第二十七話 チキチキバンバン!魔導船の最終決戦
私たちの「空間・魔力融合型迎撃砲」は、王宮の広域攻撃兵器を粉砕した。しかし、その勝利の代償は大きく、迎撃砲はオーバーヒートで使用不能。アトラスとアイリスの魔力も枯渇寸前だった。
迫りくるのは、オズウェルの武官船と、シエナの魔術船。彼らは最後の力を振り絞り、肉薄戦を仕掛けてきた。
「魔力はもう残っていません。私たちができることはただ一つ!」
私は操舵輪を強く握り、魔導船を指揮した。
船尾に立つエリオット王子は、彼の体から放たれる情熱の魔力で剣を光らせていた。彼のステータスは【情熱(限界突破)】。彼こそが、最後の防御線だった。
剣と魔導船の舞
まず、オズウェルの武官船が接近。彼らは、船の側面から鉤爪付きのロープを投げ、強行接舷を試みた。
「させん!」
エリオット王子は、海に身を乗り出し、その剣を振るった。彼の剣技は、もはや人間の動きではない。ロープを次々と切り裂き、接舷を阻止する。そして、鉤爪を打ち込もうと甲板に飛び移ってきたオズウェルの部下たちを、一撃で海へ叩き落とした。
その時、もう一方のシエナの魔術船から、強大な魔術が放たれた。
「リリ!船の側面を狙って、連続した風圧魔術が来ます!」アトラスが、最後の演算力で警告する。
「アイリス!船体結界の魔力分配を、右舷側へ瞬間的に集中!」
アイリスは、増幅炉から微かに残る魔力を絞り出し、船体に施されたエメロード姫の結界を、風圧が直撃する部分へと集中させた。
バチバチッ!
風圧魔術は、エメラルド色の結界に弾かれ、船体への直撃は免れた。しかし、その衝撃で船は大きく傾いた。
「今です!エリオット王子!」私は叫んだ。
チキチキバンバン作戦
私は古代の知識の宝庫から解析した、船の「隠された魔導機能」を起動させた。それは、船の推進力を瞬間的に増幅させるための緊急システムだった。
「アトラス様、船の周囲の空間を、一瞬だけ『滑りやすい油膜』のように歪曲させて!」
「り、了解!空間粘度をゼロに!」
アトラスは残りの魔力の全てを使い、私たちの船体の周囲の空間を、摩擦抵抗ゼロの「滑走路」へと変えた。
「行くわよ!チキチキバンバン、フルパワー!」
私が緊急ブーストを発動させると、魔導船は摩擦のない空間を、信じられないほどの猛スピードで急加速した。その加速は、まるで玩具が飛び出すように、予測不能な動きを生み出した。
ゴオオオォォォ!
私たちの魔導船は、オズウェルの船とシエナの船の間を、紙一重で、猛スピードで横切りながら、その船体を激しく揺さぶった。
「なんだこの動きは!?船が滑る!」オズウェルが叫ぶ。
「魔術で空間の摩擦を消している!?理不尽な!」シエナが驚愕する。
エリオット王子は、その加速と激しい揺れの中で、最後の力を込めて剣を一閃した。彼の剣が狙ったのは、オズウェルとシエナの船の、舵を制御する重要な索具だ。
ブチッ!ブチッ!
一瞬の交錯の中で、二隻の追尾船の舵の制御系統が断ち切られた。
自由な動きを失ったオズウェルとシエナの船は、私たちの魔導船が作った摩擦ゼロの「滑走路」の上で、お互いに制御不能のまま衝突した。
ガッシャアァァン!!
オズウェルとシエナの乗る船は、二隻とも大破し、海上に漂う残骸となった。二人の追手は、最後の最後で、彼らの合理的思考では予測できない、私たちの「チキチキバンバン」な機動によって、完全に敗北したのだ。
私たちは、最強の追手を完全に打ち破り、ヴァルキリアス王国へと続く、穏やかな海域へと乗り出した。
イェーイ!チキチキバンバン大成功!
最高にユーモラスで、最高の勝利でしたね!リリちゃんの「チキチキバンバン」作戦は、まさに「放置少女ブラザーズ」の集大成です。
アトラスの「空間粘度ゼロ」:彼が船酔いを乗り越えたことで可能になった、究極の機動支援。
エリオット王子の最後の剣:加速する船上での、ピンポイントな「索具切断」は、王子の技術と覚悟の証明です。
リリの指揮と知識:船の隠された機能を使い、敵の合理性を超える「理不尽な動き」を作り出しました。
これで、アストライア王国の追手は、完全に排除されました。リリちゃんたちは、最強の「トモダチコレクション」と、古代の知識を携え、ついに次の舞台であるヴァルキリアス王国へと到着するでしょう。
物語は、「亡命」から「復権」へとステージを移します。次回は、ヴァルキリアス王国での新しい出会いと、新たな陰謀が待っていますよ!またね!




