こんなもの見たことがない。先輩の話に似ているが、あれは嘘だったはず…。視線を拘束しようとする圧力に、辛うじて瞬きをすると、私は周りに目を配った。誰もいない。だんだんと早歩きになる。チラッと後ろを見ると、電柱はさっきより私に近づいていた。私は耐えきれなくなり、ハンドバッグを抱えて前へ飛び出した。駅はまだ遠い。意味もなくスマホを取り出したりしてみたが、同じことだった。ハアハアと息を吐きながら振り返ると、スニーカーの跡がついた地を物静かにえぐるそれは、着実に距離を短くしていた。私は息が途絶え途絶えになっていき、涙がこぼれ始めた。抱えていたハンドバッグは次第に力が緩み、ずり落ちた。それでも前へと手を伸ばした時、冷たい感触を得た。前を向くと、そこには電柱があった。言葉にならない声が出て、その場に泣き崩れると、ダンダンダンとやるせなさをぶつけた。その時、目の前の電柱が見知らぬ女性へと変わった。その女性は私の長ァい影を見るなり、逃げていった。
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