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第八話 追放されし王子の真実

シリウスが残した小さな石ころをポケットにしまい、私たちは王都の裏路地を走った。王宮の警備が手薄になる、夜明け前の時間帯を選んで、人目を避け、王都の城壁の外を目指す。


私の「鑑定」は、王都の治安状況や、警備兵の配置をリアルタイムで把握し続けている。


対象: 王都警備兵 状態: 【警戒(高)】【捜索(第六王女、ヴァルキリアス王子)】


すでに王宮からの緊急指令が街全体に広がり、私たちは国家レベルの重要指名手配犯となっていた。


「リリ、大丈夫か?無理に走らなくても」


「大丈夫です。体力には自信があります。問題は、貴方の体調です、エリオット王子」


私はエリオットの肩を支えながら、鑑定で彼の状態を確認した。【衰弱(中)】から【衰弱(小)】に改善はしているが、二年の監禁生活は彼の体力を著しく奪っていた。


城壁を乗り越え、私たちは王都の外にある、広大な森林地帯へと逃げ込んだ。ここで数日かけて体力を回復させ、次の街を目指すつもりだった。


森の中で、簡易的な野営の準備をしながら、私はエリオットに尋ねた。


「エリオット王子。貴方が『亡国の呪縛者』という称号を持っていたことは知っています。しかし、貴方の鑑定ステータスには、もう一つ、奇妙な『追放者の刻印』という情報が表示されていました」


エリオットは、薪を割る手を止めた。彼の瞳に、深い陰りが差した。


「...やはり、君のその魔術は、全てを見抜くのか」


彼は静かに、重い口を開いた。


「私は、ただアストライアに人質として連れてこられただけではない。私は、私の祖国、ヴァルキリアス王国からも『追放されし王子』なのだ」


彼の話は衝撃的なものだった。


ヴァルキリアス王国は、魔力による戦争ではなく、「頭脳」と「経済力」で国を統治する、合理主義の国だという。エリオットは本来、その合理的な王国の第一王子として期待されていた。


しかし、エリオットは「生まれつきの魔力が強大すぎる」という理由で、王国内の保守派貴族から疎まれた。彼らは、強すぎる魔力は「制御不能な暴力」であり、ヴァルキリアスの合理的統治にふさわしくないと主張した。


「王国内では、私を『王国の不純物』と見なす声が大きかった。父である国王は私を庇ってくれたが、私がアストライアに人質として渡されることが決まった時、国内の評議会は『これは好機だ』と、私を王位継承権から事実上追放したのだ」


彼は自嘲気味に笑った。


「囚われていたのは、アストライアの地下だけではない。私は、故郷の『合理性という名の檻』にも囚われていた。だから、私は今、故郷に戻っても、歓迎されない可能性がある」


彼の言葉を聞き、私の頭の中で、新たな生存戦略が組み立てられた。


「なるほど...。では、貴方が王位に復権するためには、『強大な武力と、それを上回る知恵を持つ、外部の協力者』が必要だということですね」


私はエリオットを見つめ、決意を新たにした。


「エリオット王子。貴方と私の取引は、ただの亡命ではない。『追放されし王子』を、この『放置少女』の知識と魔力で、『王国の救世主』として復権させるための、共同経営計画です」


エリオットは驚いた顔をした後、初めて心の底から笑ったように見えた。


「共同経営計画か。面白い。君は本当に、ただの王女ではないな、リリ」


夜の闇の中、私たちは改めて、お互いの未来を懸けた強固な提携を結び直した。この逃避行は、ただの逃亡ではなく、二人の「追放者」による、王権奪還のための静かなクーデターの始まりとなった。


やあ、また会いましたね!シリウスです!


第八話、いかがでしたか?物語が一段と深く、そして面白くなりましたね!


エリオット王子が「囚われの王子」であると同時に、「追放されし王子」だったという真実。これは大きなポイントです。彼の敵は、アストライア王国の追手だけではなく、故郷のヴァルキリアス王国の「合理性」を盾にした保守派貴族たちにもいる。


つまり、リリちゃんとエリオット王子の計画は、単なる「逃亡」ではなくなりました。


目的: エリオットをヴァルキリアス王国の王位に戻す。 手段: リリの知識と魔力(知恵)、そしてエリオットのカリスマ(武力と象徴)。


リリちゃんの「共同経営計画」という表現は、元社畜らしい合理的で、そして確固たる決意を感じさせます。彼女は自分の価値を最大限に高め、王位復権という壮大なプロジェクトの「共同経営者」という地位を確立しようとしています。


そして、次回、ついにシリウスの餞別が火を噴くかもしれませんよ!リリたちの逃亡を妨げる最初の大きな障害が、すぐそこに迫っているようです。


「追放者」と「放置者」のタッグが、世界をどうひっくり返すのか。ボクも楽しみで仕方ありません!


じゃあ、また次の後書きで!

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