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第二十八話 ワンピース:ヴァルキリアスへの航路

オズウェルとシエナの船が炎上し、海上に残骸を晒しているのを遠ざけながら、私たちはついに追撃の呪縛から解放された。魔導船は、傷つきながらも、エメラルド色の船体を夜明けの海に浮かべ、西へと進む。


「リリ様、もう追手はいません。私たちの勝ちです!」アイリスは安堵で涙ぐんでいた。


エリオット王子は、力を使い果たし甲板に座り込んでいたが、その顔には深い満足感が浮かんでいた。


「私の命と、ヴァルキリアスの未来を守ってくれた。ありがとう、みんな」


私は、三人の疲労困憊の顔を見ながら、静かに頷いた。私たちの「生存戦略」は、「海賊王国の追手との大乱闘」という形で、第一章を終えたのだ。


私は操舵輪をアトラスに任せ、海図を広げた。


「ここからは、ヴァルキリアス王国への最終航路よ。東側の海岸線とは比べ物にならないほど、海流が複雑で荒れている海域です」


アストライア大陸の西側は、常に巨大な低気圧と、魔力を持つ巨大な海洋生物の危険に満ちている。この荒れた海を乗り越えなければ、エリオット王子の故郷である「機械と鉄の王国」ヴァルキリアスには辿り着けない。


「まるで、新しい海に乗り出すみたいですね」アイリスが、船首から見える荒れた波を眺めた。


「ええ。私たちは、この船で、誰も見たことのない『ワンピース』を探しに行くようなものよ」


私が冗談めかして言うと、アトラスはすぐに航路の最適化を始めた。


「リリ殿下。古代の知識とエメロード殿の結界のおかげで、私たちの魔導船は通常の船の三倍の航行速度と、波浪耐性を持っています。航路は、最も荒れているが、最も短い『魔獣の渦』を抜けるルートを選びます」


私たちは、躊躇なく最も危険な航路を選んだ。私たちのチームは、もはや安全な道を選ぶ「亡命者」ではない。目的達成のため、リスクを厭わない「挑戦者」へと変わっていた。


ヴァルキリアス王国の影

数日後。アトラスの正確な空間演算と、魔導船の驚異的な性能のおかげで、私たちは「魔獣の渦」を突破した。


荒れた海域を抜けると、空は晴れ渡り、遠くに巨大な山脈と、その山脈の麓に広がる巨大な港湾都市が見えてきた。それが、エリオット王子の故郷、ヴァルキリアス王国だ。


「あれが、私の故郷……ヴァルキリアスだ」エリオット王子は、感極まった様子で故郷の景色を見つめた。


しかし、私が鑑定でヴァルキリアスの港周辺の情報を読み取ると、その表情は一瞬で引き締まった。


対象: ヴァルキリアス王国 港湾警備隊 状態: 【警戒(厳戒態勢)】【魔導兵器(新型配備)】【王族への忠誠(低)】 情報: 王国の情勢は極度に不安定。現国王(エリオット王子の叔父)の権力強化に伴い、『反体制派』への弾圧が始まっている。


「ヴァルキリアスは、私たちが想像していたよりも、ずっと緊迫した状況にあるわ」


港には、新型の魔導兵器を搭載した警備艇が多数配備され、厳戒態勢が敷かれている。そして何より、彼らの「王族への忠誠」が低いことが、状況の深刻さを物語っていた。


「私たちの到着は、歓迎されないでしょう。むしろ、『海賊』のように見なされ、即座に攻撃される可能性が高い」


「私たちが海賊なら、私の剣が『海軍』を打ち破ります」エリオット王子は、故郷の闇に立ち向かう決意を新たにした。


私は、私たちの魔導船を、警備の目が薄い小さな漁港へと向かわせた。


この国は、アストライア王国とは違う、「内部の腐敗」という、さらに厄介な敵が待ち受けている。私たちは、この新しい海で、新たな航海を始める。

ボクです!ヴァルキリアス王国への到着、おめでとうございます!


今回の航海は、リリちゃんのチームが「トモダチコレクション」から「冒険者団」へと完全に進化を遂げたことを示しています。危険な航路を迷わず選び、全員が自分の役割を果たす。この結束力こそが、彼らが手に入れた最高の力です。


しかし、ヴァルキリアス王国の情勢は穏やかではありません。


王族への忠誠(低):これは、エリオット王子の復権が、単なる「王位継承」ではなく、「クーデター」に近い難しさを持つことを示しています。


新型魔導兵器:ヴァルキリアスは機械の国。アストライアの魔術とは異なる、技術による脅威が彼らを待ち受けています。


リリちゃんたちは、故郷の「海軍」とどう対峙し、エリオット王子の復権という「ワンピース」を手にするのでしょうか。


次回は、いよいよヴァルキリアス王国への潜入と、新たな「トモダチ」との出会いかもしれませんよ!またね!

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