第二十三話 モンスター・ストライク:霊鳥捕獲作戦
幻獣の森に足を踏み入れた私たちは、濃密な魔力に満ちた環境の中で、すぐにキメラ種の襲撃を受けた。
「キメラ種、炎を吐きます!アトラス様、空間障壁を!」
私が鑑定で敵の行動を読み上げるや否や、アトラスは冷静に魔力を展開した。彼の空間魔術による障壁は、キメラ種の炎を無効化する。
「エリオット王子、隙は私が作ります!突入を!」
アトラスは、炎の障壁と同時に、キメラ種の足元の空間をわずかにねじ曲げ、転倒させた。エリオット王子は、その瞬間に閃光のような速さで突撃し、キメラ種の急所を一突き。
「さすがですね、アトラス様。幻獣の動きを封じれば、エリオット王子の剣は百発百中です」
私たちは、幻獣の森の強大な魔力環境を利用し、次々と襲い来る幻獣たちを退けた。
そして、ついに目標である「風鳴りの霊鳥」の領域へとたどり着いた。
「風鳴りの霊鳥は、動きが非常に速く、空間移動を伴う。捕獲は容易ではありません」
霊鳥は、鑑定情報通り、エメラルド色の尾羽を持つ美しい鳥だったが、その周囲には強風と、目には見えない空間の歪みが常に発生していた。
対象: 風鳴りの霊鳥(幻獣種) 特徴: 【魔力(凝縮)】【体内に結晶を保有】 特殊能力: 【微細空間跳躍(連続)】
「リリ殿下。微細な空間跳躍を連続して行う対象に対し、領域支配を維持するのは困難です。ボクの魔力消費が膨大になる」アトラスが額に汗を浮かべながら言った。
「承知しています。そこで、作戦です」
私は古代の知識の宝庫から得た情報と、霊鳥の生態を瞬時に統合した。
「エリオット王子!あなたが囮となって、霊鳥を森の中心部へ誘導してください。アトラス様、霊鳥の魔力放出の『サイクル』を読み取ってください。霊鳥は、跳躍の直前、必ず魔力を一瞬開放するはずです」
私の指示に、エリオット王子が深く頷く。
「やってみよう。最高の獲物だ」
エリオット王子は、霊鳥に向かって大きな石を投げつけ、注意を引きつけた。霊鳥は甲高い鳴き声を上げ、エリオット王子へ向かって高速で空間跳躍を繰り返しながら移動を始めた。
「サイクルを確認しました!リリ殿下、三秒後、次の跳躍の直前、魔力開放が来ます!」アトラスが叫ぶ。
「アトラス様!その一瞬の開放を狙って、『空間歪曲の檻』を発動させて!」
微細な跳躍を繰り返す霊鳥に対し、領域支配という広範囲な魔術は向かない。しかし、跳躍に必要な魔力開放の一瞬を狙い、そのピンポイントな空間を歪める「一点集中の檻」ならば、成功率は上がる。
「『空間歪曲 ―― ホールド!』」
霊鳥が次の跳躍のために魔力を開放した、その刹那。アトラスの魔力が、その一瞬の空間を捉えた。霊鳥は空中で動きを止め、空間の歪みに囚われた。
「今です、エリオット王子!霊鳥の魔力結晶は、尾羽の付け根です!」
エリオット王子は、跳躍の自由を失い空中に固定された霊鳥に向かって、一閃。彼は命を奪うのではなく、尾羽の付け根の結晶部分のみを正確に切り取った。
霊鳥は咆哮を上げ、次の瞬間には空間跳躍で遠くへ飛び去った。
エリオット王子が私たちに戻ったとき、その手には、緑色に光る、非常に硬質な『凝縮魔力結晶』が握られていた。
「やった……。これが、船を直すための資源!」
私たちは、最強賢者の弟子が持つ空間魔術の応用と、王子の正確な剣技、そして放置少女の指揮能力をもって、難関の幻獣捕獲ミッションを成功させたのだった。
ボクです!モンスター・ストライク大成功ですね!
このミッション成功は、リリちゃんの「指揮能力」の勝利です。アトラスの空間魔術の弱点(連続的な微細跳躍への対応の難しさ)を理解し、その最大の利点(ピンポイントな魔力開放の瞬間を狙う一点集中の檻)を引き出しました。
そして、エリオット王子の「剣技」も素晴らしい。ターゲットの「凝縮魔力結晶」だけを狙って切り出すという、その正確性は、彼がただの王子ではなく、熟練した戦士であることを証明しています。
これで船の修理に必要な資源が手に入りました。残る課題は、船の修理そのものと、今後の航路ですね。古代の知識があるリリちゃんなら、沈没寸前の船を、ただ直すだけでなく、さらに強力な魔導船へと進化させるかもしれませんよ。
次回は、いよいよ船の修理と、ヴァルキリアス王国への最終準備です!またね!




