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甘い声を聴かせて  作者: 桜葉奈義


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1/4

01

時刻は深夜の0時をまわった。

「終電まであと6分……!間に合って〜」

駅まで走る。

ヒールはなかなか走りにくい。


平野茉莉(ひらの・まつり) 20歳。

某企業の普通のOL。

今日は会社の部署全員で新入社員の歓迎会をしていた。甘党ゆえお酒が呑めない茉莉は飲み会のノリについていけず苦手である。

……とはいえ、仲のいい同僚や先輩もいるので話すのは好き。

二次会もあり断れず参加してしまい、やっと解放された時には終電間近。

他の社員たちは超大手の鉄道会社で帰るようなのだが、茉莉だけは別の路線の電車で帰る。

超大手の鉄道会社は出口も沢山あるのだが、茉莉が乗る予定の電車は一箇所だけな上に飲み会会場と逆のため焦っている。


駅の時計と電光掲示板を確認するとすでに出発していた。

「あと1分早ければ……」

大きなため息つき、うなだれた。

タクシーかネカフェに行くしかないかと諦めて引き換えそうとすると変な人がいる。


変な人は男性のようで頭を抱えながらこの世の終わりかと思うほど絶望して膝から崩れ落ちていた。

終電逃した人なのはわかったが、そこまで落ち込まなくてもいいのに……

駅員が終電が終わったことと出口に行くよう促され、男性も肩を落としトボトボと歩いていった。

エスカレーターで彼の後ろ姿をみていると可哀想になってしまった。

地上出口にでると男性は立ったまま空を眺めていた。

「あの大丈夫ですか?」

「……ふぇ?」

男性は驚いたようで妙な声をだす。

独身女が深夜に異性に声を掛けることはよろしくないが、心配が先に来てしまった。


「すみません、いきなり声を掛けて……あまりにも悲しそうだったから」

「あ。お、お恥ずかしいところを……」

「私も終電逃してしまって、タクシーかネカフェをと考えていたのですが、電車以外でお帰りになられてはいかがでしようか?」

「………俺……金なくて……先輩が……うぅ……」

また絶望した顔をした男性。

お金を貸してあげたいがあいにく茉莉もお金はギリギリでタクシー料金すら痛い出費。


「最寄り駅はどこですか?」

「М駅です」

「私が帰る方面と一緒ですね。その最寄り駅まででしたらタクシーの同乗しませんか?」

M駅は茉莉の最寄り駅でもあるが素性がわからない人にはあまり言わない方がいいと判断した。

「ありがとうございます!!これ、俺の全財産でタクシー代の足しにしてください!ギャラが入ったら返しますから!」

深く頭を下げる男性。嬉しそうな男性の声はとても綺麗な声。


「ついでですから、必要ないですよ」

「いえ、ちゃんとお返しします。俺は田邊流風(たなべ・るか)です」

「…私は平野です。」

流風はタクシーの中で先程のことを話してくれた。

「今日は夜の現場…スタジオで収録がありまして、収録後に先輩から呑みに誘われ、俺たち新人たち数人で先輩にご馳走になってたんです。金がない新人にはありがたかったんですが、先輩が…帰りは先輩がタクシー代だしてやるからもう一件付き合えって……新人は断われないしタクシー代をいただけるならと………」


スタジオ?収録?新人?なんだろう……?


「……先輩は酔っ払らって気持ちよく帰られたんです」

「だしていただけなかったんですね……」

「はい。金くれなんておこがましい事言えず……他の新人と共におのおの走って駅に向かったんです。新人は仕事なくて金ないから電車が一番安上がりなんで……」

「定期券とかは持っていなかったんですか?」

「現場は色々な場所ですし定期なんて無意味ですよ」

少々迷ったがさっきから気になっていたことを聞いてみた。

「失礼ですがなんのお仕事を?スタジオとか収録とか、タレントさんですか?」

「いえ、声優です。たいした仕事ないんで名乗るのも恥ずかしいですか」

初めて本当の声優さんに会って感動してしまった。


茉莉には花灯(はなび)という14歳の妹がいる。

妹はアニメオタクで将来は声優志望だ。

茉莉と花灯は母子家庭で、父親は二人が小さい時に亡くなった。

花灯の話では声優になるためには専門学校やら養成所に行く必要があるが母子家庭では学費が払えないほど生活で手一杯。

だから茉莉が高校卒業後に働き、節約しながら学費を貯めている。

母親は不安定職に反対しているので流風がお金がないと嘆いているのもわかる。


「凄いですね。妹がアニメ好きなので自慢できそうです」

「ありがとうございます。俺はアニメにはまだモブ役ばっかですけどね」

そんな話をしながら最寄り駅に着いた。

「頑張ってください、応援してます」と声を掛けて別れた。

茉莉も自宅アパートに着くと階段をダラダラと昇っていくと……


「「え?」」

二人同時にハモる。


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