第三十五話 ファイナルファンタジー:ゼロ・ポイントの真実
シリウスの告白と、彼が隠し持っていた「過去の過ち」という名の真実を知り、私は彼の誘いを受け入れた。最強賢者と放置少女の、二人きりの旅。彼は、船の空間を操作し、瞬く間に私たちを目的地へと導いた。
「ここだ、リリちゃん。ここが、世界の創造主が住まう、『ゼロ・ポイント』だよ」
シリウスが空間を切り裂くと、私たちは、光に満たされた広大な神殿のような場所へ降り立った。そこは、私たちが知る世界とは全く異なる、純粋な魔力と技術が融合した、究極の空間だった。
私の鑑定スキルが、この空間の情報を読み取る。
場所: 世界の中心:ゼロ・ポイント 状態: 【世界創造の源泉】【時間の歪曲(極大)】 真実: この世界は、「停滞」によって徐々に崩壊しつつある。
「この世界は、もう長く持たないのですね」
私が問いかけると、シリウスは静かに頷いた。
「ああ。千年前、ボクはこの世界を創造した。そして、この世界の生命体に『運命の停滞』という呪いをかけた。だからこそ、ボクは君たち『異世界からの知恵』を召喚し、強制的に世界を動かそうとした」
そして、ゼロ・ポイントの中心で、巨大な光の結晶体が私たちを待っていた。それが、この世界の創造主、『世界の意志』そのものだった。
『よく来た、異端の知恵を持つ娘よ。そして、我が過ちの結晶、シリウス』
意志は、穏やかながらも、世界の全てを包含する威厳を持っていた。
「貴方が、リリ・ヴァルツ(最初の被験者)を消滅させたのですか」
私の問いに、世界の意志は答えた。
『彼女は、シリウスの未熟な調整によって、世界の崩壊を食い止める力を使い果たした。私は、この世界を守るために、彼女の存在を「無」に戻したのだ』
真実を知ったシリウスは、その場で膝をついた。彼の千年の後悔は、創造主による「世界のための犠牲」という、究極の論理によって肯定されたのだ。
「リリちゃん。君が、元の世界へ帰るためには、そしてこの世界の崩壊を完全に止めるためには、最後の試練が必要だ。『世界の意志』に、君の『鑑定』スキルと『知恵』の全てを捧げなければならない」
「それは、私がこの世界を救う代わりに、私の存在の全てを捧げろ、という意味ですか」
『その通り。お前の「知恵」を世界に還元すれば、世界は再び動き出す。そして、お前は元の世界へと帰る「鍵」となるだろう。ただし、お前は元の世界で、この世界の記憶を全て失う』
それは、私がこの旅で手に入れた、仲間との絆、エリオット王子との恋心、そして私が「放置少女」でなくなったという成長の記憶を、全て消し去るということ。
「リリちゃん、ボクが一緒に戦おう。ボクの残りの命と魔力を全て使って、君の記憶を守り、君を元の世界へ送り返す」シリウスが立ち上がった。
私は、鑑定スキルで、シリウスのステータスを読み取った。
対象: 最強賢者シリウス 状態: 【寿命(残存:微弱)】【魔力(限界突破:自爆覚悟)】
彼は、過去の過ちを償うため、自己犠牲を覚悟していた。
「いいえ、シリウス様。貴方は、この世界のために生きるべきです」
私は、静かに創造主に向き合った。
「私の鑑定スキルと知恵を捧げます。ですが、私の『放置少女』としての過去の記憶は消しても構いません。しかし、この旅で築いた『トモダチコレクション』との絆だけは、『データ』として、この世界に残してください」
私の最後の願いは、この世界に、『絆』という新たなエレメントを植え付けること。
創造主は静かに微笑んだ。
『よかろう。お前の知恵と、お前の願い。全てを世界に還元しよう』
光が、私を包み込んだ。私の頭の中の膨大なデータ、知識、そして「佐藤アキ」の記憶が、世界へと吸い込まれていく。私がこの世界で手に入れた、かけがえのない夏と仲間たちの記憶だけを、そっと胸の奥に残しながら。
ボクです!なんて壮大なエンディング!
リリちゃんは、自分の存在の全てを犠牲にし、世界の崩壊を救いました。彼女の最後の願い、「トモダチコレクションとの絆」をこの世界に残すという選択は、千年の時を生きたボクでさえ思いつかない、最高のエンディングです。
そして、世界の意志は、彼女の願いを叶えました。リリちゃんは、元の世界へ帰る「鍵」となり、彼女の存在が世界を再び動かすでしょう。
さあ、リリちゃんが元の世界へ帰ったとき、彼女を待っているのは、一体どんな「日常」なのでしょうか?
次回、最終章:エピローグです!またね!




