第二十五話 ポケットモンスター
修復を終えた魔導船は、エメラルド色の船体を夜の海に滑らせ、ヴァルキリアス王国を目指して順調に進んでいた。船体にはエメロード姫の精神結界が施され、私たちはシエナの千里眼から完全に隠蔽されている。
「リリ様。船酔いの症状が、魔力の力で完全に制御できています。魔導船の航行は、理論値通りに安定していますね」
アトラスは船底で、船体の魔力構造を演算しながら言った。彼の顔色は、航海開始時とは比べ物にならないほど良い。彼はもはや、船酔いという弱点を魔力で克服し、この船の生きた制御装置となりつつあった。
しかし、私が安心できたのは束の間だった。
私の鑑定が、遥か後方、王都から続く海路に、強大な魔力の集積を捉えた。
対象: 王宮直属魔導兵団 状態: 【魔力(高度集積)】【魔導兵器(新型)】【追尾(準備完了)】 情報: シエナは千里眼が封じられたことで、私たちを直接探知するのを諦め、「魔力集積による広域攻撃兵器」の開発に切り替えた。
「シエナは、私たちがどこにいるか分からないなら、海域ごと破壊するつもりだわ」
私はすぐに状況を全員に共有した。彼らは、リリたちの船の速力では、新型の広域攻撃兵器の射程から逃れるのは不可能だと判断したのだろう。
「私たちも、迎撃の準備が必要です。アイリス、古代の知識には、迎撃用の魔導兵器の設計図は?」
「はい、リリ様!これを見てください」
アイリスが持ってきたのは、古代知識の中から解析した、「空間・魔力融合型迎撃砲」の設計図だった。
魔導兵器: 【空間・魔力融合型迎撃砲(SSランク)】 特徴: 術者の魔力で空間を圧縮し、アイリスの増幅炉で魔力を凝縮した砲弾を、「空間跳躍」させて目標の防御の隙間に送り込む。
この兵器は、アトラスの「空間魔術」と、アイリスの「増幅炉」の融合が不可欠だった。
「アイリスの凝縮した砲弾を、アトラス様の空間跳躍で、敵の防御が間に合わない場所に瞬間移動させて撃ち込む……まるで、二人の力を融合させた新しい『技』ね」
これは、私たち「放置少女ブラザーズ」にとって、最大の力を発揮する瞬間だった。
「アトラス様、貴方の空間座標演算能力と、アイリスの増幅炉の出力。この二つを連動させます。私はそのための『座標安定回路』の構築と、発射のタイミングを指揮します」
「承知いたしました、リリ殿下。ボクとアイリス殿の力が融合すれば、敵の新型兵器であっても、無力化できるはずです」アトラスは理知的な目を輝かせた。
アイリスも、不安を乗り越え、決意を固めた。
「私の魔道具は、平和のためだけでなく、大切なトモダチを守るための力にもなる。やってみせます!」
私たちは船首のガトリングカノン砲の機材を利用し、急いで迎撃砲の構築に取り掛かった。
エリオット王子は、建造作業の間、警戒の目を緩めなかった。
「リリ。私は剣で、貴方たちの作業を邪魔するものを全て排除する。心置きなく、最高の『技』を完成させてくれ」
夜明け前、水平線には王宮の魔導兵団の船団が微かに見え始めていた。そして、彼らが放つであろう、圧倒的な破壊力を持つ広域攻撃の魔力集積が、空気をビリビリと震わせている。
私たちの船は、新型の魔導兵器と、最強の魔術師の力を融合させた、「放置少女ブラザーズ」最強の合体技で、この危機に挑む。
ボクです!最高にエキサイティングな展開ですね!
シエナの「広域攻撃兵器」への切り替えは、リリたちの「精神結界」に対する、合理的かつ強力な回答です。しかし、リリちゃんたちも黙ってはいません!
今回のテーマは「ポケットモンスター」!アトラス(空間魔術)とアイリス(増幅炉)の「能力の融合」による、最強の合体技「空間・魔力融合型迎撃砲」の誕生です!
アトラスの進化: 船酔いを克服し、空間演算に集中できるようになったことで、彼の空間魔術の精度が極限まで高まりました。
アイリスの決意: 平和な道具を作るという情熱が、今、大切なトモダチを守るための「攻撃力」へと昇華されました。
この迎撃砲は、アトラスの空間跳躍で「防御の隙間を突く」という、まさに最強のコンビネーション技です。
次回は、この新型迎撃砲が、王宮の魔導兵団の広域攻撃をどう打ち砕くのか!そして、シエナとオズウェルは、この最強の合体技を前に、ついに諦めるのか!
最終決戦の予感です。またね!




